この研究は、韓国、アメリカの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Food Hydrocolloids

ライセンス: 論文に記載なし

米ぬか(米糠)には、食物繊維の一種である「アラビノキシラン」が含まれています。アラビノキシランはキシロースを主鎖とし、アラビノースなどの側鎖を持つ多糖で、消化されにくいまま大腸まで届き、腸内細菌のエサ(発酵基質)になることが知られています。ただし、その発酵のされやすさは、繊維がどのような立体構造(マトリックス構造)を保っているか、そして胃や小腸での消化の影響を受けるかどうかによって左右されると考えられています。

今回紹介する研究では、米糠を「押出加工(エクストルージョン)」——原料に熱と圧力をかけながらスクリューで押し出す加工法——にかけることで、アラビノキシランの構造やその後の消化・発酵のされやすさがどう変わるのかが調べられました。研究チームは、未加工の米糠から抽出したアラビノキシラン(RB-AX)と、押出加工した米糠から抽出したアラビノキシラン(RB-Ex-AX)を用意し、ヒトの上部消化管の消化を模した実験(模擬消化)の前後で、微細構造や糖の組成、糖同士のつながり方(糖鎖結合パターン)を比較しました。さらに、ヒトの便を使った試験管内(in vitro)の発酵実験を行い、腸内細菌の構成や、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸(SCFA)の量も調べています。

研究でわかったこと

まず構造の面では、押出加工によって繊維のマトリックス構造が壊れ、より多孔質(すきまの多い状態)になったことが示されました。一方でFT-IR分光分析では、アラビノキシランの骨格を特徴づける官能基そのものに大きな変化は見られなかったとされています。

消化前の時点では、RB-AXとRB-Ex-AXの単糖組成は比較的似ていたと報告されています。ところが模擬消化を行うと違いが表れ、RB-Ex-AXの方がグルコース含量の減少幅が15%大きく、その分アラビノースとキシロースの割合が相対的に増えたとされています。また、糖鎖の結合様式を調べたところ、末端型・4位結合型のグルコース残基が減り、2,3,4位で結合したキシロース残基が増えており、これはキシラン骨格の構造がより濃縮された(相対的に強調された)状態になったことを示すと説明されています。

こうした消化に伴う構造変化は、腸内細菌による発酵のされやすさにも影響したとされています。RB-Ex-AXは発酵後半(12〜24時間)において、総短鎖脂肪酸の産生量が有意に多かったと報告されています。また、腸内細菌の構成についても、Bacteroidota門、特にBacteroides属、Segatella属、Parabacteroides属が選択的に増加したことが示されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、米糠アラビノキシランという特定の食物繊維について、押出加工という特定の加工法が構造と消化・発酵特性に与える影響を検討したものです。実験は模擬的な消化モデルや試験管内でのヒト便を用いた発酵系で行われており、実際にヒトが食品として摂取した場合に同じ変化が体内で起こるかどうかは、この要旨の範囲では述べられていません。また、対象となった米糠やアラビノキシランの由来・加工条件は限定的であり、他の食物繊維や加工法にそのまま当てはまるとは限りません。一つの研究の結果であり、健康効果を保証したり結論を確定させたりするものではない点に留意してください。

まとめ

この研究では、米糠を押出加工することでアラビノキシランの繊維構造が多孔質化し、消化後にキシラン骨格が相対的に濃縮されるとともに、腸内細菌による発酵が後半段階で活発になり、短鎖脂肪酸の産生増加や特定の腸内細菌群(Bacteroidota、Bacteroides、Segatella、Parabacteroidesなど)の増加が見られたことが報告されています。押出加工が米糠アラビノキシランのプレバイオティクスとしての機能性を高める可能性が示唆されていますが、これは基礎的な研究段階の知見であり、今後さらなる検証が必要と考えられます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):押出加工による米糠アラビノキシランの構造改変が消化性と微生物発酵性に及ぼす影響の向上(フード・ハイドロコロイズ・2026年08月)

著者:Bo-Ram Park(Department of Food Science, National Institute of Crop and Food Science, RDA, Wanju-gun, 55365, Republic of Korea)、Legesse Shiferaw Chewaka(Department of Food Science, National Institute of Crop and Food Science, RDA, Wanju-gun, 55365, Republic of Korea)、Dahye Gu(Department of Food Science, National Institute of Crop and Food Science, RDA, Wanju-gun, 55365, Republic of Korea)、Ki‐Nam Yoon(Research Institute of Agricultural Science and Technology, Chonnam National University, Gwangju 61186, Republic of Korea)、Seong‐Jin Hong(Research Institute of Agricultural Science and Technology, Chonnam National University, Gwangju 61186, Republic of Korea)、Jeong‐Yong Cho(Department of Integrative Food, Bioscience and Biotechnology, Chonnam National University, Gwangju 61186, Republic of Korea)、Hyun‐Ji Lee(Department of Food Science, National Institute of Crop and Food Science, RDA, Wanju-gun, 55365, Republic of Korea)、Young‐Min Kim(Department of Integrative Food, Bioscience and Biotechnology, Chonnam National University, Gwangju 61186, Republic of Korea)、Ha Yun Kim(Department of Food Science, National Institute of Crop and Food Science, RDA, Wanju-gun, 55365, Republic of Korea)、Bruce R. Hamaker(Department of Food Science, Purdue University, 745 Agriculture Mall Drive, West Lafayette, IN 47907, United States)