著者の所属・活動拠点の国は、エチオピアです。

掲載誌:Journal of Ethnobiology and Ethnomedicine

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

エチオピアの農村では、畑で育てる作物だけでなく、森や草地に自生する野生の植物も食べ物として利用されてきました。こうした野生食用植物は、ビタミンやミネラル、補助的なカロリーの供給源となり、食生活の多様さや季節ごとの食料確保、地域の文化を支えています。一方で、記録が十分に進んでおらず、国の食料安全保障や生物多様性保全の政策にもあまり組み込まれていないと論文は指摘しています。

著者は、エチオピア南東部オロミア州アルシ県のアセコ郡に暮らすオロモの人びと(アルシ系)を対象に、どのような野生植物が食べられているのか、またそれに関する伝統的な生態学的知識(土地の自然について世代を超えて受け継がれてきた知恵)がどのように保たれているのかを調べました。この地域では薬用植物や家畜の伝統医療についての研究はあったものの、食料としての野生植物に焦点を当てた研究はなかったとされています。

どのように調べたか

アセコ郡は標高約1,170〜2,950メートルにまたがり、低地・中間地・高地という三つの農業生態帯を含んでいます。著者はそれぞれの帯を代表する6つの村落区(ケベレ)を選び、2024年3月から2025年2月まで、雨季を含む一年を通じて現地調査を行いました。

協力者は合計206人で、そのうち35人は長老や経験豊富な採集者など、とくに植物に詳しい「重要情報提供者」でした。調査は現地語のアファン・オロモ語による聞き取り、協力者と一緒に野外を歩いて植物を確認する調査、日常の採集や調理への参加観察を組み合わせて行われました。採集した植物は標本にして種を同定し、国際的な植物データベースで学名を確認しています。さらに、一人ひとりが挙げた植物の種数が、年齢や性別、学歴、立場、住む地域とどう関係しているかを統計的に分析しました。

主な結果

調査の結果、32科58属にわたる70種の野生食用植物が記録されました。最も多かったのはマメ科(11種)で、次いでアオイ科(4種)でした。生育形では樹木が約46%を占め、低木、草本、つる植物が続きます。記録された種の約89%は野生の生育地から採取されていました。

用途の面では、果実として食べられる種が30種(42.9%)と最も多く、次いで深刻な食料不足のときに頼る「飢饉時の備えの食料」が14種(20.0%)でした。後者には、アカシア類の仲間のさやや種子、樹脂(ガム)などが含まれます。また人びとは、熟しているかを見極める、煮る、炒る、発酵させるといった方法で、苦みや有害な成分を減らして安全に食べる工夫を受け継いでいました。論文はこれを、文化の中で培われたリスク管理の方法として報告しています。

知識の伝わり方については、家族を通じた継承が知識の入手経路の71.4%を占めていました。統計分析では、年齢が1歳上がるごとに挙げられる種の数がおよそ4%増え、重要情報提供者は一般の協力者の約2.15倍の種を挙げていました。50歳を超える人が挙げた種数の中央値は5種で、35歳未満の人の2種を大きく上回っており、著者はここに世代間の知識の差を見ています。また低地に住む人は高地に住む人より多くの種を挙げていました。性別や学歴については、統計的に意味のある関連は見られませんでした。ただし協力者の約81%が男性であった点には注意が必要だと論文は述べています。

野生食用植物への脅威として協力者が深刻だと捉えていたのは、農地の拡大(67.3%)と燃料用の薪の採取(52.6%)でした。

研究が示すこと

この研究は、アセコ郡で野生食用植物が今も地域の食のしくみに欠かせない存在であること、そしてその知識が主に年長者や家族のつながりを通じて保たれていることを示しています。著者は、伝統的な知識の保護、地域住民が主体となる保全の取り組み、そして伝統的な安全な食べ方を食料安全保障や生物多様性保全の政策に組み込むことが、環境が変化するなかで人びとの暮らしを支えるうえで重要だと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Jewar Safeno Jara(Department of General Forestry, Mizan Tepi University, P. O. Box 260, Mizan Aman, Ethiopia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jewar Safeno Jara. Ethnobotanical study of wild edible plants among Oromo communities in Aseko District, Arsi Zone, southeast Ethiopia. Journal of Ethnobiology and Ethnomedicine 2026-08-09. DOI: 10.1186/s13002-026-00934-0. 原著ライセンス:CC BY.