最近は食事や健康の相談にAIチャットボットを使う人も増えています。「1日2000kcalの食事メニューを考えて」とお願いすれば、もっともらしい献立表がすぐに出てきます。しかし、その中身は栄養学的に見て本当に妥当なのでしょうか。今回紹介する研究は、この素朴だけれど重要な疑問に取り組んだものです。
研究チームは、ChatGPT、Gemini、Copilotという3つの大規模言語モデル(LLM)を使い、2000kcal・2500kcal・3000kcalという3種類のエネルギー設定のもとで、それぞれ35日分の食事プランを生成させました。生成された献立は、栄養価を計算する専用の解析ソフトウェアを用いて詳しく分析されました。
研究でわかったこと
分析の結果、いずれのLLMが生成した食事プランも、目標としたエネルギー量に対して不足していることが統計的に確認されました(p < 0.001)。不足量はモデルや目標エネルギー量によって異なるものの、284〜546kcal少ないという結果でした。
栄養素のバランスにも偏りが見られました。生成された食事プランは、タンパク質由来のエネルギー比率が過剰である一方、脂質由来のエネルギー比率は不足していたと報告されています。炭水化物については、おおむね適切な量が設定されていたとのことです。
ビタミンやミネラルについてはモデルごとに差がありました。ChatGPTとCopilotが生成した食事プランは、全体としてはビタミン・ミネラルの含有量がおおむね適切だったとされています。一方でGeminiが生成した食事プランは、特にエネルギー量が低い設定において、ビタミンやミネラルが不足する傾向がしばしば見られたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、現時点で利用可能な3つのLLMを対象に、決められた条件下で生成された食事プランを分析したものであり、AIが生成する食事プラン全般やLLMの性能について結論を確定づけるものではありません。使用するモデルのバージョンやプロンプトの与え方、設定条件が変われば結果も変わりうる可能性があります。
研究チームは、LLMが生成する食事プランには多くの不備があり、専門知識を持たない利用者が監督なしにそのまま利用すると、栄養的に不正確な食事になりうるとし、専門的な栄養指導の代わりにはならないと結論づけています。
まとめ
AIチャットボットは手軽に食事プランを提案してくれますが、今回の研究では、エネルギー量の不足やタンパク質・脂質のバランスの偏り、モデルによってはビタミン・ミネラル不足といった課題が示されました。食事や健康に関する具体的なアドバイスが必要な場合には、AIの提案をそのまま鵜呑みにせず、管理栄養士など専門家に相談することが望ましいと言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:平均的ユーザー条件下で大規模言語モデルが生成する食事の栄養価分析—3(LM)Dietスタディ(ニュートリエンツ・2026年07月)