著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Journal of Agricultural and Food Chemistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
全粒トウモロコシの摂取を示す目印を探して
食事の内容を調べる研究では、本人の記憶に頼る調査に加えて、特定の食品を食べたときに尿や便などに現れる物質を「バイオマーカー(目印)」として使う方法があります。いくつかの穀類や疑似穀類ではその候補が提案されていますが、論文によると、全粒トウモロコシについては検証済みのバイオマーカーがまだ確立されていません。
研究チームは、その開発に向けた最初の段階として、トウモロコシに多く含まれる「フェノールアミド」という種類の成分の一つ、N1,N10-ジ-p-クマロイルスペルミジン(diCouSpd)に注目しました。この成分が体内や腸内細菌によってどのような物質に変化するのか(生体内変換)を調べています。
化学合成から動物実験までを組み合わせた調べ方
研究チームは複数の手法を組み合わせました。まず、関係する物質を化学的に合成し、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)と核磁気共鳴(NMR)という分析技術で構造を特定しました。
そのうえで、ヒトの便を用いて腸内細菌による分解を試験管内で再現する発酵実験と、マウスを用いた実験を行いました。マウスにはdiCouSpdそのもの、または全粒トウモロコシ2食分あるいは4食分から調製した抽出物が与えられ、その便と尿が分析されました。
これまで報告のなかった3種類の代謝物
著者らは、これまで報告されていなかった3種類の代謝物を見つけたと報告しています。いずれもdiCouSpdに水素が付加された「水素化(還元)」型の物質です。diCouSpdは、スペルミジンという分子の両端にp-クマロイル基と呼ばれる構造が一つずつ付いた形をしており、新たな代謝物は、その片方が水素化された2種類と、両方が水素化された1種類でした。
diCouSpdやトウモロコシ抽出物を与えたマウスの便と尿の分析でも、これらの還元型代謝物ができていることが確認されました。また、ヒトの便を使った発酵実験からは、2つのp-クマロイル部分が順番に還元されていく段階的な水素化の経路が推定されたとしています。論文はこの経路を、可能性のあるものとして示しています。
研究が示すこと
論文は、これらの結果がトウモロコシのフェノールアミドが体内や腸内で還元されていく代謝について新たな知見を与えるものだとしています。そして、diCouSpdとその代謝物が、全粒トウモロコシを食べたことを示す目印の候補になりうるという見方を支持するものと位置づけています。
原著論文の著者・所属:Salar Hafez-Ghoran(North Carolina Agricultural and Technical State University , , North Carolina Research Campus, 500 Laureate Way , , ,)、Nathaniel Yeboah(North Carolina Agricultural and Technical State University , , , ,)、Shengmin Sang(North Carolina Agricultural and Technical State University , , North Carolina Research Campus, 500 Laureate Way , , ,)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Salar Hafez-Ghoran, Nathaniel Yeboah, Shengmin Sang. Biotransformation of Corn-Derived N 1, N 10-di- p -Coumaroyl Spermidine in Mice and by Human Gut Microbiota Reveals Novel Reduced Metabolites. Journal of Agricultural and Food Chemistry 2026-08-03. DOI: 10.1021/acs.jafc.6c06580. 原著ライセンス:CC BY.