この研究は、ルーマニアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
果汁・野菜ジュースを製造すると、果肉や皮などの固形分が「ポマース(搾りかす、搾汁残渣)」として大量に残ります。著者らによれば、リンゴ(品種ジョナサン)、ビーツ、ニンジン、プラムのポマースは、ポーランド、ドイツ、スペイン、ルーマニアといった生産国を中心に、ヨーロッパのジュース加工業から生じる主要な副産物です。これらは従来、廃棄されるか、家畜の飼料やバイオエネルギー用ペレットの原料として使われてきました。
この研究は、そうした搾りかすが、より付加価値の高い「機能性食品素材」として使えるかどうかを評価することを目的としています。背景にあるのは、資源を捨てずに循環させる「循環型バイオエコノミー」という考え方です。
どのように調べたか
著者らは、工業的な連続搾汁の工程で実際に生じたポマースを対象としました。これを熱風乾燥して粉砕し、粉末にしたうえで分析しています。
調べた項目は、一般成分組成(炭水化物、灰分、食物繊維などの割合)、色、個々のフェノール類とカロテノイド、そして試験管内(in vitro)での抗酸化能です。フェノール類は植物に広く含まれる成分群、カロテノイドはニンジンなどのオレンジ〜黄色のもとになる色素成分を指します。抗酸化能は、酸化を抑える働きの強さを示す指標で、ここでは実験室の試験系で測定されたものです。
報告された主な結果
ニンジンのポマースは、カロテノイド(乾燥重量あたり84.37 ± 0.08 µg/g)と灰分(同7.78 ± 0.41%)が高い値を示しました。著者らは、これが天然のオレンジ〜黄色の着色をもたらし、ミネラル含量にも寄与すると述べています。
ビーツのポマースは、食物繊維が最も多く(乾燥重量あたり17.20 ± 0.55%)、加えて赤色色素であるベタレインを含み、天然の赤色着色料やエマルション(乳化物)の安定化剤に適するとされました。
プラムのポマースは、全体として最も強い抗酸化能を示しました。著者らはその要因として、暫定同定された3-カフェオイルキナ酸(乾燥重量あたり712.36 ± 0.31 μg/g)、フラボノール類、アントシアニン類(同264.16 ± 0.5 μg/g)を挙げています。
リンゴのポマースは炭水化物に富む素材で(乾燥重量あたり77.71 ± 0.65%)、確定同定されたクロロゲン酸(同463.16 ± 0.35 μg/g)と、暫定同定されたジヒドロカルコン類を含んでいました。なお「暫定同定」とは、分析データから成分がその物質であると推定される段階を指し、標準物質などで確定した「確定同定」とは区別されます。
この研究が示すこと
四種類のポマースは、それぞれ異なる強みを持つことが報告されました。色素が豊富なもの、食物繊維が多いもの、抗酸化能が高いもの、炭水化物を主体とするものといった違いです。著者らは、この結果が、循環型バイオエコノミーの枠組みの中で、それぞれの特性に合わせて用途を選び分ける形でのポマース活用(バリューゼーション)を支持するものだと結論づけています。
ここで示されたのは、搾りかすの成分組成と試験管内での抗酸化能という特性であり、副産物を捨てずに使うための出発点となる基礎的な情報です。
著者:Maria Simona Chiș(Department of Food Engineering, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Anca Corina Fărcaș(Department of Food Science, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Gheorghe Adrian Martău(Department of Food Science, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Dan Cristian Vodnar(Department of Food Science, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Anamaria POP(Department of Food Engineering, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Adriana Păucean(Department of Food Engineering, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Simona MAN(Department of Food Engineering, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Andor Paul(Department of Food Engineering, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maria Simona Chiș, Anca Corina Fărcaș, Gheorghe Adrian Martău, et al. Phytochemical Profiling (Phenolics and Carotenoids) and Antioxidant Potential of Apple, Plum, Carrot, and Beetroot Juice Pomaces: Towards Sustainable Food Ingredients. Foods 2026-09-14. DOI: 10.3390/foods15183244. 原著ライセンス:CC BY.