著者の所属・活動拠点の国は、中国、アメリカです。

掲載誌:Journal of the Science of Food and Agriculture

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:食品エマルションの酸化を防ぐ

油と水が細かく混ざり合った状態を「エマルション」と呼び、多くの食品に見られる身近な仕組みです。一方で、中に含まれる油が酸素と反応して劣化する「脂質酸化」が起こりやすく、品質低下の原因になることが知られています。

研究チームは以前、油と水の境目に微小な固体粒子が集まってエマルションを安定させる「ピッカリングエマルション」を開発していました。この粒子は、多糖類のキトサンと、乳たんぱく質カゼインに由来するペプチド(カゼインホスホペプチド)を組み合わせ、ゲニピンという物質で結び付けて作ったナノサイズの複合体です。ただし、このエマルションも酸化による劣化を受けやすく、品質や安定性に悪影響が出るおそれがありました。

そこで本研究では、天然の抗酸化物質であるテアフラビン-3,3′-ジガレート(TF-3)をこの粒子の中に取り込み、酸化からの保護を高めることを目指しました。

調べたことと主な結果

著者らによると、TF-3を組み込んでも粒子表面の電気的な性質(表面電荷)は大きく変わりませんでしたが、粒子のサイズは大きくなりました。TF-3を含む粒子は、水の中に油滴が分散した「水中油型」のピッカリングエマルションを効果的に安定させ、そのエマルションはゲルのような流れにくい性質を示しました。TF-3はこのゲル状の網目構造をさらに強めたと報告されています。

酸化への強さは、40°Cで長期間保存して比較されました。このピッカリングエマルションは、油と水を単に混ぜたものや従来型のエマルションと比べて、酸化の初期にできる生成物と、その後に生じる生成物のいずれも少なく、酸化安定性が大きく向上していました。また、TF-3の量が多いほど酸化生成物が少なくなるという、濃度に応じた保護効果も確認されました。

さらに論文では、TF-3がどこに存在するかによって効果が異なることも示されています。TF-3が油相や水相に分布している場合よりも、油と水の境目(界面)に位置している場合のほうが、高い抗酸化効果を発揮したと報告されています。

研究から伝わること

研究チームは、TF-3を組み込んだ粒子が食品向けの水中油型ピッカリングエマルションをゲル状の構造で安定させ、量に応じて酸化を抑えたと結論づけています。特に、抗酸化物質を油と水の境目に配置することが効果を最大限に引き出す鍵であるとし、界面の設計が酸化に強いピッカリングエマルションをつくるうえで有望な考え方であることを示しています。

原著論文の著者・所属:Yike Jiang(College of Food Science and Technology Zhejiang Pharmaceutical University Ningbo China)、Jieyu Zhu(Department of Food Science Rutgers University New Brunswick NJ USA)、Xiaotao Zhang(College of Food Science and Technology Zhejiang Pharmaceutical University Ningbo China)、Qingrong Huang(Department of Food Science Rutgers University New Brunswick NJ USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yike Jiang, Jieyu Zhu, Xiaotao Zhang, et al. Enhancing antioxidant capacity of chitosan‐caseinophosphopeptides nanocomplexes‐stabilized Pickering emulsion by incorporating theaflavin‐3,3′‐digallate. Journal of the Science of Food and Agriculture 2026-10-15. DOI: 10.1002/jsfa.71169. 原著ライセンス:CC BY.