この研究は、イギリスの研究機関の研究論文です。

掲載誌:BMJ Open

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

妊娠29週未満で生まれた赤ちゃんにとって、母親自身の母乳は脳の発達を助け、壊死性腸炎(NEC)のリスクを下げる標準的な栄養とされています。NECは未熟な腸に起こる炎症で、高所得国では極めて早く生まれた赤ちゃんの主な死因であり、生涯にわたる障害の原因にもなります。ただし、早産の赤ちゃんは妊娠33〜34週相当になるまで十分に吸う力がないため、母親は何週間も搾乳を続ける必要があります。その結果、多くの赤ちゃんが入院中のどこかで補充の栄養を必要とします。

補充の選択肢には、低温殺菌したドナー母乳と早産児用粉ミルクがあります。両者は栄養やそれ以外の成分、費用が大きく異なります。著者らによると、ドナー母乳がNECの面で優れていることを示すデータはあるものの決定的ではなく、手術が必要なNEC、死亡、血液の感染症、神経発達の障害といった重要な結果での利点は示されていません。また、母乳は栄養の含有量にばらつきがあり、低いことも多いため、牛乳由来の栄養強化剤(たんぱく質と炭水化物を足すもの)を日常的に加える医師もいます。一方で、強化剤がNECのリスクを高めたり、たんぱく質を過剰に与えて神経発達や代謝の健康を損なったりすることを懸念する声もあります。

論文は、本格的な臨床試験の計画(プロトコル)を報告したもので、まだ結果は出ていません。研究チームは、母乳が足りないときにドナー母乳と粉ミルクのどちらが適しているか、そして母乳に強化剤を日常的に加えるべきかという、長年答えの出ていない二つの疑問に決着をつけることを目指しています。

試験のしくみ

COLLABORATEは英国全土の新生児病棟で、日常の診療に組み込む形で実施されます。対象は、妊娠29週未満で生まれ、口や管からの栄養を受けられない状態ではなく、母親が搾乳を希望している赤ちゃんです。一人の赤ちゃんが二つの比較のどちらか、または両方に参加できます。一つ目の比較では、母乳が足りず補充が必要になった時点で、ドナー母乳か早産児用粉ミルクかをランダムに割り付けます。二つ目の比較では、一定量の母乳を飲めるようになった段階で、強化剤を日常的に加えるか加えないかを割り付けます。

主に評価する結果は、妊娠34週相当まで、NECの手術を受けずに生存できたかどうかです。副次的には、退院までの感染症の回数、入院期間、重い脳の損傷などのほか、2歳(早産分を補正した年齢)時点の言語と認知の発達を、保護者が記入する質問票で確認します。データの多くは、電子カルテから品質を確認して抽出した全国の新生児研究データベースから集め、記録作業の負担を減らします。

研究チームは、参加者の半数が両方の比較に参加すると仮定し、合計3252人の登録を目標にしています。この人数は、主な結果の割合に5ポイントの差があれば検出できるよう設計されています。試験の途中で2回の中間解析を行い、早い段階で明確な差が出た場合に対応できる「適応型」の設計を採用しています。どの栄養を与えているかは見れば分かるため、医療者や家族に割り付けを伏せることはできません。著者らは、この点が結果の報告に偏りを生む可能性があると限界として挙げています。登録は2026年4月に始まりました。

脳の画像、費用、保護者の声

本試験には、エディンバラの1施設で120人の赤ちゃんを対象とする追加研究が組み込まれています。出産予定日ごろにMRIを撮影し、ドナー母乳と粉ミルクとで、認知機能を支える脳の白質の成熟に違いが出るかを調べます。腸内細菌の構成や多様性に違いが出るかも仮説として検討します。また、ドナー母乳は1リットルあたり125〜200ポンド、粉ミルクは約5ポンドと費用に大きな差があり、NECの手術にも1件あたり約1万6500ポンドかかることから、費用に見合う効果があるかの評価も行います。

計画づくりには、早産児の保護者や新生児医療を経験した人たちが関わりました。グループでの話し合いでは、母親が搾乳への強いプレッシャーを感じていること、母乳が足りない親に罪悪感を与えない言葉づかいが大切であることが示されました。さらに、特にNECを経験した家族を中心に、どの方法が最善か分からない不安を、試験への参加が和らげると感じる親が多いことも分かりました。保護者の意見は、説明資料の共同作成にも生かされています。

この研究が意味すること

早産の赤ちゃんに何を飲ませるかは毎日の診療で直面する問題です。それにもかかわらず、確かな根拠がないまま施設ごとに方針が異なり、保護者の不安や安全上のリスクにつながってきたと著者らは指摘しています。この試験は、日常診療と既存のデータベースを活用した大規模な比較によって、こうした長年の疑問にランダム化比較試験の形で答えを出そうとする計画です。結果はまだ出ておらず、ドナー母乳や強化剤の効果は現時点では未解明です。

著者:Victoria Cornelius(Imperial Clinical Trials Unit, Imperial College London, London, UK)、James Boardman(Centre for Reproductive Health, University of Edinburgh Centre for Reproductive Biology, Edinburgh, UK)、D Quine(Department of Neonatology, NHS Lothian, Edinburgh, UK)、Sabita Uthaya(School of Public Health, Imperial College London, London, UK)、Shalini Ojha(School of Medicine, University of Nottingham, Nottingham, UK)、Hilary Wong(Department of Paediatrics, University of Cambridge, Cambridge, UK)、Annemarie Lodder(School of Public Health, Imperial College London, London, UK)、Lauren Ingledow(Adult Preemie Advocacy Network, London, UK)、Peter Bradley(Bliss, London, UK)、James Wason(Population Health Sciences Institute, Newcastle University Population Health Sciences Institute, Newcastle upon Tyne, UK)、John Norrie(Centre for Public Health, Queen’s University Belfast, Belfast, UK)、Ramón Luengo-Fernández(Health Economics Research Centre, University of Oxford, Oxford, UK)、A. Morris(Health Data Research UK, London, UK)、Alex Baker(Imperial Clinical Trials Unit, Imperial College London, London, UK)、Ricardo Ribas(School of Public Health, Imperial College London, London, UK)、Daphne S. Babalis(Imperial Clinical Trials Unit, Imperial College London, London, UK)、Neena Modi(School of Public Health, Imperial College London, London, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Victoria Cornelius, James Boardman, D Quine, et al. Real-world data-enabled, 2-randomisation, adaptive trial to determine the clinical efficacy and safety of widely used enteral feeds in preterm babies: the COLLABORATE trial – protocol. BMJ Open 2026-10-01. DOI: 10.1136/bmjopen-2026-125163. 原著ライセンス:CC BY.