著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Plant Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、温室トマトで灌水量を減らしたとき、収量や水の利用効率を高める窒素肥料の適量がどう変わるかを調べました。温室では雨が入らず、水の供給を灌水に頼ります。節水しながら収量を保つには、水と窒素肥料を組み合わせて管理する必要があるという背景があります。
著者らは、収量の違いに加え、葉で二酸化炭素の取り込みや水分の放出を担う気孔の形態、光合成に関わる酵素の働き、細胞の損傷にも着目しました。適量の窒素が節水下の光合成を支える一方、過剰な施肥が負担を増やす仕組みを明らかにすることが狙いです。
何を、どのように調べたか
2024年と2025年の2年間、半乾燥地域にある温室で、トマト品種「Jinpeng No. 1」を栽培しました。灌水を行う土壌水分の下限を、圃場容水量の75%とする区と、65%まで下げる節水区を設け、それぞれに異なる窒素施肥量を組み合わせました。圃場容水量は、土壌から余分な水が排出された後に保持される水分量の目安です。季節全体の灌水量は、75%区が2024年に305.7 mm、2025年に295.6 mm、65%区がそれぞれ256.8 mm、248.3 mmでした。
各処理は3反復とし、収量は各反復から20株、計60株を選んで調べました。また、収量と水消費量から水1立方メートル当たりの収量を、窒素無施用区からの増収量と施肥量から窒素肥料の利用効率を算出しました。
果実が肥大する時期には、条件をそろえた葉で光合成速度、蒸散、気孔を通る気体の通りやすさを測りました。同じ葉について、気孔の密度と幅、葉緑素量の指標、二酸化炭素の固定に関わる酵素Rubiscoの活性、細胞膜の酸化損傷の指標となるマロンジアルデヒド(MDA)の濃度も調べました。
主な報告結果
研究チームは、灌水量を減らすと全般に果実収量は低下したものの、適切な窒素施肥と組み合わせることで、灌水の下限を75%とした区との収量差を解消できたと報告しています。その組み合わせでは、75%区と比べて水1立方メートル当たりの収量が9.9~11.7%、窒素肥料の利用効率が30.4~35.1%高まりました。
また、灌水量を減らすと、収量や水の利用効率を最大にする窒素施肥量は低い側へ移りました。施肥量と結果の関係を二次曲線に当てはめた推定では、節水区で果実収量を最大にする窒素量は1ヘクタール当たり279.9 kg、水1立方メートル当たりの収量を最大にする窒素量は264.8 kgでした。
著者らによると、節水区でも窒素量が適切な場合は、気孔の密度が高く、気孔全体の幅が小さい形態となり、Rubiscoの活性も維持されていました。ここで測った幅は、気孔の穴だけでなく、その周囲の細胞を含む幅です。研究チームは、これらの形態と酵素の働きが、葉の二酸化炭素を取り込んで光合成に使う能力を支えたと説明しています。
一方、節水と1ヘクタール当たり450 kgの過剰な窒素施肥を組み合わせると、MDAの蓄積を伴う酸化損傷と、光合成能力や収量の低下が報告されました。適切な窒素量の条件では、MDA濃度に灌水区間の有意な差はありませんでした。
この報告が示すこと
著者らは、節水栽培では窒素肥料を増やせばよいのではなく、水分条件に合わせて施肥の上限を下げることが重要だと結論づけています。今回の温室試験に基づき、灌水の下限を圃場容水量の65%とし、窒素施肥量を1ヘクタール当たり265~280 kgにする管理を推奨しています。
ただし、この研究では根の構造や、根の周囲の土壌環境の細かな変化を直接観察していません。葉で捉えた反応は、水と窒素の組み合わせが収量を左右する仕組みを説明する一方、地下部で起きた過程まで直接確かめたものではありません。
原著論文の著者・所属:Lingxiang Zheng(Pingliang Municipal Water Resources Center, Pingliang, Gansu, China)、Yu Zhao(Pingliang Municipal Water Resources Center, Pingliang, Gansu, China)、Binbin Han(Pingliang Municipal Water Resources Center, Pingliang, Gansu, China)、Danyang Ma(Pingliang Municipal Water Resources Center, Pingliang, Gansu, China)、Junsheng Lu(Key Laboratory of Agricultural Soil and Water Engineering in Arid and Semiarid Areas, Ministry of Education, Northwest A&F University)、Zhijie Chang(Key Laboratory of Agricultural Soil and Water Engineering in Arid and Semiarid Areas, Ministry of Education, Northwest A&F University)、Yanwei Fan(College of Civil and Hydraulic Engineering, Lanzhou University of Technology)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lingxiang Zheng, Yu Zhao, Binbin Han, et al. Reduced irrigation decreases the optimal nitrogen threshold of greenhouse tomatoes by altering gas exchange and stomatal morphology. Frontiers in Plant Science(出版社:Frontiers Media) 2026-08-19. DOI: 10.3389/fpls.2026.1897205. 原著ライセンス:CC BY.