この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in plant science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

何を明らかにしようとした研究か

中国北部では、冬にコムギ、夏にトウモロコシを同じ畑で育てる「輪作」が広く行われています。収量を保つために窒素肥料を多く施す管理が一般的ですが、研究チームは、窒素を過剰に与えると窒素利用効率(施した窒素のうち作物が実際に使えた割合)が下がり、使われなかった窒素が土に残って環境への負荷になりうる点を課題として挙げています。

一方で、ある季節に施した肥料の窒素は土の中に残り、次の季節の作物にも一部が使われることが先行研究で報告されています。著者らはこの「持ち越し(レガシー)効果」に注目し、どの季節に窒素を施すかによって、収量や窒素利用効率、さらに土の中の微生物の構成や推定される働きがどう変わるのかを調べました。

どのように調べたか

研究チームは中国山西省の試験圃場で2021年から2023年まで試験を行いました。比較したのは4つの施肥パターンです。窒素を両季節とも施さない区(CK)、コムギの季節だけ施す区(W1M0)、トウモロコシの季節だけ施す区(W0M1)、そして両季節に施す区(W1M1)です。年間の窒素投入量は、片方の季節だけの区が1ヘクタールあたり150キログラム、両季節の区が300キログラムで、リン肥料とカリ肥料はすべての区で同じにそろえられました。

調べた項目は、穂数や粒数などを含む収量、作物の窒素利用効率を表すいくつかの指標、深さごとの土壌全窒素、そして土壌微生物です。微生物は遺伝子の配列を読み取る手法で細菌と菌類の種類構成を調べ、その構成情報から「どのような働きを担う微生物が多いか」を推定するデータベース解析も行いました。著者らはこの推定について、微生物の活動を直接測ったものではなく、あくまで潜在的な機能を示すものだと明記しています。あわせて、土壌の窒素状態と収量という2つの側面がどれだけ足並みをそろえているかを数値化する「結合協調度」という指標も算出されました。

報告された主な結果

収量については、季節ごとの施肥パターンによって多くの構成要素が有意に変化したと報告されています。2022年には両季節に施肥したW1M1でコムギ・トウモロコシともに最も高い値が示されましたが、2023年のコムギではトウモロコシの季節だけ施肥したW0M1やコムギの季節だけのW1M0も高く、年と処理の組み合わせによって順位が入れ替わる相互作用が検出されました。

窒素利用効率では、片方の季節だけに施肥した区のほうが両季節施肥より高い値が示されました。両季節施肥と比べると、投入窒素あたりの収量(部分要素生産性)はW1M0で83.9パーセント、W0M1で79.8パーセント高く、農学的効率もそれぞれ61.4パーセント、51.4パーセント高かったと報告されています。著者らはこの差の一部が、年間の窒素投入量自体が少ないことによると述べています。

微生物については、細菌の群集構成のほうが菌類より施肥処理による違いがはっきり現れ、特にトウモロコシの季節でその傾向が強いと報告されました。多様性の指標は季節と指標の種類によって反応が異なり、たとえば系統的な多様性はコムギの季節ではW1M0が高く、トウモロコシの季節では逆にW0M1が高いという、季節で入れ替わるパターンが示されています。働きの推定では、トウモロコシの季節に硝化(アンモニアを硝酸に変える過程)に関わる分類群がCKとW1M0で多く、脱窒や硝酸呼吸に関わる分類群はW0M1とW1M1で相対的に多いという違いが見られました。

土壌の性質との関係では、pHやリン・カリに関する指標が季節を通じて微生物の群集構成と関連し、全窒素は菌類の分布とより強く関連していました。統計モデルによる解析では、作物の収量に最も強く直接結びついていたのは土壌の理化学性で、細菌群集は土壌の理化学性との結びつきが菌類より強い一方、収量への直接的な寄与は土壌の理化学性より小さいと報告されています。

この研究が示す意味

この研究が伝えているのは、窒素肥料の効果を考えるときに「どれだけ施すか」だけでは足りないということです。同じ輪作の中でも、どの季節に施すかによって、作物の窒素利用効率、土の中の細菌や菌類の構成、そして窒素のやりとりに関わる微生物の顔ぶれまでが変わり、しかもその影響は次の季節にまで持ち越されていました。

著者らは、収量と窒素利用効率を左右するうえで、窒素の供給と作物の需要が時間的に合っているかどうかが総投入量よりも重要だと論じています。季節をまたいだ時間軸で施肥を捉える視点が、土と作物の両方を見る管理を考える手がかりになる、というのが本研究から読み取れる示唆です。

著者:Xue M(College of Agriculture, Shanxi Agricultural University, Taiyuan, Shanxi, China.)、Li W(College of Agriculture, Shanxi Agricultural University, Taiyuan, Shanxi, China.)、Wei H(College of Agriculture, Shanxi Agricultural University, Taiyuan, Shanxi, China.)、Wang Z(College of Agriculture, Shanxi Agricultural University, Taiyuan, Shanxi, China.)、Guo B(Institute of Crop Science, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Beijing, China.)、Wang C(College of Agriculture, Shanxi Agricultural University, Taiyuan, Shanxi, China.)、Zhou P(College of Agriculture, Shanxi Agricultural University, Taiyuan, Shanxi, China.)、Gao F(College of Agriculture, Shanxi Agricultural University, Taiyuan, Shanxi, China.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xue M, Li W, Wei H, et al. Season-specific nitrogen management shapes soil microbial communities and crop productivity in wheat-maize rotation system. Frontiers in plant science 2026-09-16. DOI: 10.3389/fpls.2026.1938392. 原著ライセンス:CC BY.