日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:ChemFoodChem
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
バナナは甘みと食べやすさから世界で広く親しまれている果物ですが、収穫後に傷みやすいという課題があります。論文では、取り扱いや保管、輸送・包装の不備などにより、収穫後の損失が25〜50%に達すると見積もられていることが紹介されています。熟すにつれて果肉が柔らかくなり、微生物の影響も受けやすくなるため、鮮度を保つ技術が求められています。
この研究で著者らが注目したのは、二つの保存技術です。一つは「プラズマ活性水(PAW)」で、空気中で発生させた低温プラズマを水に作用させて得られる水を指します。もう一つは「可食被膜」で、果物の表面を覆う薄い層をつくり、ガスや水蒸気の出入りを調節する半透膜のように働かせるものです。被膜の材料には、コンニャクの塊茎から得られる水溶性の多糖類であるコンニャクグルコマンナン(KGM)が使われました。著者らは、PAWと可食被膜はそれぞれ研究されてきたものの、両者を組み合わせたときに生のバナナの貯蔵品質にどう影響するかは明らかでないとして、この点を調べることを研究の目的に据えています。
どのように調べたか
著者らは日本国内の店舗でバナナを購入し、熟度・大きさ・色がそろい傷のないものを選びました。そのうえで、対照区(プラズマを当てていない脱イオン水に浸したもの)、PAW区、被膜区、PAW+被膜区という四つの処理群を設けています。被膜には0.6%のKGMに0.25%のグリセロールを加えた液を用い、2分間浸しました。グリセロールは被膜に柔軟性を与える可塑剤として加えられています。処理後のバナナは穴のあいたポリエチレン袋に入れ、20℃の暗所で12日間保管されました。
貯蔵中は、重量の減少、皮の色、果肉の硬さのほか、抗酸化に関わる指標(DPPHラジカル消去活性、鉄還元能を測るFRAP、総フェノール含量=TPC)、褐変に関わる酵素であるポリフェノールオキシダーゼ(PPO)とペルオキシダーゼ(POD)の活性、呼吸速度、そして一般生菌数(好気性平板菌数、APC)が測定されています。
主な報告結果
論文によれば、被膜区とPAW+被膜区では、対照区と比べて重量減少が抑えられました。貯蔵12日目の時点で、対照区の重量減少が26.93%だったのに対し、被膜区は19.23%、PAW+被膜区は20.20%だったと報告されています。著者らは、KGMとグリセロールによる被膜が水蒸気の通過を抑える障壁として働いたためと説明しています。
皮の色についても違いが見られました。貯蔵8日目には対照区とPAW区で皮が半分ほど黒ずみ、最終日にはほぼ完全に黒くなったのに対し、被膜区とPAW+被膜区では黄色が保たれたと述べられています。明るさを示すL*値や黄色みを示すb*値でも、被膜を施した区が高い値を維持しました。一方でPAW単独では、この貯蔵条件下で皮の色を保つには十分ではなかったと著者らは述べています。
抗酸化に関わる指標では、PAW区とPAW+被膜区で処理直後のDPPH活性とFRAPが高くなりました。果肉の総フェノール含量も、処理初日にはPAW+被膜区が最も高く、次いで被膜区、PAW区の順で、いずれも対照区を上回っています。皮の総フェノール含量は貯蔵後半に処理区のほうが低く保たれ、著者らはこれを褐変の進行やフェノール類の酸化が遅れたことと関連づけて解釈しています。褐変に関わるPPO活性については、貯蔵後半の8日目と12日目に、すべての処理区で対照区より低く抑えられたと報告されています。
呼吸速度に関しては、被膜区とPAW+被膜区で処理直後に約2倍まで上昇し、貯蔵中も対照区より高い時期がありました。著者らはこれを品質面の利点というより、被膜の適用や処理によるストレスへの生理的な反応を反映している可能性があるとし、硬さや色、重量減少、微生物の増殖といった他の指標と併せて解釈すべきだと述べています。微生物については、被膜区とPAW+被膜区で一般生菌数が低く、増殖が抑えられたと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、PAWとKGMを用いた可食被膜を組み合わせる方法が、貯蔵中のバナナの物理化学的・生化学的・微生物学的な品質を保つうえで、統合的な収穫後処理としての可能性を示したとまとめています。個々の指標を見ると、重量減少や色の保持では被膜の寄与が大きく、抗酸化に関わる反応ではPAWの寄与が目立つなど、二つの技術が異なる側面に働いている様子がうかがえます。同時に、呼吸速度の上昇のように単純に良し悪しを判断できない変化もあり、複数の指標を合わせて品質を見ていく必要があることも、この研究から読み取れます。
著者:Peeraphat Prempree(Graduate School of Horticultture Chiba University Matsudo Chiba Japan)、Rosy C. D. B. Putri(Graduate School of Horticultture Chiba University Matsudo Chiba Japan)、Yukiharu Ogawa(Graduate School of Horticultture Chiba University Matsudo Chiba Japan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Peeraphat Prempree, Rosy C. D. B. Putri, Yukiharu Ogawa. Effects of Plasma‐Activated Water and Konjac Glucomannan‐Based Edible Coating on the Storage Quality of Fresh Banana ( Musa sapientum L.). ChemFoodChem 2026-08-27. DOI: 10.1002/cfch.202500047. 原著ライセンス:CC BY.