ヨーロッパの河川で在来の生態系に影響を与えているとされる外来魚がいます。ポルトガルのテージョ川に生息する「ヨーロッパナマズ(Silurus glanis)」です。大型の捕食性魚類であるこの種は、生物多様性を脅かす存在とされる一方で、食資源としてはほとんど活用されてきませんでした。もしこの魚を美味しく食べられる商品に変えられれば、駆除や捕獲の後押しにもつながるかもしれない——そんな発想から行われた研究が、学術誌「フーズ」で紹介されています。
研究でわかったこと
この研究では、ヨーロッパナマズの切り身に加え、通常は廃棄されがちな「加工残渣(アラなどの部位)」も活用し、合計6種類の高付加価値食品が開発されました。研究チームはこれらの製品について、栄養成分、微生物の安全性、食感、そして官能評価(味や食感などの人による評価)を調べています。
微生物検査では、いずれの製品からもサルモネラ属菌、リステリア・モノサイトゲネス、大腸菌は検出されなかったと報告されています。ただし「Powerbites」という製品では微生物数がやや多く検出されており、衛生管理や製造工程のさらなる改善が必要であることが示唆されています。
栄養面では、タンパク質含有量は100gあたり10.05〜16.89gとされ、必須アミノ酸をすべて含む良好なアミノ酸組成を持ち、成人が1日に必要とする必須アミノ酸量への一定の寄与が報告されています。また脂質含有量は低〜中程度で、脂肪酸組成も好ましい傾向が見られたとされ、ビタミンB12やビタミンEについても一定量の寄与があると報告されています。官能評価では全体として肯定的な受容が示された一方、一部の製品についてはさらなる配合の改良が必要であるとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究はあくまで、ヨーロッパナマズを原料とした6種類の試作食品について、栄養・微生物・食感・官能特性を評価した一つの研究であり、ヒトの健康への効果や安全性全般を証明したものではありません。特にPowerbitesについては衛生管理面の課題が指摘されており、すべての製品がそのまま実用化できる段階にあるとは言えない点に留意が必要です。また、この記事で紹介した数値や評価は、あくまで論文の要旨に基づくものであり、それ以上の解釈は含まれていません。
まとめ
本研究は、生態系への影響が懸念される外来魚ヨーロッパナマズについて、切り身だけでなく加工残渣まで活用した高付加価値食品を開発し、その栄養的・技術的・持続可能性の観点からの可能性を示したものです。今後、衛生管理や配合面でのさらなる改良を経て、こうした未活用の外来種を食品として活かす取り組みが広がっていくのか、注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ポルトガル・テージョ川におけるヨーロッパナマズ(Silurus glanis)の利活用と捕獲促進を支える高付加価値食品の開発(フーズ・2026年07月)