牛乳の代わりに植物性飲料を選ぶ人が増えています。食事制限や環境への配慮、そして健康を意識した「機能性食品」への関心の高まりがその背景にあると考えられています。しかし、豆乳やアーモンドミルクなどの植物性飲料には、栄養面で牛乳に及ばない点があるとも指摘されています。とくに、体に良いとされる長鎖オメガ3系の不飽和脂肪酸がほとんど含まれていないことや、健康によいとされる生きた微生物「プロバイオティクス」を加えても、加工や保存の過程で生き残らせるのが技術的に難しいことが課題とされてきました。

こうした課題に取り組んだのが、今回紹介する研究です。研究チームは、マカダミアナッツ(Macadamia integrifolia)を原料に、魚由来のオメガ3脂肪酸と、プロバイオティクス乳酸菌「Lactiplantibacillus plantarum」を組み合わせた新しい機能性飲料を開発しました。ポイントは、これらの機能性成分を「アルギン酸」という海藻由来の食品成分でできたゲル状のコーティングに包み込む(カプセル化する)技術を使ったことです。

研究でわかったこと

飲料づくりでは、まずマカダミアナッツを3〜4時間水に浸し、ナッツと水の比率を1対2または1対4の2パターンで検討しました。その後、加熱処理、湿式粉砕、ろ過を経て、オメガ3脂肪酸や乳酸菌などの原料を加え、殺菌・均質化する工程で飲料が作られました。オメガ3脂肪酸は「カプセル化した形」と「乳化させた形」の両方が試され、プロバイオティクス菌はアルギン酸のマトリックス(基材)に包埋されました。

できあがった飲料の物理化学的な性質や栄養成分、微生物学的な特性が調べられ、市販の牛乳やアーモンド飲料とも比較されました。また、胃や腸の消化液を模した環境や、冷蔵保存15日間という条件下で、プロバイオティクス菌がどれだけ生き残るかも確認されています。

その結果、ナッツと水の比率を1対4にした場合に、最も多くの飲料を得られたと報告されています。栄養面では、開発されたマカダミア飲料のタンパク質含有量は牛乳に匹敵し、アーモンド飲料よりも有意に高かったとされています。さらに、1回あたりの目安量である240mLを飲むことで、EPAとDHA(いずれもオメガ3脂肪酸の一種)の1日の推奨最低摂取量の少なくとも85%を満たせることが示されたということです。

プロバイオティクス菌についても、模擬的な胃液・胆汁環境に対して高い耐性を示し、冷蔵保存15日間を通じて、プロバイオティクスとして機能するために一般的に必要とされるとされる生存数の基準を上回る生存率を維持したと報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

研究チームは、今回明らかになった品質特性が、この飲料の製法が技術的に実現可能であることを支持するものだと述べています。ただし、これはあくまで実験室レベルでの開発・評価段階の研究であり、論文自体も「今後の製品開発とパイロットスケール(小規模な実用化に向けた試験段階)での評価の土台となるもの」と位置づけています。つまり、実際に商品として広く流通する段階にはまだ至っておらず、今回の結果がそのまま健康効果を保証するものではない点には注意が必要です。

また、この記事で紹介した数値や結果は、あくまで今回の一つの研究で得られたものです。一つの研究であり結論が確定したわけではない、という点を念頭に置いて読んでいただければと思います。

まとめ

この研究では、マカダミアナッツを原料に、アルギン酸を使ったカプセル化技術によってオメガ3脂肪酸とプロバイオティクス乳酸菌を組み込んだ新しい植物性飲料が開発されました。牛乳に匹敵するタンパク質含量やオメガ3脂肪酸の供給、そして保存中も維持されるプロバイオティクスの生存性が確認されたと報告されており、非乳製品の機能性飲料開発に向けた一つの技術的な足がかりとして紹介されています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:新規機能性マカダミアナッツ(Macadamia integrifolia)飲料:アルギン酸可食コーティングに包埋したオメガ3脂肪酸とプロバイオティクス乳酸菌(フロンティアーズ・イン・インダストリアル・マイクロバイオロジー・2026年07月)