この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
米国では、手軽に使える市販のベビーフードが広く普及しています。こうした中で、乳児が栄養密度の低い食品を多く食べることの長期的な影響が懸念されています。特に注目されているのが「超加工食品」です。超加工食品とは、工業的な加工を何段階も経て作られ、家庭の調理ではあまり使わない原料や添加物を含むことが多い食品を指します。世界保健機関(WHO)は、離乳期には添加糖や塩分の多い食品を避けるよう勧めていますが、こうした成分は超加工食品によく含まれています。
一方で、米国の乳児が離乳期に超加工食品をどの程度食べているのか、それが栄養摂取や成長とどう関係するのかを調べた研究は、ほとんどありませんでした。そこで研究チームは、離乳期の超加工食品の摂取量と、栄養素の摂取、食事の多様性、成長との関連を調べました。
何を調べたか
対象は、米国コロラド州デンバー都市圏の健康な乳児114人です。別の目的で行われた2つの臨床試験には、食事指導を受けずに普段どおりの食事をとる観察グループが設けられていました。この研究は、そのグループの乳児のデータを改めて分析したものです。登録時の生後約5か月と、9か月、12か月の3時点で、保護者が3日間の食事記録をつけました。記録の際には、キッチンスケールで量を量るよう指導を受けていました。あわせて、体重と身長も測定しました。なお、生後5か月の時点ではまだ固形食を始めていない乳児が多かったため、この時点で食事の分析に含まれたのは45人でした。
記録された食品は、加工の程度で食品を4段階に分ける「Nova分類」を使って分類されました。分類は2人の担当者がそれぞれ独立して行いました。この研究は離乳食などの固形食に焦点を当てているため、母乳と育児用ミルクの量は分析から除外されています。授乳の方法(母乳、ミルク、混合)は、結果に影響しうる要因として統計的に考慮されました。食事の多様性は、WHOなどが定める8つの食品群のうち5つ以上を食べているかどうかで評価されました。
主な結果
食事記録には、1912種類の食品が登場しました。このうち41%が超加工食品に分類されました。加工をほとんど受けていない食品と比べると、超加工食品は100グラムあたりのエネルギーが高く(282キロカロリー対128キロカロリー)、ナトリウムが多く、食物繊維が少ないという結果でした。
乳児が超加工食品からとるエネルギーは、体重1キログラムあたりで見ると、生後5か月の4キロカロリーから12か月の20キロカロリーへと増えていました。ただし、固形食全体のエネルギーに占める割合は、時期による変化が見られませんでした。研究チームはこの結果を、液体中心の食事から移行するにつれて食べる量全体が増え、加工度の低い食品と超加工食品が同じような比率で増えたためと解釈しています。
最も明確だったのは、栄養素との関連です。生後9か月と12か月のどちらでも、超加工食品を多く食べている乳児ほど、添加糖とナトリウムの摂取量が多い傾向がありました。著者らによると、超加工食品が体重1キログラムあたり10キロカロリー増えるごとに、1日のナトリウム摂取量は約160ミリグラム多くなっていました。これに対し、加工度の低い食品を多く食べることは添加糖の少なさと関連しており、ナトリウムとは関連が見られませんでした。
食事の多様性については、生後9か月で基準を満たした乳児のほうが超加工食品を多く食べていました。しかし、複数の検定を行ったことを踏まえて厳しい基準で判定すると、この関連は統計的に明確とはいえませんでした。成長については、9か月と12か月の時点で超加工食品の摂取量と体重・身長の間に関連は見られませんでした。
一方、生後5か月の時点では、超加工食品を多く食べている乳児ほど、同じ年齢の標準と比べた体重の指標(年齢別体重zスコア)が低いという関連がありました。この関連は9か月・12か月では続きませんでした。理由は特定されておらず、研究チームは考えられる説明として三つの仮説を挙げています。一つ目は、この時期の乳児は主に母乳やミルクから栄養をとるはずですが、超加工食品を多く食べることで、その母乳やミルクが押しのけられた可能性です。二つ目は逆の因果関係で、体重の小さい乳児に対して、成長を心配して早めに固形食を始めたり、異なる種類の食品を与えたりした可能性です。三つ目は、この時期の対象者が少なく、食べる量も少ないことによる偶然の可能性です。
研究が示すこと
著者らによると、米国の乳児で離乳期の超加工食品の摂取が添加糖の摂取と関連することを示したのは、この研究が初めてです。添加糖も塩分も、この時期には控えることが一般に勧められている成分です。そのため、どの食品を選ぶかがこれらの摂取量と結びついている可能性を示した点に、この研究の意味があります。
ただし、この研究で示されたのは関連であり、因果関係を証明したものではありません。対象は比較的少人数で、デンバー都市圏の健康な乳児に限られています。母乳やミルクの量が分析に含まれていないことや、ベビーフードがNova分類の基準に必ずしもうまく当てはまらないことも、著者ら自身が限界として挙げています。そうした制約はあるものの、離乳期の食品の加工度が、乳児の食事に含まれる糖分や塩分と結びついていることを具体的なデータで示した研究といえます。
著者:Kinzie L Matzeller(Department of Food Science and Human Nutrition, Colorado State University, Fort Collins, CO 80521, USA)、Mikayla L Hernandez(Department of Pediatrics, Section of Nutrition, University of Colorado Anschutz Medical Campus, Aurora, CO 80045, USA)、Nathan W. C. Campbell(Department of Food Science and Human Nutrition, Colorado State University, Fort Collins, CO 80521, USA)、Edward L. Melanson(Department of Medicine, University of Colorado Anschutz Medical Campus, Aurora, CO 80045, USA)、Daniel N. Frank(Department of Medicine, University of Colorado Anschutz Medical Campus, Aurora, CO 80045, USA)、Audrey E. Hendricks(Department of Biomedical Informatics, Section of Nutrition, University of Colorado Anschutz Medical Campus, Aurora, CO 80045, USA)、Nancy F. Krebs(Department of Pediatrics, Section of Nutrition, University of Colorado Anschutz Medical Campus, Aurora, CO 80045, USA)、Minghua Tang(Department of Food Science and Human Nutrition, Colorado State University, Fort Collins, CO 80521, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kinzie L Matzeller, Mikayla L Hernandez, Nathan W. C. Campbell, et al. Ultra-Processed Food Intake Is Associated with High Consumption of Added Sugar and Sodium in U.S. Infants. Nutrients 2026-09-13. DOI: 10.3390/nu18182992. 原著ライセンス:CC BY.