著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、アメリカです。

掲載誌:Eating and Weight Disorders - Studies on Anorexia Bulimia and Obesity

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:面接形式の評価ツールをイタリア語で使えるようにする

「フードアディクション(食べ物依存)」とは、主に超加工食品について、強い渇望、食べる量が増えていく、抑えがきかない、悪影響があっても食べ続けるといった、依存症に似た食べ方のパターンを指す考え方です。これを独立した病気として扱うべきかはまだ議論が続いています。一方で、むちゃ食い障害や神経性過食症などの摂食障害と重なりやすく、神経性やせ症の患者にも症状がみられることがあると報告されてきました。

この症状の評価には、自分で回答する質問票「YFAS 2.0」が広く使われています。ただし論文によると、自己回答には限界があります。たとえば食事を厳しく制限している人は、ほんの少し食べただけでも「予定より多く食べた」と答えることがあります。また、自分の食べ方と生活上の問題を結びつけて考えにくい人は、症状を少なく答えてしまうことがあります。

「FASI(Food Addiction Symptom Inventory)」は、こうした問題に対応するために作られた半構造化面接です。半構造化面接とは、決まった質問を軸にしながら、評価者が必要に応じて追加の質問をして確かめていく方法です。FASIでは、訓練を受けた臨床家が、物質使用障害の診断基準にもとづく11の症状が過去12か月にあったかどうかを判断します。研究チームは、これまで存在しなかったイタリア語版を作り、摂食障害の患者を対象にその性能を確かめることを目的としました。

何を調べたか

研究チームはまず、英語版をイタリア語に訳し、それを別の翻訳者が英語に訳し戻して元の文と照らし合わせました。さらに10人の患者に試しに面接を行い、内容が分かりやすいかを確認しました。

本調査では、摂食障害の外来を初めて受診した患者118人が参加しました。内訳は、食事制限が中心の神経性やせ症(制限型)が52人、むちゃ食いを伴う神経性過食症またはむちゃ食い障害(以下「むちゃ食い系」)が66人です。参加者はFASIの面接を受け、あわせてYFAS 2.0のほか、摂食障害の症状、肥満に関連する食行動、むちゃ食いの重さ、抑うつ症状を測る質問票に回答しました。

分析では主に三つの点を調べました。一つ目は、11の症状が一つのまとまった特性を測っているかどうかです。二つ目は、回答に一貫性があるかどうか、そして関連する他の尺度とどの程度一致するかです。三つ目は、食事制限が中心のグループとむちゃ食い系のグループとで、この面接が同じように機能するかどうかです。研究チームは三つ目を「測定の不変性」として検討しました。

主な結果

統計分析の結果、FASIの11症状は一つのまとまりとして測定されていると考えてよいことが示されました。モデルの当てはまりも良好と判断され、回答の一貫性を示す指標(ω)は0.84でした。11症状すべてがこのまとまりに意味のある形で寄与していました。最も強く結びついていたのは「耐性」(以前と同じ効果を得るのにより多く食べる必要がある状態)で、最も弱かったのは「対人・社会的な問題があっても食べ続ける」でした。

二つの診断グループの比較では、基本的な構造が両グループで似ていることが、予備的にではあるものの支持されました。ただし、「予定より多く食べた」と「身体的・感情的な悪影響があっても食べ続ける」の2項目は、グループによって働き方が異なっていました。研究チームは、厳しく食事を制限している人にとって「予定より多く食べる」の意味がむちゃ食い系とは異なりうること、また体重増加などの身体的な影響は体格指数(BMI)が高いむちゃ食い系の人に当てはまりやすいことを理由に挙げています。グループ間で得点を直接比べられることまでは確認されておらず、比較には慎重さが必要だとしています。

質問票YFAS 2.0との対応をみると、全体では中程度から強い相関がありました(r=0.581)。グループ別では、制限型が0.408、むちゃ食い系が0.505とやや差がありましたが、この差は統計的に比較されたものではありません。基準を満たした人の割合は、どちらのグループでもFASIのほうがやや多くなりました。制限型ではFASIが34.6%、YFAS 2.0が28.8%、むちゃ食い系ではFASIが92.4%、YFAS 2.0が83.3%でした。

他の症状との関係にもグループ間で違いがみられました。むちゃ食い系では、FASIの得点はむちゃ食いや甘いものの食べ過ぎなどと関連し、食事制限の傾向とは正の関連がありませんでした。これは、もともとの開発研究と同じパターンです。一方、制限型の患者では、FASIの得点が食事制限の強さとも正の関連を示しました。

この研究が示すこと

著者らは、イタリア語版FASIが摂食障害の患者を評価するうえで満足できる性質を備えていると結論づけています。とくにむちゃ食い系の患者では、この面接は過食に関連する症状をとらえ、食事制限の傾向とは切り離されたかたちで、設計どおりに働いていました。

一方で、食事制限が中心の患者では、面接による評価でも課題が残ることが示されました。研究チームは、制限型でFASIのほうが該当者を多く見つけた点と、得点が食事制限の強さと関連していた点に注目しています。そして、本当に依存的な食べ方なのか、それとも厳しい制限のために少量でも「食べ過ぎた」と感じているだけなのかを見分けることが難しい場合がある、と指摘しています。この研究は、食べ物への依存的な症状を測る道具を言語や文化を越えて使えるようにするとともに、患者の状態によって評価の際に注意が必要な点があることを具体的に示したものといえます。

著者:Elvira Anna Carbone(Department of Health Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100, Catanzaro, Italy)、Lavinia Rotella(Department of Medical and Surgical Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100, Catanzaro, Italy)、Serena Maria Garofalo(Department of Medical and Surgical Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100, Catanzaro, Italy)、Giorgia Francesca Vizza(Department of Medical and Surgical Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100, Catanzaro, Italy)、Daria Quirino(Department of Medical and Surgical Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100, Catanzaro, Italy)、Renato de Filippis(Department of Health Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100, Catanzaro, Italy)、Marianna Rania(Psychiatric Unit, University Hospital Renato Dulbecco, 88100, Catanzaro, Italy)、Ettore D’Onofrio(Psychiatric Unit, University Hospital Renato Dulbecco, 88100, Catanzaro, Italy)、Ashley Nicole Gearhardt(University of Michigan, 530 Church St., Ann Arbor, MI, 48103, United States)、Erica M. LaFata(Oregon Research Institute, 3800 Sports Way, Springfield, OR, 97477, United States)、Cristina Segura‐Garcìa(Department of Medical and Surgical Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100, Catanzaro, Italy)、Matteo Aloi(Department of Clinical and Experimental Medicine, University of Messina, 98125, Messina, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Elvira Anna Carbone, Lavinia Rotella, Serena Maria Garofalo, et al. Italian validation and exploratory measurement invariance of the food addiction symptom inventory (FASI). Eating and Weight Disorders - Studies on Anorexia Bulimia and Obesity 2026-10-16. DOI: 10.1007/s40519-026-01917-6. 原著ライセンス:CC BY.