著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Indonesian Journal of Strategic Management
ライセンス: CC BY-SA 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的:茶葉が工場で待たされる問題
インドネシアは世界有数の茶の生産国で、国内の需要も年々伸びています。研究チームが調査したインドネシア・バンドンの緑茶加工工場では、摘み取った生の茶葉が1日の処理能力を大きく超えて届くことがあり、処理しきれない茶葉が翌日まで持ち越されていました。工程で長く待たされると、最終製品の品質が落ちるおそれがあります。
著者らはこの問題に対し、三つの問いを立てました。工場が実際に達成できる生産能力はどれくらいか、生産の流れを妨げている工程はどこか、そして生産能力をどう高められるか、です。考え方の土台には「制約理論」を置いています。これは、システム全体の処理速度は最も遅い工程によって決まるという考え方で、そうした工程は「ボトルネック」と呼ばれます。
方法:工場の流れをコンピューター上に再現する
研究チームは「離散事象シミュレーション」という手法を使いました。茶葉の到着、加工の開始や終了といった出来事が起きるたびにシステムの状態が変わる様子を、コンピューター上で再現する方法です。実際の工場を止めたり設備を変えたりせずに、さまざまな条件を試せる点が特徴です。
まず、現場の観察と工場管理者への聞き取りで、作業員の数、機械の台数と能力、工場の配置、各工程の処理時間、生産量を集めました。再現した工程は、生葉の自然な萎凋(しおれさせる工程)、回転式の機械(ロータリーパンナー)での加熱、冷却、揉み、乾燥、ボールティー機での二度目の加熱、回転式乾燥機での三度目の加熱などを経て、乾燥した緑茶葉と茶の粉末になるまでの流れです。モデルはシミュレーションソフトのProModelで作成しました。
過去の日々の生産量(2024〜2025年)には2万4千キロ前後から約3万キロに達する極端に多い日も含まれていましたが、繁忙時も実際に起こりうるとして分析に残しました。そのうえで、1日に届く茶葉の量を5トンから30トンまで変えて計算しています。また、シミュレーションの出力を実際の生産記録と統計的に比べ、両者に有意な差がないことを確かめて、モデルが現実の工場をよく再現していると判断しました。
主な結果:1日10トン前後が限界、詰まりの中心は加熱工程
現状の設備のままでは、茶葉の量が増えるほど処理にかかる時間が長くなりました。10トンでは約23.9時間で1日に収まりますが、15トンでは約29.7時間、30トンでは約43.1時間かかりました。論文は、現状の生産能力は1日10トンほどにとどまり、会社が目標とする1日20〜30トンには届かないと報告しています。
機械ごとの稼働率(運転時間のうち実際に作業している割合)を見ると、ロータリーパンナーが一貫して最も高く、30トンでは65%を超えました。この工程は前後の機械より処理に時間がかかるため、手前で仕掛かり中の茶葉がたまり、その遅れが後の工程全体に響きます。著者らは、ここが主なボトルネックだと結論づけています。さらに、ボールティー機では待ち時間が最も長く、要旨では802分と報告されています。冷却工程も詰まりの一因に挙げられています。
次に研究チームは、処理が24時間を超えた15〜30トンの範囲で、混み合う工程に機械を追加するシナリオを試しました。たとえば30トンの場合、ロータリーパンナーと冷却機をそれぞれ3台、揉み機を8台、乾燥機を1台、ボールティー機を10台追加すると、処理時間は約43.1時間から約23.3時間に短縮され、1日以内に収まる結果となりました。追加後は機械どうしの負担の偏りも小さくなり、稼働率がより均等に分散したと報告されています。
この研究が示すこと
この研究は、生産の詰まりを見つける作業と、能力を高める対策の検討を、実際の工場データにもとづく一つのシミュレーションでまとめて行えることを示しました。すべての工程を一律に増強しなくても、混み合う工程に絞って機械を増やせば、全体の流れが改善しうるという結果です。一方で著者らは、シミュレーション結果を実際の工場に当てはめるには、現場の運用条件に合わせたさらなる分析と調整が必要だとも述べています。
原著論文の著者・所属:Alam Santosa(Universitas Komputer Indonesia)、Alif Naufal Putra(Universitas Komputer Indonesia)、Jobiner Parlindungan Situngkir(Universitas Komputer Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alam Santosa, Alif Naufal Putra, Jobiner Parlindungan Situngkir Capacity Management and Bottleneck Identification in Green Tea Industry Using Simulation. Indonesian Journal of Strategic Management 2026-08-31. DOI: 10.25134/ijsm.v9i2.167. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。