離乳食や補完食の分野では、地域で入手しやすい穀物や果実を組み合わせて、栄養バランスの良い食品を作る試みが続けられています。今回紹介する研究では、西アフリカなどで親しまれている雑穀「ミレット(Pennisetum glaucum)」と、「アフリカパンノキ(Treculia africana)」という植物の実を組み合わせた複合食に着目し、種子を発芽させる処理(スプラウティング)が栄養価や食べやすさにどう影響するかを調べています。発芽処理は、穀物や豆類の栄養価を高めたり、消化を妨げる成分を減らしたりする伝統的な加工法として知られており、これを複合食にどう応用できるかが今回のテーマです。
研究でわかったこと
この研究では、ミレットとアフリカパンノキを組み合わせた配合食を作り、発芽時間を変えて栄養成分(一般成分、ミネラル、ビタミン)、抗栄養成分、そして官能評価(味や食感などの評価)を比較しました。
その結果、発芽時間が長くなるほど、水分(6.09〜6.97%)、灰分(1.19〜1.59%)、粗繊維(2.26〜2.56%)、炭水化物(50.63〜67.31%)、エネルギー(355.45〜360.05 kcal/100 g)、還元糖(2.40〜5.17%)、食物繊維(43.99〜55.00%)は増加したと報告されています。一方で、脂質(11.62〜7.30%)、タンパク質(28.20〜16.45%)、でんぷん(7.82〜4.24%)は発芽時間が長くなるにつれて減少したとされています。ただし、タンパク質量が減少した後でも、発芽させた配合食のタンパク質含量は、市販の対照製品(16.45%)と同程度の水準にとどまっていたことが示されています。
ミネラルやビタミンについては、発芽処理によってリン(46.78〜105.90 mg/100 g)やビタミンA・C・Eの含量が増加した一方、カルシウム(208.17〜116.53 mg/100 g)とマグネシウム(158.36〜76.82 mg/100 g)は減少したと報告されています。また、体内でのミネラル吸収を妨げるとされるフィチン酸、タンニン、シュウ酸といった抗栄養成分は、発芽処理によって明らかに減少したことが示されました。官能評価では、発芽させた配合食は風味や食感などの官能特性が改善し、全体的な受容性も良好であったとされています。なお、比較対象とした市販製品(NUTREND)が最も高い評価を得たものの、これは消費者がその製品に慣れ親しんでいることが一因である可能性があると論文では述べられており、発芽させた複合食についても補完食としての栄養面・官能面での可能性が示されたとまとめられています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の配合や発芽条件のもとで得られた結果を報告するものであり、この一つの研究をもって発芽処理の効果や複合食の優劣が確定したわけではありません。また、要旨に記載されている栄養成分や抗栄養成分の変化はあくまで研究内で測定された数値であり、実際の健康への影響(改善や予防など)を直接示すものではない点に留意が必要です。今後、他の条件や集団を対象とした研究の積み重ねによって、知見がさらに検証されていくことが期待されます。
まとめ
ミレットとアフリカパンノキを組み合わせた複合食に発芽処理を施すことで、食物繊維やビタミンなどが増加する一方、タンパク質や一部ミネラルは減少し、抗栄養成分は減少するという結果が示されました。官能評価でも一定の受容性が確認されており、発芽処理が補完食の栄養設計における一つの工夫となりうることを示唆する研究といえます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:発芽時間がミレット(Pennisetum glaucum)-アフリカパンノキ(Treculia Africana)複合食の栄養品質、機能特性、抗栄養成分に及ぼす影響(スカラリー・ジャーナル・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー・リサーチ・アンド・ディベロップメント・2026年07月)