パンの原料といえば小麦粉を思い浮かべる方が多いと思いますが、世界の穀物生産量でトウモロコシ・コメ・大麦に次いで5番目に重要とされる穀物に「ソルガム(モロコシ)」があります。ソルガムの粒はたんぱく質含有量が4.4%から21.1%と幅があり、平均は11.4%とされています。また、ほかの穀物と比べて粒が硬いことが知られており、これはプロラミンというたんぱく質の一種を比較的多く含むことが関係していると説明されています。今回紹介する研究では、このソルガムを一部使ったパンと、インドネシアの発酵乳製品「ダディ」を使ったソースを組み合わせた新しい食品の開発が試みられました。
研究チームは、西スマトラのアガム県で採取された「ダディ」というスイギュウの乳を乳酸菌で発酵させた伝統的な発酵乳を用いました。ダディは「ブラ(vla)」と呼ばれるとろみのあるソースのような形に加工できるとされており、今回はそこにイチゴを加えたダディ・ブラが作られました。
研究でわかったこと
この研究では、ソルガムを0%・5%・10%の割合で置き換えたパンと、イチゴを0%・15%・20%の割合で加えたダディ・ブラをそれぞれ組み合わせ、複数の配合パターンを作成しました。そのうえで、成分分析(物理化学的な検査)と、人が実際に味わって評価する官能検査の両方が行われました。
その結果、最も好ましいと評価された組み合わせは「ソルガム5%配合のパン」と「イチゴ15%配合のダディ・ブラ」であったと報告されています。この配合の栄養成分を分析したところ、水分39.24%、炭水化物48.51%、灰分0.76%、たんぱく質5.85%、脂質5.74%、粗繊維1.81%、ビタミンC 43.89mgという値が示されました。また、酸性度を示すpHは4.89、明るさ(輝度)56.87、赤み5.60、黄み16.97という測定結果も得られています。
さらに詳しく調べたところ、このパンに含まれるアミノ酸の中で最も多かったのはグルタミン酸で、以下プロリン、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、グリシン、アルギニン、バリン、アラニン、トレオニン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、シスチン、メチオニンの順に多く含まれていたとされています。抗酸化活性については93,667.44μg/mLという数値が報告されました。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の配合条件下でのパンとダディ・ブラの官能評価と成分分析を行ったものであり、健康への効果や効能を検証した研究ではありません。示された栄養成分値や抗酸化活性の数値も、あくまでこの特定の配合・条件のもとで得られた測定結果である点に留意が必要です。論文の著者ら自身も、今後は認定を受けた検査機関での試験や、他の栄養関連項目の測定を行うことが望ましいと述べており、より完成度の高い製品開発に向けた研究の一段階と位置づけられています。
まとめ
今回紹介した研究は、ソルガムという世界的に重要な穀物と、インドネシアの伝統的な発酵乳製品ダディを組み合わせた新しいパンの開発を試みたものです。ソルガム5%・イチゴ入りダディ・ブラ15%という配合が最も好まれ、たんぱく質やビタミンC、多様なアミノ酸、抗酸化活性などが確認されたと報告されています。ただし、これは一つの研究であり、結論が確定したものではありません。今後さらに検査や検証が重ねられることで、こうした穀物や発酵食品を活用した食品開発がどのように進んでいくのか、注目したいところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ソルガム代替パンとストラワベリー・ダディ・ブラの官能的嗜好性と栄養成分(インターナショナル・ジャーナル・オブ・フード・サイエンス・2026年01月)