ルッコラ(ロケット)は、独特の辛みと香りを持つ葉物野菜として、サラダなどで親しまれています。近年、野菜の栽培環境における「光の質」、つまりどの色の光を当てるかが、野菜に含まれる成分に影響を与えることが注目されています。植物は光を浴びることで光合成などの基本的な生命活動(一次代謝)だけでなく、色素や香り成分などをつくる働き(二次代謝)も調節しているためです。今回紹介する研究は、収穫前のルッコラに赤色または青色のLED光を補光すると、葉の栄養的な品質にどのような変化が起きるのかを調べたものです。

研究でわかったこと

この研究では、温室で栽培したルッコラに対して、収穫前の14日間、赤色または青色のLED光を1日4時間(15時〜19時)追加で照射する実験が行われました。もともとの太陽光は弱めの環境に、強さ約40µmol m⁻²s⁻¹の補光を加えるという方法です。このように収穫の直前だけに特別な処理を施すやり方は「End-of-Production処理」と呼ばれています。

その結果、赤色光を照射した葉では、無処理の対照区と比べて、カルシウムが28%、リンが140%、カロテノイド(黄〜オレンジ色の色素)が40%、アントシアニン(赤紫色の色素)が75%、総フェノール類(ポリフェノールの総称)が34%、それぞれ増加したと報告されています。一方で、クロロフィル(葉緑素)やタンパク質、糖の量には変化が見られなかったとされています。つまり、光合成や基本的な栄養成分を担う一次代謝には影響を与えずに、ミネラルや色素・フェノール類といった成分だけが増えたことになります。研究チームはこの結果について、低強度の赤色光補光は一次代謝を犠牲にすることなくルッコラ葉の栄養品質を改善しうるEnd-of-Production処理である、と述べています。

これに対して青色光を照射した区では、対照区と比べて調べたどの成分にも差が見られなかったとされています。この論文では、今回用いた青色光の補光量が不十分だった可能性が指摘されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、特定の条件(光の強さ、照射時間、期間、温室という栽培環境など)のもとで得られた結果であり、栽培条件が変われば同じ結果になるとは限りません。また、成分の増加が味や保存性、実際の健康への影響にどうつながるかについては、この要旨からは言及されていません。一つの研究で得られた知見であり、これだけで結論が確定したわけではない点に留意して読む必要があります。

まとめ

収穫前のルッコラに赤色LED光を補光すると、カルシウムやリンといったミネラル、カロテノイドやアントシアニンといった色素、総フェノール類が増加する一方、クロロフィルやタンパク質、糖には変化がなかったと報告されています。青色光では同様の変化は見られなかったとされ、今回の条件では光量が十分でなかった可能性が示唆されています。光の色や強さを工夫することで野菜の成分を変えられる可能性を示す興味深い研究といえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:収穫前の低強度赤色または青色LED光照射がルッコラの栄養品質に与える影響(ディスカバー・プランツ・2026年07月)