この研究は、ナイジェリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:FUDMA Journal of Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ鶏の肝臓・心臓・胸肉を調べたのか

マイクロプラスチックとは、大きさが5ミリメートル未満のプラスチック粒子のことです。大きなプラスチックごみが時間をかけて細かく砕けたものなどが含まれ、水にほとんど溶けず分解されにくいため、土壌や水、大気に残り続けると研究チームは説明しています。論文によれば、ナイジェリアはプラスチック汚染が世界で9番目に多い国とされ、年間およそ250万トンのプラスチック廃棄物が発生する一方、リサイクルされるのは12%未満だと報告されています。

著者らは、鶏を対象にしたこれまでの研究の多くが、消化管である腸・そのう・砂肝に注目してきた点に着目しました。人が実際に食べる内臓や筋肉、すなわち肝臓・心臓・胸肉については、しかも実験室で意図的にプラスチックを与えたのではなく自然環境で暮らす中で取り込んだ場合のデータが乏しいと述べています。そこで本研究は、ナイジェリア・カドゥナ州チクン地方行政区の鶏について、可食部位に含まれる粒子を同定し性状を調べること、あわせて組織を溶かす二つの前処理法の使い勝手を比べることを目的としました。

どのように調べたか

研究チームは、10羽の鶏から肝臓・心臓・胸肉の計30検体を集めました。内訳は、集約的に飼育されたブロイラー5羽(生後6〜8週)と、放し飼いの在来種5羽(生後4〜6か月)です。器具はエタノールですすいだステンレス製のものを使い、各検体はアルミホイルに包んで氷で運び、分析まで−20℃で保存されました。

組織を溶かして粒子を取り出す工程では、二つの方法が15検体ずつ無作為に割り当てられました。一つは10%水酸化カリウム(KOH)を使うアルカリ分解、もう一つは過酸化水素と鉄イオンを使うフェントン酸化分解です。取り出した粒子は、ATR-FTIRという赤外線を当てて物質固有の吸収パターンからプラスチックの種類を判定する手法と、走査型電子顕微鏡(SEM)で表面の形を観察する手法で調べられました。なお著者らは、本研究が同定と性状把握を目的とした定性的な調査であり、粒子の数量を測る定量分析は行っていないと明記しています。実験中の汚染を確かめるため、組織を入れずに同じ処理をした対照も用意され、そこからはプラスチックは検出されませんでした。

報告された主な結果

30検体のうち19検体からマイクロプラスチックとみられる粒子が検出されました。陽性19検体の中での検出頻度をみると、ポリエチレン(PE)が63.2%と最も多く、ポリスチレン(PS)とポリエチレンテレフタレート(PET)がそれぞれ47.4%、続いてポリプロピレン(PP)が15.8%、ポリ塩化ビニル(PVC)が10.5%でした。

部位別では、肝臓が10検体中9検体(90%)と最も高い検出割合を示し、心臓が70%、胸肉が30%と続きました。著者らは、肝臓が血液中の有害物質を処理する解毒・ろ過の役割を担うことと関係している可能性を挙げつつ、これは検出された頻度と種類の多様さについての観察であって濃度を示すものではないと断っています。品種別では、ブロイラーの検体(15検体中11検体)のほうが在来種(15検体中8検体)より検出頻度が高く、検出されたポリマーの種類も多い傾向がみられました。ただし、体の大きさや飼料・環境の違いが背景として考えられるものの、飼料や周辺環境そのものは調べていないため原因は特定できないとしています。

SEMによる形の分類では、角ばって表面が粗い破片状が47.4%と最も多く、細長い繊維状と多孔質の発泡状がそれぞれ21.1%、ビーズのような球状が10.5%でした。破片状はブロイラーの組織で、繊維状は在来種で比較的多く観察されたと報告されています。分解法の比較では、KOHのほうがろ紙がきれいになり有機物の除去が進んだようにみえた一方、フェントン酸化は脂質の多い組織を溶かすのに適しているようで、PETの検出がより多く得られたとされています。著者らは、あらかじめ既知量の粒子を加えて回収率を確かめる検証を行っていないため、分解効率を数量的に評価することはできないと述べています。

この報告が示すこと

この研究は、対象地域で採取された鶏の可食部位に、自然な環境曝露を通じて取り込まれたとみられるプラスチック由来の粒子が存在するという予備的な証拠を示しました。消化管だけでなく、肝臓や心臓、胸肉といった人が口にする部位でも粒子が確認された点が、報告の中心にあります。

同時に著者らは、本研究が探索的・定性的であり、検体数が少なく定量分析を欠くため、調べた鳥や地域を超えて一般化することはできないと明確に限界を示しています。得られたのは濃度ではなく検出の頻度と多様さであり、粒子の由来も直接には確かめられていません。それでも、これまでデータの乏しかった地域と部位について出発点となる情報を残したことが、この報告の意味だといえます。

著者:Mercy O. Boyi(Nigerian Defence Academy, Kaduna)、Adetutu O. Aliyu(Chemistry Department , Nigerian Defence Academy , Kaduna , Nigeria)、Saidu Garba(Arnament Engineering Department , Air Force Institute of Technology , Kaduna , Nigeria)、Abdulafeez Akorede

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mercy O. Boyi, Adetutu O. Aliyu, Saidu Garba, et al. Microplastic Contamination in Edible Tissues of Broiler and Free -Range Chickens (Gallus gallus domesticus) from Nigeria: Polymer and Morphological Characterisation Using ATR-FTIR and SEM with Comparison of KOH and Fenton Digestion Protocols. FUDMA Journal of Sciences 2026-09-15. DOI: 10.33003/fjs-2026-1015-5607. 原著ライセンス:CC BY.