日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Exploration of Asthma & Allergy

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

スギ花粉症は日本で非常に多くの人が悩む病気です。論文によると、2019年の日本ではアレルギー性鼻炎の有病率が49.2%、スギ花粉症が人口の38.8%に達していました。研究チームは、体の働きを調整する食品由来の成分が花粉症の予防や症状の緩和に役立つ可能性に注目しました。

今回使われたのは二つの素材です。一つは、京都の伝統的な漬物「すぐき漬け」から分離された乳酸菌Pediococcus sp. KB1(以下KB1)で、加熱して死菌にしたものを用いました。もう一つは赤しその葉のエキスです。赤しその葉はポリフェノールと食物繊維を豊富に含み、腸内細菌のエサとなって良い働きを促す「プレバイオティクス」としての作用も期待されています。乳酸菌などの有用菌とそのエサとなる成分を組み合わせる考え方は「シンバイオティクス」と呼ばれます。

著者らによると、乳酸菌やポリフェノール・食物繊維を含む素材それぞれの抗アレルギー作用はこれまでにも報告されていました。しかし、スギ花粉の主要なアレルゲン(アレルギーの原因物質)であるCry j1を用いたモデルで両者を組み合わせた効果を調べた研究は限られていました。そこで研究チームは、KB1と赤しそ葉エキスを併用したときの効果と、腸内細菌の変化との関係をマウスで調べました。

どのように調べたか

研究チームは、Cry j1を腹腔内に注射してアレルギー反応を起こしやすくし、その後Cry j1を鼻に繰り返し投与することで、スギ花粉症に似た症状を示すマウスを作りました。マウスは、花粉症を起こさせない群、花粉症を起こさせて水だけを与えた群、KB1を与えた群、赤しそ葉エキスを与えた群、両方を与えた群の5群(各7匹)に分けられ、31日間の試験期間中、週6回口から投与を受けました。

評価の中心は症状の改善で、最後にCry j1を鼻に投与した直後5分間のくしゃみと鼻をこする回数を数えました。あわせて、アレルギーの指標となる血液中のIgE抗体、炎症を抑える働きを持つ情報伝達物質(サイトカイン)のIL-10とIL-27、免疫器官である脾臓での関連遺伝子の働きを測定しました。さらに、ふんに含まれる細菌の構成とふんのpHも調べました。

主な結果

花粉症を起こさせたマウスではくしゃみや鼻をこする行動が増えましたが、KB1または赤しそ葉エキスを単独で与えた群ではこれらが抑えられました。両方を併用した群では、単独の場合よりもさらに大きく回数が減ったと報告されています。血液中のIgEも、花粉症を起こさせると増えたのに対し、それぞれの投与で増加が抑えられ、併用群で最も大きく低下しました。また、花粉症マウスで重くなった脾臓の重さは、KB1群と併用群で有意に軽くなりました。

炎症を抑える物質については、併用群で血液中のIL-10とIL-27が単独投与の群より有意に高くなりました。脾臓でも、IL-10とIL-27に加え、免疫の行き過ぎを抑える細胞に関わるFoxp3や、IFN-γの遺伝子の働きが併用群で高まっていました。

腸内細菌では、併用群で酪酸という短鎖脂肪酸を作る菌として知られるラクノスピラ科やオシロスピラ目の割合が単独投与より多くなり、炎症との関連が指摘されるエンテロラブダス属は少なくなりました。花粉症を起こさせると増えたバクテロイデス属やガストラナエロフィラレス目は、KB1や赤しそ葉エキスを与えた群では少なくなっていました。ふんのpHは、水だけを与えた花粉症マウスの6.67に対し、併用群では6.27と有意に低くなりました。

この研究が示すこと

著者らは、KB1と赤しそ葉エキスの併用によってマウスのスギ花粉症の症状が和らぐことが示唆され、それが血液中のIL-10の増加や、酪酸を作る菌が増える方向への腸内細菌の変化と関連していたと結論づけています。そのうえで、乳酸菌と赤しそ葉エキスの組み合わせが、スギ花粉症対策を補う方法になりうる可能性を示しています。

ただし、これはマウスを使った実験の結果です。また論文では、腸内細菌の解析は1群3〜4匹と少数で予備的なものであり、観察された変化は因果関係ではなく関連として解釈すべきだと述べられています。免疫の変化が腸内細菌の変化だけによるものではなく、赤しそ自体が持つ抗炎症作用を反映している可能性にも触れています。食品由来の素材を組み合わせることで、アレルギー症状と腸内環境の両方に変化が見られたことを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Akina Omori(Department of Synbiotics, Institute for Genetic Medicine, Hokkaido University, Sapporo, Hokkaido 060-0815, Japan)、Takao Mori(LAB Biotech Co., Ltd., Hokudai Business Spring Bidg, Sapporo, Hokkaido 001-0021, Japan)、Tadaaki Miyazaki(Department of Synbiotics, Institute for Genetic Medicine, Hokkaido University, Sapporo, Hokkaido 060-0815, Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Akina Omori, Takao Mori, Tadaaki Miyazaki. Effects of synbiotic Pediococcus sp. KB1 and red perilla leaves on alleviation of allergic inflammation associated with alterations in gut microbiota in murine cedar pollinosis. Exploration of Asthma & Allergy 2026-10-19. DOI: 10.37349/eaa.2026.1009137. 原著ライセンス:CC BY.