著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肥満は世界で10億人以上が抱える慢性疾患とされています。薬物療法には長期の服用や副作用の課題があるため、食事による予防や管理が重視されています。研究チームが注目したのは、中国で広く食べられている昆布(Laminaria japonica)とシイタケ(Lentinula edodes)です。どちらも食物繊維や生理活性成分が豊富ですが、それらの食物繊維を加えた麺に脂質を下げる働きがあるかは明らかではありませんでした。また、ほかの機能性植物素材と組み合わせた場合の効果も、体系的には調べられていませんでした。

そこで著者らは、これらの素材を組み合わせた低GIの機能性粉を開発しました。そして、試験管内での性質と、肥満マウスでの糖・脂質代謝や腸内細菌への影響を調べました。GI(グリセミック・インデックス)は、食品を食べた後の血糖値の上がりやすさを示す指標で、55以下が低GI食品とされます。

三つの配合粉と調べた内容

研究チームは、栄養バランスの考え方に基づいて三つの配合粉を作りました。R1は、小麦粉にダッタンそば粉、白きくらげ粉、こんにゃく粉、大豆粉を加えた基本の配合です。R2は、小麦粉の割合を減らし、昆布とシイタケから取り出した食物繊維を加えた配合です。R3は、さらに小麦粉を減らし、山芋、茯苓(ブクリョウ)、葛の根、白いんげん豆などの粉末を加えた配合です。

試験管内では、次の項目を調べました。 ・栄養成分 ・でんぷんの消化されやすさと推定GI ・コレステロールや胆汁酸塩を吸着する力 ・二つの消化酵素を妨げる働き α-グルコシダーゼは糖を分解して吸収しやすくする酵素で、膵リパーゼは脂肪を分解する酵素です。

動物実験では、オスのマウスに高カロリー食を2週間与えて肥満状態にしました。その後の6週間は、餌の70%を各配合粉に置き換えた食事を与えました。比較対象として、肥満マウスのモデル群と、肥満誘導をしていない正常群を設けました。この二つの群には、同じ割合で通常の小麦粉を含む餌を与えています。期間中には、血糖値、体重、血液中の脂質、肝臓・脂肪組織・盲腸の組織の状態などを調べました。ブドウ糖を飲ませた後の血糖の推移を見る糖負荷試験も行っています。腸内細菌の構成は、正常群、モデル群、R3群の盲腸の内容物で分析しました。腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の量も測定しています。

主な結果

三つの配合粉は、小麦粉に比べてたんぱく質、食物繊維、ポリフェノール、フラボノイドが多く、炭水化物は少なくなっていました。食物繊維の量は小麦粉の2.2〜3.6倍で、R3が最も多かったと報告されています。試験管内で推定したGIは、小麦粉の約71に対し、三つの配合粉はいずれも55を下回りました。マウスで測ったGIも、三つの配合粉はいずれも小麦粉より有意に低い値でした。この結果から、著者らはこれらの配合粉を低GI食品に分類できるとしています。

試験管内の機能性では、三つの配合粉はいずれも小麦粉よりコレステロールを多く吸着しました。吸着量は1グラムあたりR1が20.65ミリグラム、R2が31.70ミリグラム、R3が44.25ミリグラムでした。胆汁酸塩との結合はR2とR3で高くなっていました。膵リパーゼとα-グルコシダーゼを妨げる働きも、配合粉の方が強く見られました。α-グルコシダーゼの阻害率はR3で55.22%と、最も高い値でした。

肥満マウスでは、三つの配合粉のどれを与えた群も、モデル群に比べて体重が有意に減りました。空腹時血糖値や糖負荷試験での血糖の上昇も抑えられていました。組織の状態にも変化が見られ、肝臓の障害や肝細胞の病的な変化が和らいでいました。また、精巣上体周辺の脂肪細胞が小さくなり、盲腸組織の炎症も抑えられていました。こうした効果はR3で最もはっきりしていたと報告されています。

R3群では、モデル群に比べて腸内細菌の構成にも変化が見られました。有益とされる細菌が増え、病気に関わる可能性のある細菌は減りました。肥満との関連が指摘されているファーミキューテス門とバクテロイデス門の比率(F/B比)も低下しました。短鎖脂肪酸は腸内細菌が食物繊維などを分解して作る物質で、このうち酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸が増えていました。さらに、特定の細菌の属と代謝の指標との間に、統計的に有意な関連が見られました。

研究が示すこと

著者らは、この低GI機能性粉、特にR3が肥満マウスの代謝状態を改善したと結論づけています。その改善には、腸内細菌の構成や短鎖脂肪酸の産生の変化が伴っていました。ただし、腸内細菌の変化と代謝の改善の関係は、相関として示されたものです。腸内細菌が改善をもたらしたという因果関係は、腸内細菌の移植実験などで確かめる必要があると、著者ら自身が述べています。

この研究は、昆布とシイタケの食物繊維を軸に複数の植物素材を組み合わせた粉について、マウスでの結果を報告したものです。この粉を与えたマウスでは、血糖や脂質の指標と腸内環境の両方に変化が見られました。

著者:Aijun Tong(College of Tea and Food Science, Wuyi University)、Ying Zheng(College of Food Science, Fujian Agriculture and Forestry University)、Wenfang Cheng(College of Food Science, Fujian Agriculture and Forestry University)、Junlin Wu(College of Food Science, Fujian Agriculture and Forestry University)、Yueting Zheng(College of Food Science, Fujian Agriculture and Forestry University)、Simin Liu(College of Tea and Food Science, Wuyi University)、Xiaoyan Liu(College of Marine Sciences, Fujian Agriculture and Forestry University)、Chao Zhao(School of Food and Health, Beijing Technology and Business University)、Bin Liu(College of Food Science, Fujian Agriculture and Forestry University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aijun Tong, Ying Zheng, Wenfang Cheng, et al. Low-glycemic index functional flour modulates gut microbiota in association with anti-obesity effects in mice. Frontiers in Nutrition 2026-10-13. DOI: 10.3389/fnut.2026.1910403. 原著ライセンス:CC BY.