掲載誌:Dietary Supplements and Nutraceuticals

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ「食べて肌を支える」ことが研究されているのか

肌の老化は、年齢とともに自然に進む変化(内因性老化)と、紫外線や大気汚染、喫煙、睡眠、ストレス、食事といった外からの要因(外因性老化)が重なって起こると、著者らは整理しています。見た目としては乾燥、小じわ、しわ、弾力の低下、きめの粗さ、色むら、そして肌を守るバリア機能の回復力の低下として現れます。

細胞のレベルでは、酸化ストレス、慢性的な弱い炎症、コラーゲンやエラスチンの構造の乱れ、コラーゲンを分解する酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ)の働きの増加、糖化による傷み、表皮バリアの弱まりなどが関わるとされます。皮膚は代謝の活発な組織で、たんぱく質の合成や抗酸化、バリアを作る脂質の維持に食事由来の材料を必要とします。そのため、口から摂る食品成分が肌の状態にどう関わるかが研究の対象になってきました。

この総説の目的は、経口で摂る機能性食品や食品由来の生理活性成分を、保湿(水分量)、弾力、しわ、色素沈着、経表皮水分蒸散量(TEWLと呼ばれる、肌から失われる水分の量の指標)、紫外線に対する防御という、測定できる指標と結びつけて評価することです。著者らは、食事を化粧品的な治療や日焼け止めの代わりとして示すつもりはなく、予防を重視した生活習慣の一部として位置づけたいと述べています。

どのように調べたか

著者らはPubMedとFunctional Food Center系の学術誌を対象に、各誌やデータベースの創刊・開始時点から2026年7月までの文献を検索しました。下限の年を区切らない一方で、近年の証拠を優先しています。検索語は「機能性食品」「皮膚老化」「コラーゲンペプチド」「カロテノイド」「ポリフェノール」「ビタミンC」「光防御」「腸‑皮膚軸」などを単独および組み合わせで用いました。

口から摂る食品や食品由来成分を扱い、保湿・弾力・しわ・色素沈着・TEWL・光防御・バリア機能、またはそれらに関わる生体メカニズムを報告した研究が対象です。塗るだけの化粧品、食品でない医薬品、関係のない皮膚疾患の治療は、背景として役立つ場合を除いて除外されました。なお著者ら自身が、これは体系的レビュー(システマティックレビュー)ではなく叙述的な総説であり、PRISMAのような正式な選別手続きは行っていないと明記しています。

この総説の特徴として、著者らは介入を「全体食品」「規格化された抽出物」「単離された生理活性成分」「配合製品」の4種類に分けています。分け方が重要なのは、報告すべき情報が異なるためです。たとえば全体食品ならグラム数や食事の文脈、抽出物なら抽出法・指標成分・組成・安定性、単離成分なら純度や分子量の規格と1日量、配合製品なら完成品としての結果は示せても各成分の寄与は分からない、という違いがあります。

主な報告結果

著者らによれば、見た目の老化に関して人での直接的な証拠が最も多いのはコラーゲンペプチドです。おおむね8〜12週間の摂取で、水分量、弾力、しわの見え方、真皮の密度などにわずかな改善を報告した臨床試験やメタ解析があるとされます。例として紹介されているのは、35〜55歳の女性69人を対象とした二重盲検・プラセボ対照試験で、1日2.5gまたは5gの特定のコラーゲン加水分解物を8週間摂取した群では、プラセボと比べて弾力が有意に改善しました。水分量とTEWLは全体としては好ましい方向でしたが統計的に有意ではなく、治療に関連する有害事象の報告はありませんでした。

一方で著者らは、ペプチドの由来、分子量、用量、期間、対象者の年齢、測定法が研究ごとに異なること、多くの製品がビタミンCやヒアルロン酸などと組み合わされているためコラーゲン単独の効果か判別しにくいこと、製品固有・業界資金の研究が含まれることを繰り返し注意点として挙げています。

紫外線に対する抵抗性については、トマト由来のカロテノイドや、ココア・緑茶のポリフェノールに関する報告が紹介されています。健康な女性20人が1日55gのトマトペースト(リコピン16mgをオリーブオイルとともに)を12週間摂った試験では、照射30時間後に既定の紅斑反応を生じさせるのに必要な紫外線量が、対照群より高くなりました(36.6±14.7に対し23.0±6.6 mJ/cm²、P = 0.03)。ただし最小紅斑量そのものには有意差がありませんでした。ココアフラバノールを1日329mg摂った群では、紫外線による紅斑が6週で約15%、12週で約25%減少し、TEWLは8.7±3.7から6.3±2.2 g/(h×m²)へ低下したと報告されています。いずれも少人数かつ特定の製品を用いた試験であり、著者らはこれらを日焼け止めの代わりではなく補完的なものとして扱うべきだとしています。

このほか、経口ヒアルロン酸、牛乳由来およびコメ由来のセラミド抽出物、アスタキサンチン、特定のプロバイオティクス株、大豆イソフラボン、食事由来の脂質、オリーブ葉抽出物、発酵パパイヤなどで、製品ごとの手がかりが得られていると整理されています。たとえば41〜59歳の成人110人を対象にした試験では、L. plantarum HY7714を1日1×10¹⁰ CFU、12週間摂取した群で水分量の増加、しわの深さの減少、つやと弾力の改善が報告され、弾力は12週時点で対照より21.73%高い値でした。ただしこうした効果は菌株ごと・製品ごとに異なると著者らは強調します。

用量が多いほど良いとは限らない例も挙げられています。閉経後の女性を対象とした16週間のマンゴー予備試験では、1日85gで深いしわの重症度が下がった一方、1日250gでは複数のしわの指標がむしろ悪化しました。著者らはここから、用量を段階的に検討する研究の必要性を説いています。

色素沈着については、著者らは人での直接的な証拠が乏しいと明確に述べています。多くのカロテノイド試験は紫外線による紅斑や分子レベルの光損傷を測っており、メラニン指数や色素沈着そのものを評価していないためです。したがって現時点の主張は、光防御や酸化ストレス対策を通じた間接的な支持にとどめるべきだとしています。

この総説が伝えていること

著者らの結論は、機能性食品はコラーゲン代謝、酸化ストレス、炎症、光防御、保湿、バリア機能への働きかけを通じて、日焼け対策や健康的な生活習慣を補いうる、というものです。同時に、製品カテゴリー全体に及ぶ主張や長期的な効果を正当化するには、標準化された製剤を用い、定量的な評価項目と多様な集団を含み、追跡期間の長い、独立した大規模試験が必要だとしています。

この総説から読み取れる要点は、「どの成分か」だけでなく「どの製品を、どれだけ、どれくらいの期間」という情報がそろって初めて意味を持つ、ということです。ある配合で得られた結果を同じ成分名の別の製品にそのまま当てはめることはできない——著者らが介入を4種類に分けて評価した理由は、まさにそこにあります。

著者:Yang Wu、Danik Martirosyan

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yang Wu, Danik Martirosyan. Nutraceuticals, functional foods, and bioactive compounds for healthy skin aging: Effects on hydration, elasticity, wrinkles, pigmentation, and photoprotection. Dietary Supplements and Nutraceuticals 2026-09-12. DOI: 10.31989/dsn.v5i9.2123. 原著ライセンス:CC BY.