著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Complex Issues of Cardiovascular Diseases

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

高齢者の高血圧は、心血管の合併症だけでなく、記憶や注意などの認知機能の低下とも関連します。研究チームは、医療資源が限られたウズベキスタンの伝統的な地域社会で、通常の薬物治療に認知機能の訓練や食事の見直しを加えることで、血圧管理と認知機能が改善するかを調べました。

何を、どのように調べたか

対象は、タシケントの一つの医療施設で募集した、高血圧と認知機能の低下がある65~83歳の60人です。認知機能を総合的に評価する検査「MMSE」の開始時の得点は25~28点でした。参加者を無作為に30人ずつの2群に分け、12週間にわたって比較しました。

両群とも標準的な薬物治療を受け、対照群には通常の生活習慣の助言を行いました。介入群にはさらに、認知訓練、身体活動、社会的な交流、食事指導を組み合わせた地域プログラムを実施しました。活動には、人生経験についてのグループ討論や異なる世代とのボードゲームなどが含まれました。食事指導では、高血圧対策の食事法であるDASHの考え方を地域の食習慣に合わせ、減塩や野菜・果物などの摂取を支援しました。

研究チームは、診察室と日常生活中の血圧、血圧の変動、MMSE、コンピューターを使った記憶・注意の検査、脳波のシータ帯域の活動を評価しました。60人全員が研究を完了しました。

主な報告結果

研究チームによると、診察室で測った収縮期血圧、いわゆる「上の血圧」の平均は、介入群で150.2から126.8 mmHgへ、対照群で149.8から138.5 mmHgへ下がりました。低下幅はそれぞれ23.4 mmHgと11.3 mmHgで、介入群のほうが統計的に有意に大きい結果でした。日常生活中に測った血圧も改善し、血圧の変動の減少も対照群より大きかったと報告しています。

MMSEの平均得点は、介入群で25.7点から27.9点へ2.2点上昇したのに対し、対照群では25.6点から25.8点へ0.2点の上昇でした。この改善幅にも統計的に有意な群間差がありました。短期記憶と注意の検査でも、介入群の改善幅が対照群を上回りました。

また、著者らは、脳波のシータ帯域の活動の増加が、認知機能の検査成績の改善と関連していたと報告しています。これは両者の関連を示す結果です。

この報告が示すこと

著者らは、高血圧の薬物治療に加え、家族や地域のつながりを生かした認知活動や交流、食事支援を組み込むことが、高齢者の血圧と認知機能を併せて支える方法になり得ると結論づけています。複雑な設備を必要としない簡略化した形なら、資源の限られた地域にも取り入れやすいという位置づけです。

一方、著者らは、参加者数が比較的少なく、追跡期間が短いことを限界に挙げています。また、炎症、血管の硬さ、神経変性に関する指標を測定していないため、観察された改善がどのような仕組みで起きたかの解釈には限りがあるとしています。

原著論文の著者・所属:Aleksandr V. Martynenko(LLC “Multifunctional Medical Center” M-clinic)、Andrey N. Ilnitski(Autonomous non-profit Organization Research Medical Center “Gerontology”)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aleksandr V. Martynenko, Andrey N. Ilnitski. COGNITIVE REHABILITATION OF OLDER ADULTS WITH ARTERIAL HYPERTENSION IN TRADITIONAL COMMUNITIES UNDER RESOURCE-LIMITED CONDITIONS: A RANDOMIZED CONTROLLED TRIAL. Complex Issues of Cardiovascular Diseases 2026-10-31. DOI: 10.17802/2306-1278-2026-15-5-19-29. 原著ライセンス:CC BY.