漁業は世界各地で食料や雇用を支える重要な産業ですが、船上での長時間労働や不規則な食生活、厳しい環境にさらされる働き方は、体にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。今回紹介する研究は、インド・タミルナードゥ州の沿岸漁業従事者を対象に、食生活や生活習慣が血圧にどう関わっているのかを調べたものです。漁業という特殊な職業環境と生活習慣病の関係を考えるうえで、興味深い切り口を提供しています。

研究でわかったこと

この研究は、インド・ラーマナータプラム県の海洋漁業従事者550名を対象とした横断研究として実施されました。研究チームは、参加者の栄養状態や生活習慣に関するさまざまなリスク要因と、血圧プロファイルとの関連を調べています。

その結果、高血圧は年齢が高い漁業従事者、特に46歳から55歳の層でより多くみられたと報告されています。また、BMI(体格指数)やウエスト・ヒップ比、ウエスト・身長比といった栄養関連の指標と高血圧との間には、有意な関連と弱い正の相関がみられたとされています。実際に、血圧が高い群の漁業従事者では、BMIの平均値が24.74±5.85、ウエスト周囲径の平均値が86.64±8.01cmであったことが示されています。

生活習慣に関する要因としては、喫煙や飲酒が前高血圧・高血圧と関連していることが、10%の有意水準で確認されたとのことです。さらに回帰分析では、BMI、ウエスト・身長比、欠食の習慣、使用している調理油の種類、ストリートフード(屋台などで売られる食品)を食べる習慣といった要因が、収縮期血圧・拡張期血圧の両方と有意な正の関連を示したと報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は特定の地域・職業集団を対象とした横断研究であり、ある時点での関連を調べたものです。そのため、これらの要因が血圧の上昇を「引き起こす」と断定するものではなく、あくまで統計的な関連が観察されたという段階にとどまります。また、対象がインドの海洋漁業従事者という特定の集団であるため、結果がそのまま他の職業や地域の人々に当てはまるとは限りません。一つの研究成果であり、これをもって結論が確定したわけではない点に留意する必要があります。

まとめ

この研究では、海洋漁業従事者において、BMIやウエスト周囲径といった体格指標、喫煙・飲酒、欠食や特定の食習慣などが血圧プロファイルと関連していることが示唆されました。研究チームは、こうしたリスク要因に着目した、漁業従事者向けの的を絞った健康介入の必要性を指摘しています。過酷な環境で働く人々の健康を支えるうえで、食生活や生活習慣がどのように関わっているのかを考える一つの手がかりとなる研究といえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:選定された海洋漁業従事者の血圧プロファイルに対する栄養・行動リスク要因の影響(インターナショナル・マリタイム・ヘルス・2026年07月)