肥満は世界的に増加が続く公衆衛生上の課題とされ、食事や生活環境、体質、心理面、社会経済的な要因など、さまざまな要素が絡み合って生じると考えられています。そのため、画一的な食事指導だけでは短期的な効果にとどまりやすいことが課題として指摘されてきました。今回紹介する研究は、こうした背景を踏まえ、一人ひとりの食事や身体活動の習慣を丁寧に把握したうえで、段階的に見直していく「個別化」されたアプローチが、肥満の管理にどの程度役立つのかを検討したものです。
研究でわかったこと
この研究では、肥満のある成人女性40名を対象に、9か月間にわたる前向きの介入研究が行われました。まず参加者一人ひとりの食事習慣と身体活動習慣をベースライン時点で把握し、その後、それぞれの状況に合わせて段階的に修正を加えていくという方法がとられています。摂食行動は、感情的な理由で食べてしまう傾向や、周囲の食べ物の刺激にどれだけ反応しやすいかなどを測る、検証済みの質問票(Dutch Eating Behavior Questionnaire、DEBQ)を用いて評価されました。また、食事内容は繰り返し実施された食事記録から、身体活動の状況も繰り返しの活動記録から把握され、体重・身長・腹囲・臀囲といった身体計測値が、開始時点とその後の複数の時点で記録されています。
その結果、9か月後の体重減少率は平均で-9.14±2.88%であったと報告されています。体重、腹囲、臀囲、BMI(体格指数)については、統計的に有意な減少が見られたとされています。食事内容についても、総エネルギー量、脂質、炭水化物、単純糖類、ナトリウムの摂取量が有意に減少した一方で、たんぱく質と食物繊維の摂取量は有意に増加したことが示されています。さらに、DEBQで評価された摂食行動のすべての領域―感情的摂食、外部からの食べ物の刺激への反応、間食の頻度、食事時間の規則性、空腹や満腹といった内的な感覚への意識―においても、有意な改善が認められたとされています。あわせて、摂食行動スコアの改善と身体計測値の減少との間には、有意な正の関連が見られたことも報告されています。身体活動量や1日の総エネルギー消費量についても、追跡期間を通じて有意な増加が記録されたとのことです。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、40名の女性を対象とした一つの介入研究であり、得られた結果がすべての人に当てはまるとは限りません。研究の要旨では、対象がアルジェリアの肥満成人女性であることが述べられており、著者らはこの手法が同様の状況にある地域での公衆衛生・臨床栄養の実践に役立つ可能性を指摘していますが、これはあくまで研究チームの見解として要旨に示されているものです。また、比較対照群を設けた比較や、9か月を超える長期的な経過については、要旨からは読み取ることができません。個別化された栄養・行動介入が体重や摂食行動、身体活動の指標の改善と関連していたことが示唆されている、という段階の知見として捉えるのがよいでしょう。
まとめ
今回紹介した研究では、肥満のある女性を対象に、食事と身体活動の習慣を個別に見直していく9か月間のプログラムを実施した結果、体重や腹囲、BMIの有意な減少に加え、食事内容の変化、摂食行動の改善、身体活動量の増加が確認されたと報告されています。個別化されたアプローチが肥満管理においてどのような役割を果たしうるかを考えるうえで、一つの手がかりを示す研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:女性における肥満管理:9ヶ月間の個別化された栄養・行動介入プログラムの成果(ナジェフニュートリション・アンド・フードリサーチジャーナル(NAJFNR))