近年、食品にはさまざまな「食物繊維」が使われるようになっています。野菜や穀物由来のものだけでなく、竹の繊維も持続可能な食品原料として注目され、食品への配合が広がりつつあります。しかし、竹繊維が実際に人の消化管でどのように扱われ、腸内細菌にどう働きかけるのかは、これまで十分に調べられていませんでした。今回紹介する研究は、この点を実験的に検証したものです。
研究チームは、人の消化過程を試験管内で再現する「INFOGEST」という国際的な標準プロトコルを使い、竹繊維が唾液・胃・腸のそれぞれの消化酵素でどの程度分解されるかを調べました。あわせて、健康な提供者3名分の便由来の腸内細菌を使い、大腸での発酵の様子を試験管内で観察する実験も行われました。
研究でわかったこと
まず消化管における挙動ですが、竹繊維は唾液・胃・腸のいずれの消化酵素による分解にも高い抵抗性を示したと報告されています。赤外分光(FTIR)による構造解析では目立った変化が見られず、走査型電子顕微鏡による観察でも繊維の形状はほぼ保たれていました。また、消化の過程で生じる還元糖の量も、すべての消化段階を通じて0.1 g/L未満とごくわずかでした。比較対象として使われた小麦デンプン(陽性対照)が大きく分解されたのとは対照的な結果です。
次に、大腸内での発酵についてです。栄養分が少ない「最少培地」の条件で竹繊維を加えたところ、対照条件と比べてガスの発生、酸性化(pHの低下)、そして短鎖脂肪酸(SCFA)の生成が増加したとされています。短鎖脂肪酸の増加は提供者によって差があり、特にドナー1では変化が大きく、酢酸が3.3 g/Lから5.4 g/Lへ、プロピオン酸が0.76 g/Lから1.48 g/Lへと増加したことが報告されています。一方、栄養分が豊富な培地条件では、こうした発酵反応の増加ははっきりと弱まったとされ、竹繊維が他の分解されやすい栄養源と「競合」している可能性が示唆されています。
さらに、腸内細菌の群集構成を解析したところ、実験条件の違いよりも、どの提供者由来のサンプルかという「個人差」によって細菌叢の構成がまとまる傾向が見られたとのことです。加えて、発酵後の繊維を電子顕微鏡で観察すると、表面の浸食や微生物の付着が確認され、繊維構造がある程度変化していたことも示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、健康な提供者3名分の腸内細菌を用いた探索的な実験であり、対象者数は限られています。論文でも、短鎖脂肪酸の増加幅が提供者ごとに異なっていたことが述べられており、竹繊維の発酵のされ方には個人差や、その時々の食事・栄養状態(栄養が豊富か乏しいか)が強く影響することが強調されています。つまり、竹繊維が腸内細菌に与える影響は一律ではなく、状況によって変わりうるという位置づけの結果です。特定の健康効果を保証するものではなく、一つの研究であり、今後さらなる検証が必要と考えられます。
まとめ
この研究では、竹繊維が人の消化酵素にはほとんど分解されない一方で、腸内細菌による大腸での発酵については、周囲の栄養状態や個人の腸内細菌叢によって反応が大きく変わりうることが示されました。持続可能な食物繊維原料として注目される竹繊維ですが、その腸内での働き方は単純ではなく、食事の文脈や個人差を踏まえて理解していく必要があることを示す興味深い結果といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:竹繊維の消化管消化に対する抵抗性とヒト腸内細菌叢による栄養依存的発酵(フーズ・2026年08月)