サラダ油やヘルシーオイルの原料として知られるベニバナ(紅花)の種子。実はこの種、殻が硬く密なつくりをしているため、そのまま圧搾しても油をしっかり搾り出すのが難しいという課題があります。伝統的な搾油方法では効率が上がりにくく、油を搾る前に種子をどう「下ごしらえ」するかが、生産全体の効率を左右する重要な工程だと考えられてきました。今回紹介する研究は、この前処理の条件を数学的手法で細かく調整し、油の収率をどこまで高められるかを検証したものです。
研究でわかったこと
研究チームは、ベニバナ種子を圧搾する前に水酸化ナトリウム(NaOH)溶液で処理する方法に着目しました。着目したのは次の3つの条件です。①NaOH溶液の濃度(1%〜2%の範囲)、②処理温度(40℃〜60℃の範囲)、③処理時間(40分〜60分の範囲)。これらの組み合わせが油の収率にどう影響するかを調べるため、「応答曲面法(RSM)」と呼ばれる統計的な実験計画手法(具体的にはBox-Behnken計画という手法)が用いられました。これは、少ない実験回数で複数の条件の組み合わせを効率よく評価し、最も良い結果が得られる条件を数理的に予測する手法です。
一連の実験とモデリングの結果、最も油収率が高くなると予測された条件は、NaOH濃度1.64%、処理温度53.54℃、処理時間51.11分という組み合わせでした。この条件でモデルが予測した油収率は20.5%でしたが、実際にこの条件で実験を行ったところ、油収率は21.47%に達したと報告されています。そして、この応答曲面法を用いた前処理条件の最適化によって、搾油効率が37.52%向上したとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ベニバナ種子という特定の原料について、特定の前処理条件(NaOH濃度・温度・時間の3要素)に絞って行われた実験に基づくものです。今回得られた最適条件や収率向上の数値は、この実験条件のもとで得られた結果であり、食用油の搾油全般に当てはめて考えるものではない点には注意が必要です。また、これは一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。他の条件設定や異なるスケールでの検証によって、さらに知見が積み重ねられていく分野だと考えられます。
まとめ
硬い殻を持つベニバナ種子から効率よく油を搾り出すために、NaOH溶液を使った前処理の条件を数理的に最適化するとどうなるかを検証したのが今回の研究です。濃度・温度・時間という3つの条件を調整することで、搾油効率を高められる可能性が示唆されています。食用油の生産技術がどのように科学的に磨かれていくのか、その一端を垣間見ることができる研究といえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:油収率向上のためのベニバナ種子(Carthamus tinctorius L.)アルカリ前処理パラメータのモデリングと最適化(フーズ・2026年08月)