著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Frontiers in Plant Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

葉物アマランサス(ヒユナ、学名アマランサス・トリコロール)は、資源の限られた環境でもよく育ち、栄養も豊富なため、世界的に重要な作物です。南アジア・東アジア、サハラ以南のアフリカ、中南米、カリブ海地域で広く食べられています。研究チームは、米国の都市部へ移り住む人々が増えるなか、出身地の食文化に合った野菜への需要が高まっており、葉物アマランサスはそうした多様な都市住民に向けた有力な候補になると述べています。

植物は光を使って光合成をしますが、光の色の組み合わせは生育だけでなく、葉に含まれる色素や成分の量にも関わると考えられています。赤色光と青色光を単独で当てた場合と組み合わせた場合を比べた研究はこれまでにもありました。今回、著者らは、赤と青の比率を中程度に変えるだけでも生育や成分に有意な違いが出るのかを確かめようとしました。また、その影響は系統によって異なるという仮説を立てていました。

どのように調べたか

実験には、米ラトガース大学の育種系統から、茎が白い系統(Am90)、赤と緑の二色の系統(Am25)、全体が赤い系統(Am98)の3つを使いました。いずれも若い葉を収穫する「ベビーリーフ」として、人工気象室内の水耕システムで育てています。

照明は赤・白・青の強さを調整できるLEDだけを使い、1日16時間点灯しました。赤色光と青色光の比率(赤:青)は、1:1.6、1:1.1、1.5:1、1.9:1の4通りです。前の2つは青が多め、後の2つは赤が多めの設定です。なお、著者らによると、赤の比率が最も高い4番目の条件では、緑色光が他の条件より有意に少なく、1日に植物が受け取る光の総量(日積算光量)は有意に多くなっていました。そのため研究チームは、光の比率そのものの影響と、光の総量など他の要因の影響を分けて検討する解析も行っています。実験は3回繰り返されました。

種まきから38日後に、草丈、成熟した葉の数、地上部の生の重さ、葉の面積を測りました。さらに、乾燥させた葉に含まれる成分として、光合成に使われる色素(クロロフィルとカロテノイド)、アマランサスなどに特有の赤紫色や黄橙色の色素(ベタレイン)、カフェ酸などのフェノール酸、フラボノイドを分析しました。

主な結果

収量について、光の比率の違いは植物の収量に有意な影響を与えませんでした。草丈では、二色の系統Am25だけに条件による有意な差が見られました。ただし、光の比率や光の総量を個別に取り出した解析では差が有意ではなく、著者らはこの結果から一般的な結論は導けないとしています。一方、草丈や葉の数、葉の面積は系統ごとに有意に異なっていました。

光合成色素では、3系統すべてで、赤:青が1.5:1の条件のときにカロテノイドと総クロロフィルが有意に多くなりました。赤の比率が最も高い1.9:1の条件では、これらの色素がむしろ少なくなりました。著者らはこの結果について、色素の蓄積には赤と青の両方の光が重要であり、そのうえで赤色光の役割がより大きいことを示していると考察しています。

ベタレイン色素の量が条件によって有意に変わったのは、全体が赤い系統Am98だけでした。Am98では、赤の比率が最も高い条件で赤紫色の色素(ベタシアニン)が最も少なくなりました。

フェノール酸の中ではカフェ酸が最も多く含まれていました。フェノール酸全体としては、青が多めの2条件で多くなる傾向が見られました。ただし著者らは、この傾向が光の比率によるものとは限らず、考慮できなかった他の要因が影響した可能性もあると述べています。フラボノイドは茎が白い系統Am90でのみ測定できる量が検出され、青色光が最も多い条件で有意に多くなりました。

研究が示すこと

研究チームは、光の色の比率が葉物アマランサスの成分に与える影響は系統によって異なり、一方で収量への影響はほとんどないと結論づけています。著者らはこれを、収穫量を損なわずに葉の成分含量を高める方法を考えるうえで重要な結果だと位置づけています。

なお、著者らは研究の限界として、4つの条件で変えた赤と青の比率の幅が狭かったことを挙げています。また、使用したLEDでは紫外線や遠赤色光を照射できず、それらの影響は調べられていません。

原著論文の著者・所属:Tori Rosen(New Use Agriculture and Natural Plant Products, Department of Plant Biology, Rutgers University, New Brunswick, NJ, United States)、A.J Both(Department of Environmental Sciences, Rutgers University, New Brunswick, NJ, United States)、Qingli Wu(New Use Agriculture and Natural Plant Products, Department of Plant Biology, Rutgers University, New Brunswick, NJ, United States)、James E. Simon(New Use Agriculture and Natural Plant Products, Department of Plant Biology, Rutgers University, New Brunswick, NJ, United States)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tori Rosen, A.J Both, Qingli Wu, et al. Impact of red-to-blue LED light ratios on the yield and phytochemistry of leafy green amaranths. Frontiers in Plant Science 2026-10-30. DOI: 10.3389/fpls.2026.1957692. 原著ライセンス:CC BY.