コンビニ弁当やスナック菓子、清涼飲料水などを指してよく使われる「超加工食品」という言葉です。近年、これらの食品の摂取が健康に悪影響を与えるのではないかという研究が急速に増えています。しかし実は、研究者の間でも「加工とは何か」「何をもって超加工と呼ぶか」という定義そのものがまだ統一されていません。今回紹介する論文は、こうした乱立する研究や分類法を整理し、現時点で何がどこまでわかっているのかを冷静に見直したナラティブレビュー(文献統合)です。
研究でわかったこと
研究でわかったこと
この総説はまず、食品の「加工度」を測る複数の分類法—NOVA、Siga、Hyper-Palatable Food(HPF)基準、ノースカロライナ大学の方式、EPIC-Soft/GloboDiet、そして近年提案されたCHIPSという枠組み—を比較しています。その結果、これらの分類法はそれぞれ部分的にしか重なり合わない、異なる観点を測っていることが示されました。つまり「超加工食品」とひとくくりに言っても、分類法によって指し示す対象が微妙に違うため、単一の指標として扱うことは難しいというのが著者の指摘です。
次に、加工度と代謝への影響を結びつけると考えられている仕組み(メカニズム)についてまとめています。具体的には、食品の物理的な構造(食品マトリックス)が壊れることで食べる速度が上がること、腸の奥のほうでホルモンを介した満腹シグナルが弱まること、乳化剤の摂取が腸内細菌叢に変化をもたらす可能性があること、そして脳の報酬系(食べ物のおいしさに反応する神経回路)が関与している可能性が挙げられています。ただし、こうした仕組みを裏づける最も強い研究の多くはマウスを対象にしたものであり、人での証明はまだ部分的だと述べられています。
そのうえで、この総説は「加工と健康の関連を示す研究のほとんどは観察研究であり、交絡(他の要因の影響)を排除しきれていないのではないか」という、この分野に対する主要な批判とも向き合っています。人を対象とした数少ないランダム化比較試験のうち、Hall et al.(2019年)とDicken et al.(2025年)によるクロスオーバー方式の給餌試験の2件では、栄養成分が同じでも加工度が高い食事のほうが摂取エネルギー量が多くなる可能性が示されたとされています。ただし著者は、これらの試験は規模が小さく期間も短いこと、効果の大きさや政策への応用については意見が分かれていることも明記しています。
また、観察研究における加工食品と健康アウトカムの関連は、数十項目にわたって大きく一貫して見られるものの、エビデンスの質を評価する国際基準「GRADE」では「低い」から「非常に低い」と評価されると報告されています。さらに、人間の脳組織中にマイクロプラスチック・ナノプラスチックが蓄積しているという最近の知見にも触れていますが、著者はこれを結論ではなく「未解決の問い」として扱っています。この知見のもとになった研究では食事による曝露量が測定されておらず、研究の方法論自体にも議論があり、原著者自身も因果関係を主張していないためです。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この論文は、特定の新しい実験結果を報告するものではなく、既存の研究を幅広く見渡して整理・評価する「レビュー(総説)」です。著者は、加工度を栄養成分とは別の独立した曝露要因として測定・研究する意義は認めつつも、その主張は「測定方法の標準化やさらなる介入試験を進める根拠としては十分だが、しばしば言われるような強い因果関係や毒性学的な主張を裏づけるにはまだ不十分」という、抑制的な立場を取っています。つまり「超加工食品は危険だ」と断定するのではなく、「まだ研究途上であり、今後の検証が必要な分野」という位置づけです。
また、この記事で紹介した内容は一つの文献レビューに基づくものであり、これをもって特定の食品や成分の安全性・危険性が確定したわけではない点にご留意ください。
まとめ
「超加工食品」という言葉は広く使われるようになった一方で、その定義や測定方法は研究者間でも一致していないのが現状です。今回紹介した文献レビューは、加工と健康を結びつける仕組みについて一定の手がかりがあるとしつつも、現時点の証拠の多くは観察研究にとどまり、確実な結論を出すにはさらなる研究が必要だと指摘しています。今後、加工度の測定方法が標準化され、より大規模な介入試験が行われることで、この分野の理解がさらに深まることが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:超加工食品に関する文献統合(ゼノド(欧州原子核研究機構)・2026年08月)
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。