著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:JURNAL BIOLOGI TROPIS

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

ブラックポテト(学名 Plectranthus rotundifolius、国際的にはチャイニーズポテトとも呼ばれる)は、インドネシアなどで栽培される地域在来のイモ類です。著者らは、イモが炭水化物などを含み、食料源として利用が期待される作物だと位置づけています。一方で、栽培を広げるうえでは、質のよい植え付け材料が十分に手に入らないことや、増やし方の効率が課題になっていると述べています。

この作物を増やす方法の一つが、茎を切り取って土に挿し、新しい株として育てる「挿し木」です。親株と同じ性質を保ったまま、比較的安く増やせる利点があります。挿し木の育ちは、茎のどの部分から挿し穂を取るか、そして挿し穂にいくつ「節」(葉が付き、芽のもとがある茎の部分)を含めるかによって左右されうるとされますが、ブラックポテトについての情報は限られていました。そこで研究チームは、挿し穂を取る位置と節の数、およびその組み合わせが、ブラックポテトの茎葉の生育にどう影響するかを調べ、あわせてイモができるかどうかも観察しました。

どのように調べたか

試験は2026年2月から7月にかけて、インドネシアのマタラム大学農学部の温室で行われました。温室内の気温はおよそ30〜33℃、相対湿度は平均53%で、光は自然光でした。挿し穂は、茎の先端部(頂部)、中間部、基部(根元に近い部分)の3つの位置から取り、それぞれ節を2つ、3つ、4つ含む長さにそろえました。

位置3通りと節の数3通りを掛け合わせた9通りの組み合わせを用意し、各組み合わせを3回ずつ繰り返して、土・ヤギ糞堆肥・もみ殻くん炭を混ぜた培土を入れた栽培袋で育てました。草丈や葉の数などを決められた時期に測り、統計的な手法で、位置の違い、節の数の違い、両者の組み合わせによる差が偶然の範囲を超えるかどうかを検討しました。イモの形成は、植え付けから148日後まで観察されました。

主な結果

挿し穂を取る位置は、生育に明確な違いをもたらしました。先端部から取った挿し穂は、植え付け84日後の草丈が平均53.18cm、28日後の葉の数が平均23.88枚で、中間部(41.33cm、16.66枚)や基部(41.59cm、15.33枚)の挿し穂より大きく育ったと報告されています。

一方、節の数だけを比べた場合には、2つ・3つ・4つの間で、測定した生育の指標にはっきりした差は認められませんでした。ただし、位置と節の数の組み合わせによって、84日後の草丈と28日後の葉の数の傾向が変わることが示されました。

9通りの組み合わせのうち平均値が最も高かったのは、先端部から取った節4つの挿し穂で、草丈54.47cm、葉の数29.00枚でした。しかし論文は、この値が同じ先端部から取った節2つや節3つの挿し穂と統計的に区別できるほどの差ではなかったとし、「最も優れた組み合わせ」とまでは言えないと慎重に述べています。

また、どの組み合わせでも、植え付けから148日後までにイモはまったくできませんでした。著者らは、30〜33℃という温室の気温などが関係した可能性を挙げていますが、温度を変えて比べる試験は行っていないため、高温がイモのできなかった原因だとは断定できないとしています。

この研究が示すこと

この研究は、ブラックポテトを挿し木で増やす際、茎の先端部から挿し穂を取ると、今回の温室条件では茎や葉がよく伸びる傾向があることを示しました。節の数を増やすことの効果は、この試験でははっきりしませんでした。

同時に、茎葉はよく育ってもイモが一つもできなかったという結果は、今回の知見があくまで茎葉の生育に限られたものであることを示しています。著者らは、本研究をブラックポテトの挿し木による増殖についての初期的な情報と位置づけており、イモの収穫につながる増やし方の判断には、イモができる条件のもとでの検討が別に必要だとしています。

原著論文の著者・所属:Zahraeni Zahraeni(Universitas Mataram)、Bambang Budi Santoso(Universitas Mataram)、Dwi Ratna Anugrahwati(Universitas Mataram)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zahraeni Zahraeni, Bambang Budi Santoso, Dwi Ratna Anugrahwati. Effect of Steam Cutting Position and Nodes Number on Growth of Black Potato (Plectranthus rotundifolius) under Greenhouse Conditions. JURNAL BIOLOGI TROPIS 2026-10-17. DOI: 10.29303/jbt.v26i4.13616. 原著ライセンス:CC BY.