この研究は、中国、ガーナの研究機関の研究論文です。

掲載誌:BMC Public Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

塩分の摂りすぎは高血圧など循環器系への影響がよく知られていますが、近年は免疫にかかわる病気との関連にも関心が寄せられています。喘息もそのひとつで、成人になってから発症するケースが食生活とどう関係しているのかは、これまではっきりしていませんでした。今回、イギリスの大規模データベース「UKバイオバンク」を用いた研究で、食塩摂取と成人発症喘息リスクとの関連、そしてカリウムがその関係にどう影響するかを調べた前向きコホート研究が報告されました。

研究でわかったこと

研究チームは、ベースライン時点で喘息のなかった成人373,647人を対象に、追跡期間の中央値15.4年にわたって調査を行いました。この間に10,511人が新たに喘息を発症したと記録されています。

食塩摂取の評価には二つの方法が使われました。一つは「食事に塩を加える頻度」についての自己申告、もう一つはスポット尿(随時尿)から推定した24時間ナトリウム排泄量という客観的な指標です。あわせて、スポット尿中のカリウム濃度もカリウム摂取状態の指標として測定されました。これらのデータをもとに、Cox比例ハザードモデルという統計手法を用いて、喘息発症との関連やハザード比(HR)が算出され、多数の交絡因子(結果に影響しうる他の要因)を調整したうえで分析されています。

その結果、「まったく、またはほとんど塩を加えない」人と比べて、「常に塩を加える」と回答した人は喘息リスクが27%高いという関連が見られました(HR 1.27、95%信頼区間 1.17-1.38)。また、推定24時間ナトリウム排泄量が1日あたり1グラム増えるごとに、喘息リスクは男性で15%、女性で39%高くなるという関連も示されています。

さらに詳しく解析したところ(スプライン解析という手法が用いられました)、推定ナトリウム排泄量が多いほど喘息リスクは段階的に高くなる傾向がありましたが、この上昇の勾配は尿中カリウム濃度が低い人ほど急で、カリウム濃度が高い人ではやや緩やかになることが示されました。統計的な交互作用の検定でも有意な結果(P<0.05)が得られており、ナトリウムとカリウムの間に何らかの相互作用がある可能性が示唆されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、UKバイオバンクという大規模なコホートを用いた観察研究であり、食塩摂取と喘息発症との間に統計的な関連が見られたことを示すものです。ただし、これは一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。観察研究であるため、食塩摂取が喘息の原因であると直接証明するものではなく、他の生活習慣や体質など、把握しきれない要因が影響している可能性も残ります。また、食塩摂取の評価は自己申告やスポット尿からの推定値に基づいており、実際の摂取量を完全に反映しているとは限らない点にも留意が必要です。

まとめ

今回の大規模コホート研究では、自己申告による加塩習慣の強さと、スポット尿から推定した24時間ナトリウム排泄量の両方が、成人発症喘息のリスク上昇と関連していることが報告されました。あわせて、尿中カリウム濃度が高いほど、こうした食塩の悪影響がやわらぐ可能性も示されています。著者らは、減塩とカリウム摂取を組み合わせた食事のあり方が、成人発症喘息のリスクを下げるうえで役立つ可能性を示唆していますが、これはあくまで一つの研究による知見であり、今後さらなる検証が必要とされています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ナトリウム摂取と喘息発症リスクの関連、およびカリウムによる修飾作用:前向き研究からの知見(BMCパブリックヘルス・2026年08月)

著者:Wufeng Huang(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Nanfang Hospital, Southern Medical University, Guangzhou, Guangdong Province, 510515, China)、Daniel Nyarko Hukportie(Department of Public Health, College of Community Health Nursing, P.O. Box 273, Winneba, Central Region, Ghana)、Jing Kang(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Nanfang Hospital, Southern Medical University, Guangzhou, Guangdong Province, 510515, China)、Wen Li(Key Laboratory of Respiratory Disease of Zhejiang Province, Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Second Affiliated Hospital of Zhejiang University School of Medicine, Hangzhou, Zhejiang, 310009, China)、Laiyu Liu(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Nanfang Hospital, Southern Medical University, Guangzhou, Guangdong Province, 510515, China)、LI Fu-rong(Shenzhen Eye Medical Center, Shenzhen Eye Hospital, Southern Medical University, Shenzhen, China)、Wei Chi(Shenzhen Eye Medical Center, Shenzhen Eye Hospital, Southern Medical University, Shenzhen, China)