子どもの食事について、好き嫌いが多い、少ししか食べない、食べるのに時間がかかる——こうした「食べ方のクセ」に心当たりのある保護者は多いのではないでしょうか。こうした食べ方の傾向は「食欲特性(appetitive traits)」と呼ばれ、子どもの食習慣やその後の食べ物の選び方に影響すると考えられています。一方、食事の多様性(いろいろな種類の食品をまんべんなく食べられているか)は、食事の質を映す指標であり、子どもの成長や長期的な健康にとって重要とされています。しかし、幼児期の食欲特性と、数年後の学齢期における食事の多様性との関連を、標準化された検証済みのツールを用いて調べた研究はこれまで多くありませんでした。今回紹介するのは、この関係を2年間にわたって追跡した研究です。
研究でわかったこと
研究チームは、5〜6歳の幼稚園児208人を対象に調査を開始し、2年後の追跡調査には194人が参加しました。5〜6歳の時点で、子どもの食行動を評価する質問票「Child Eating Behavior Questionnaire(CEBQ)」を用いて食欲特性を測定し、その2年後には「Dietary Diversity Score(DDS)」という指標を使って食事の多様性を評価しました。そのうえで、幼児期の食欲特性と学齢期の食事多様性との関連を、二項ロジスティック回帰という統計手法で分析しています。また、データが完全にそろっている対象者に限定した分析(逆確率重み付け法)でも、結果の頑健性が確認されました。
その結果、5〜6歳時点での「食の気難しさ(food fussiness)」が高い子どもほど、2年後に食事の多様性が高い状態にある可能性が有意に低いことが示されました(オッズ比0.521、95%信頼区間0.327〜0.830)。なお、この関連について男女による違い(性差)は見られなかったと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の集団を対象とした一つの縦断研究であり、ここで示された関連がすべての子どもに当てはまるとは限りません。また、統計的な関連が確認されたことと、「食の気難しさ」が食事多様性の低下を引き起こす直接的な原因であることは、必ずしもイコールではない点にも注意が必要です。今回の要旨で述べられているのは、幼児期の食欲特性が学齢期の食事多様性と関連していたという知見であり、断定的な因果関係や、特定の食品・栄養素の効果を主張するものではありません。
そのうえで、この研究は、就学前という早い時期の食べ方の特徴が、数年後の食生活の幅広さと結びつく可能性を示した点で、子どもの栄養支援を考えるうえでの手がかりになるものと言えそうです。
まとめ
今回紹介した研究では、5〜6歳時点で「食の気難しさ」が強かった子どもほど、2年後の学齢期において食事の多様性が高い状態になりにくい傾向が見られました。この結果は、幼児期の食欲特性が学齢期の食生活と関連していることを示唆するものであり、著者らは、子どもの栄養を支えるうえで早期の食欲特性に着目することの重要性を指摘しています。今後、さらなる研究によってこうした関連の理解が深まっていくことが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:幼児期の食欲特性と学齢期児童の食事多様性との関連:2年間の縦断的追跡研究(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)