養殖の現場では、個体の体重をどれだけ手間なく正確に把握できるかが、選別や出荷判断、成長のモニタリングを左右します。従来は一つひとつ手に取って計量する必要がありますが、これは時間がかかるうえ、個体にストレスを与える可能性もあります。今回、韓国の国立水産科学院(National Institute of Fisheries Science)に所属する研究者らが、画像から得られる形態情報だけを使って養殖アワビ(Haliotis discus hannai)の体重を推定する手法を検討し、その結果をアクアカルチャー・インターナショナル誌に発表しました(2026年08月掲載予定)。

画像から体積を計算し、形状のばらつきを補正する

研究チームはまず、アワビ503個体を対象に、測定した密度や形態データの一貫性をもとに品質チェックを行い、最終的に490個体を分析に用いました。画像から得られる全長・体幅・厚みという3つの寸法を使い、アワビの殻を半楕円体とみなして体積を計算する変数(Cvと表記)を求めました。しかし、個体ごとに殻の形が微妙に異なるため、この体積だけでは誤差が残る可能性があります。そこで研究チームは、計算体積Cvを投影面積(画像上でアワビが占める面積、PA)で割った「形態補正変数」(Mc = Cv / PA)という指標を新たに導入し、これが推定精度をどれだけ改善するかを検証しました。

4種類のモデルを比較、補正変数の追加で誤差が縮小

体重推定のために4種類の回帰モデルが用意され、同一の5分割交差検証という手法で性能が比較されました。まず、計算体積Cvだけを使った線形モデルでは、二乗平均平方根誤差(RMSE)4.18グラム、平均絶対誤差(MAE)3.20グラム、決定係数(R²)0.969、平均絶対パーセント誤差(MAPE)6.32%という結果が得られました。これに対し、計算体積Cvと形態補正変数Mcを組み合わせた「形態補正べき乗モデル」では、RMSE 3.50グラム、MAE 2.62グラム、R² 0.978、MAPE 5.17%と、4種類のモデルの中で最も誤差が小さくなりました。これはCvのみのモデルと比べてRMSEが16.30%減少したことを意味します。研究チームは、この結果についてCvが体重推定の有効な基本変数であり、Mcを加えることで個体ごとの形状の違いに由来する誤差を減らせることを示していると述べています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この手法は、画像撮影の条件が一定であることを前提としており、研究チームも非接触での選別支援や成長モニタリング、出荷判断に役立つ可能性がある、という位置づけで結果を報告しています。撮影条件が変わった場合や、対象個体群が異なる場合にも同じ精度が保たれるかどうかは、この要旨の範囲では述べられていません。あくまで一つの研究で得られた結果であり、実際の養殖現場全般に当てはめて結論づけられたものではない点に留意してください。

まとめ

この研究は、画像から得られる寸法情報をもとに計算した体積(Cv)に、投影面積を使った形態補正変数(Mc)を組み合わせることで、養殖アワビの体重推定の誤差を小さくできる可能性を示しました。手で持ち上げて量る作業を減らしながら成長や出荷のタイミングを把握する手がかりとして、今後の技術発展が注目されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Dong-Gil Lee, Jung-Jun Park. Non-invasive weight estimation of cultured abalone (Haliotis discus hannai) using image-based calculated volume and morphometric correction. アクアカルチャー・インターナショナル (2026). DOI: 10.1007/s10499-026-02633-9. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.