牛乳といえば私たちにとって最も身近な乳製品ですが、世界には牛乳以外にもさまざまな家畜の乳が飲まれています。特に乾燥地帯で暮らす人々にとって、ラクダやウマの乳は貴重なタンパク源として古くから利用されてきました。今回紹介する論文は、こうしたラクダ乳とウマ乳が医療の現場でどのように役立つ可能性があるのかについて、これまでに発表された数多くの研究論文を分析し、まとめたものです。掲載誌は「カスピ海環境科学ジャーナル」で、2026年01月に掲載予定です。

この論文はさらに、「COVID-19患者における細胞性免疫と腸内細菌叢の状態とサウマル(発酵させたウマ乳の一種とされる飲料)利用」というプロジェクトの一環として作成されたと述べられています。

研究でわかったこと

論文ではまず、ラクダ乳とウマ乳が母乳と組成が似ている点、そして加熱殺菌の必要性が乏しい点が特徴として挙げられています。また、生のラクダ乳や発酵乳には、腸内環境を整えるとされる「プロバイオティクス」となりうる菌株が含まれている可能性があるとされています。発酵乳製品は独自の物理的・化学的組成を持つことから、高い栄養価と生体医学的な性質を備えていると考えられている、と紹介されています。

具体的な成分としては、ラクダ乳とウマ乳のいずれにも、リゾチーム、免疫グロブリン、ラクトフェリンといった物質が含まれており、これらには抗酸化作用や細胞膜を安定化させる働きがあるとされています。論文では、こうした天然の食品が免疫系を強化し、ウイルス感染を抑える可能性があると述べられています。

個別の研究成果としては、ラクダ乳についてはマウスを用いたモデルにおいて発がん性物質の排出を促進する働きが報告されており、がんへの対応という観点で利点があるとされています。また糖尿病に対しても効果があるとされています。一方ウマ乳については、腸内細菌叢によい影響を与えることを通じて免疫を刺激する作用があり、病原性の細菌やウイルスから体を守る働きがあるとされています。さらに、ラクダ乳とウマ乳のいずれもC型肝炎の治療に用いられる可能性があると紹介されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文は、新たに実験を行った研究ではなく、これまでに発表された多数の研究論文を集めて整理した「レビュー」的な性格を持つ論文です。紹介されている効果の多くは動物実験や個別の研究に基づくものであり、ヒトを対象とした大規模な検証がすべて済んでいるわけではありません。論文自体も、重い合併症を招きうる病気に対して有効な治療の選択肢を作るためには、無作為化比較試験のような質の高い研究が不可欠であると述べています。また、天然食品の持つ有益な性質を治療の主軸として活用する方法については、さらなる研究が必要だとも指摘されています。つまり、ラクダ乳やウマ乳がすぐに特定の病気の治療法として確立されたわけではなく、今後の研究の積み重ねが必要な段階にあると理解するのがよさそうです。

まとめ

ラクダ乳やウマ乳は、乾燥地域の人々にとって重要な栄養源であるだけでなく、免疫を支える成分を含み、がんや糖尿病、C型肝炎といったさまざまな病気への応用が研究されていることが、この論文から見えてきます。とはいえ、これは一つの研究(レビュー)であり、結論が確定したわけではありません。今後、より厳密な臨床試験が積み重ねられることで、こうした伝統的な乳製品の医療応用の可能性がさらに明らかになっていくことが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:医療実践におけるラクダ乳とウマ乳の応用(カスピ海環境科学ジャーナル・2026年01月)