厳しい体力・認知能力の訓練が続く軍隊の基礎戦闘訓練は、栄養状態が大きく試される場でもあります。十分な食事や規則的な食事リズムは、代謝の健康だけでなく、身体機能や認知機能を保つうえでも欠かせない要素と考えられています。今回紹介するのは、スウェーデンの軍新兵を対象に、訓練前後の食習慣・食事パターンと、血液の状態や身体作業能力との関連を調べた研究です。

研究チームは、スウェーデン軍公衆衛生・地域医療部門、Defence Health(スウェーデン指揮統制連隊)、カロリンスカ研究所、サールグレンスカ大学病院など複数の機関に所属する研究者で構成されています。

どのように調べたのか

対象となったのは女性96名、男性129名の新兵で、基礎戦闘訓練の開始時(ベースライン)と、5か月後の2時点でアンケートに回答しました。アンケートでは食習慣や全般的な健康状態が尋ねられています。あわせて、貧血や鉄の蓄積状態の指標となるヘモグロビンとフェリチンの値を、訓練開始時と5か月後の両方で測定しました。さらに訓練開始時には、多段階のシャトルラン形式による持久力テストと、神経筋機能を評価する複合テストを用いて身体作業能力を評価しています。

食事パターンと血液・体力の関連

結果として、菜食パターン(ベジタリアン的な食事)を報告した新兵は、訓練開始時のフェリチン値が低い傾向にある一方、訓練期間中のヘモグロビンの増加幅はむしろ大きいという関連がみられました。朝食を食べる頻度が低い新兵は、訓練開始時点の身体作業能力が低い傾向が確認されています。また、しっかりした量の食事を摂る頻度が少ないと回答した新兵では、身体作業能力が低いことに加え、5か月間のうちにけがやオーバーユース(使いすぎ)症状を経験する確率、そして訓練を欠席する確率がいずれも高くなる関連が示されました。自分の必要量に対して食事量が足りていないと感じていた新兵では、ヘモグロビンの増加幅が小さいという関連もみられています。加えて、自己評価による身体的健康状態が悪いと回答した新兵では、けがやオーバーユース症状のリスクが高い傾向が確認されました。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究はあくまで一つの観察研究であり、食事パターンと血液状態・体力・けがのリスクとの間に「関連」が示されたにとどまります。食習慣が結果の原因であると断定するものではなく、因果関係を証明したものではありません。対象もスウェーデンの軍事訓練という特殊な環境下の新兵に限られており、異なる集団や訓練環境にそのまま当てはまるとは限らない点にも留意が必要です。

まとめ

この研究では、朝食を抜きがちだったり、しっかりした食事量を摂れていなかったりする新兵ほど、体力の指標が低く、けがや訓練欠席のリスクが高い傾向にあることが示唆されました。研究チームは、規則的な食事パターンや十分な食事量の確保が、軍事訓練における身体能力や健康、レジリエンスに関わる「修正可能な要因」となりうると述べています。今後さらなる研究の積み重ねが期待される分野といえるでしょう。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Fabian Taube, Mats Navren, Örjan Ekblom, et al. Nutrition and dietary pattern in relation to blood status and physical work capacity among Swedish conscripts during basic combat training. BMJミリタリー・ヘルス (2026). DOI: 10.1136/military-2026-003436. 原著ライセンス: cc-by-nc.