著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。
掲載誌:Сибирский научный медицинский журнал
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、金属加工の仕事に従事する労働者について、聴力障害の有無によって食事の栄養構成にどのような違いがあるかを調べました。背景には、食事中の栄養素の不足や過剰と聴力障害との関係が報告される一方、その関係について知見を積み重ねる必要があるという問題意識があります。
何を、どのように調べたか
対象は20~60歳の男性労働者206人です。耳鼻咽喉科医が聴力検査に基づいて診断し、聴力障害のある88人と、ない118人に分けました。両群の年齢は同程度で、聴力に影響する病気や音響外傷の既往がある人は対象から除かれました。
研究チームは、直前24時間に食べたものを思い出して答えてもらう方法で食事を調査しました。食品や料理の分量を示す図入り資料も使い、摂取したエネルギーや栄養素の量を計算しました。そのうえで、中程度の身体的負担を伴う仕事に従事する人向けのロシアの栄養摂取基準と照らし合わせ、聴力障害の有無による違いを比較しました。
主な報告結果
研究チームは、両群とも多くの参加者で、たんぱく質、炭水化物、食物繊維、各種ビタミンやミネラルの摂取量が基準を下回り、添加された糖やナトリウムは過剰になっていたと報告しました。ビタミンDの摂取量は、両群の全員で基準を下回っていました。これらは食事からの摂取量についての評価です。
聴力障害のある群では、ない群よりも、カルシウムと亜鉛の摂取不足が多く認められました。カルシウムの摂取不足はそれぞれ100.0%と93.2%、亜鉛の摂取不足は96.6%と87.3%で、いずれも統計的に有意な差でした。
一方、聴力障害のある群のほうが、炭水化物とビタミンB1の摂取量は多いという結果もありました。ただし、どちらの群でも摂取量は基準を下回っており、著者らは、ビタミンB1の摂取量と聴力障害との因果関係について明確な結論は出せないとしています。
この報告が示すこと
著者らは、労働者の食事を栄養面から整えることが、聴力障害の予防に重要な役割を持つ可能性があり、健康的な食生活を支える取り組みで考慮すべきだと述べています。これは、食事を改善する介入の効果を確かめた結果ではなく、今回の食事調査を踏まえた見解です。
食事の評価には限界もあります。著者らは、思い出して答える方法では摂取量が過少に見積もられる可能性があり、分量の判断に困る参加者もいたと説明しています。また、調査は夏以外に行われ、複数日にわたる評価はできなかったため、季節や平日・休日による食事の違いが結果に影響した可能性があります。
原著論文の著者・所属:I. V. Zaikina(Saratov Hygiene Medical Research Center of the Federal Scientific Center for Medical and Preventive Health Risk Management Technologies of Rospotrebnadzor)、V. N. Dolich(Saratov Hygiene Medical Research Center of the Federal Scientific Center for Medical and Preventive Health Risk Management Technologies of Rospotrebnadzor)、S. I. Mazilov(Saratov Hygiene Medical Research Center of the Federal Scientific Center for Medical and Preventive Health Risk Management Technologies of Rospotrebnadzor)、N. E. Komleva(Saratov Hygiene Medical Research Center of the Federal Scientific Center for Medical and Preventive Health Risk Management Technologies of Rospotrebnadzor; Saratov State Medical University n.a. V.I. Razumovsky of Minzdrav of Russia)、T. A. Novikova(Saratov Hygiene Medical Research Center of the Federal Scientific Center for Medical and Preventive Health Risk Management Technologies of Rospotrebnadzor)、V. F. Spirin(Saratov Hygiene Medical Research Center of the Federal Scientific Center for Medical and Preventive Health Risk Management Technologies of Rospotrebnadzor; Saratov State Medical University n.a. V.I. Razumovsky of Minzdrav of Russia)、A. A. Chekhonatskiy(Saratov State Medical University n.a. V.I. Razumovsky of Minzdrav of Russia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):I. V. Zaikina, V. N. Dolich, S. I. Mazilov, et al. Analysis of dietary intake among metalworkers considering hearing impairment. Сибирский научный медицинский журнал 2026-11-05. DOI: 10.18699/ssmj20260516. 原著ライセンス:CC BY.