7月、新しょうがが出回りの盛りを迎えている。ひねしょうがに比べて繊維がやわらかく、酢の物や甘酢漬けでその瑞々しさを楽しめる時季だ。しょうが 根茎 皮なし 生は薬味として一年中台所にあるが、実は「皮をむかない」ほうが本領を発揮する食材だと知ったら、まな板に向かう手が変わるかもしれない。しょうがは皮のすぐ下が最も香り強いとされ、むいてしまうとその香りごと削ぎ落としてしまうことになる。

香りの正体は、しょうが特有の辛み成分ショウガオールと、香り成分のジンゲロール、そしてもう一つの香り成分ジンゲベレンだ。おもしろいのは、生のしょうがの辛みを担うショウガオールは、実はジンゲロールが加熱や乾燥によって変化したものだという点にある。同じしょうがでも、生のすりおろしと火を通した炒め物とでは、香りと辛みの質そのものが違って感じられるのはこのためだと考えると納得がいく。皮のすぐ下にはこの香り成分が集まっているとされ、皮を残すか薄く洗い流す程度にとどめるかで、料理に立ちのぼる香りが変わってくる。

栄養面でしょうがの顔として挙げられるのが、りんごやぶどう(ワイン)の酸味を支えることで知られるリンゴ酸だ。100gあたり0.1gと、有機酸の中ではクエン酸と同量で、しょうが特有のさっぱりとした後味を形づくる代表格になっている。エネルギーは100gで28kcalと軽やかで、たんぱく質は0.9g。これは女性30〜49歳の1日の推奨量50gに対して2%ほどにあたる量だから、しょうがは栄養を「がっつり摂る」ための食材というより、香りと酸味で食卓の輪郭を引き締める名脇役と捉えるのがしっくりくる。

東洋医学・薬膳の考え方では、しょうがは体を温める性質を持つ「温」、味は「辛」に分類され、脾・胃・肺に働きかけるとされる食材として位置づけられてきた。発汗を促して熱を発散し、吐き気を鎮める作用があるとも伝えられており、料理の薬味以上の存在として長く扱われてきたことがうかがえる。なお、これらは東洋医学・薬膳の伝統的な見方であり、特定の効果・効能を示すものではありません。高知県はしょうがの出荷量で全国トップの1.58万トン(令和元年)を誇り、熊本・千葉・宮崎が続く。生産地ごとの土や気候の違いが、香りの濃淡にどう表れるのかを想像しながら食べ比べてみるのも一興だ。

皮ごと味わう、今日からの一手

使う量の目安は1かけ20g程度で、皮はたわしで軽くこすって土を落とす程度にとどめたい。皮ごとすりおろせば、香り成分をまるごと取り込める。冷奴や素麺の薬味はもちろん、皮つきのまま薄切りにして炒め物に加えれば、加熱でショウガオールへと変わっていく過程ごと、香りの移ろいを楽しめる。保存は水気を拭いてペーパーで包みポリ袋へ。冷蔵なら2週間、冷凍なら1カ月ほどが目安で、薄切りにして2日ほど天日干しにすれば香りを凝縮させることもできる。

皮をむくかむかないか、たったそれだけの判断で、しょうがという食材の印象は変わる。次にすりおろす瞬間、皮のすぐ下に眠っていた香りが立ち上るのを確かめてみてほしい。それは「損した」と思っていた皮の下に、実はいちばん豊かな部分が隠れていたという小さな発見のはずだ。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。