著者の所属・活動拠点の国は、ヨルダンです。
掲載誌:Genetics and Molecular Research
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
魚の中には、人に感染しうる細菌や寄生虫を持つものがいます。こうした病原体は、魚を食べたときや、さばくなど直接手で扱ったときに人へうつる可能性があり、「魚由来の人獣共通感染症」と呼ばれます。著者らは、魚介類の消費拡大や環境の変化を背景に、こうした病原体が世界的に公衆衛生上の課題になりつつあると述べています。
研究の舞台は、ヨルダン南部のアカバ湾です。生物多様性が高く漁業も盛んで、魚介類がよく食べられている海域ですが、商業的に重要な魚がどのような病原体を持っているかについて、遺伝子レベルのデータは限られていました。そこで研究チームは、この海域の市販海水魚で主な病原体がどれくらいの割合で見つかるかを調べることを目的としました。
何をどう調べたか
研究チームは2026年1月から5月にかけて、アカバ湾沿岸の3か所の水揚げ地から、商業的に重要な6種類の魚を合計300匹集めました。主な魚種は、アイゴの仲間、ハタ、マグロ、ボラ、バラクーダです。
調べた病原体は3種類です。1つ目は海にすむ細菌のビブリオ属で、胃腸炎や傷口からの感染などに関わります。2つ目はアニサキスの幼虫です。生や加熱不十分の魚を食べると、アニサキス症の原因になる寄生虫です。3つ目は、マイコバクテリウム・マリナムという増殖の遅い細菌で、魚に慢性的な病変を、人には皮膚の感染症を起こすことがあります。
ビブリオ属は培地で分離し、アニサキス幼虫は魚の組織を消化処理したうえで顕微鏡で探しました。さらに、特定の遺伝子を増やして検出するPCR法で、ビブリオ属とマイコバクテリウム・マリナムの確認を行いました。
主な結果
論文の報告では、300匹のうち82匹(27.3%)から、対象とした病原体のいずれかが見つかりました。病原体別に見ると、検出率が最も高かったのはビブリオ属の18.0%で、アニサキス幼虫が7.7%、マイコバクテリウム・マリナムが4.3%と続きました。
検出率は、魚の種類や採取場所によって統計的に意味のある差があったと報告されています。ハタやアイゴの仲間は、マグロやバラクーダより検出率が高い傾向でした。魚種別では、主な5種以外の「その他」の魚が36.6%で最も高く、ハタは33.3%でした。PCR検査では、陽性となった試料で目的の遺伝子が確認されたとしています。
論文はまた、一部の代表的な試料について遺伝子配列を読み取ったと報告しています。その配列は、既存のデータベースに登録された病原性の株と97〜99%一致しました。ビブリオ属は、地中海や紅海の魚介類から見つかった株と近い関係にあったと述べています。
研究が示すこと
著者らは、アカバ湾の市販海水魚に、人にうつる可能性のある複数の病原体が存在していると結論づけています。食べる人だけでなく、漁業者や魚を扱う人にも関わる問題として、遺伝子レベルでの継続的な監視や、魚介類の安全な取り扱いの重要性を指摘しています。
なお、調査は限られた期間に行われたもので、季節による変化や薬剤への耐性は調べていないと、著者ら自身が述べています。それでもこの研究は、身近な海の魚にどのような病原体がどの程度見られるのかを、地域で具体的に示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Montasir Al-Mansi(Faculty of Medicine , Aqaba Medical Sciences University (AMSU) , Jordan ,)、Majd Amjad AL Shatarat(Faculty of Medicine, University of Jordan. (UJ), Jordan, https://orcid.org/0009-0003-3926-2112,)、Dana Saleh Alhnaity(Faculty of Medicine , Aqaba Medical Sciences University (AMSU) , Jordan ,)、Sara Amjad Alhawamdeh(Faculty of Medicine , Aqaba Medical Sciences University (AMSU) , Jordan ,)、Yosor Nedal Harb、Aisha Ibrahim Al-Gababshah(Faculty of Medicine , Aqaba Medical Sciences University (AMSU) , Jordan , https :// orcid.org)、Seleen Samer Qabba’ah
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Montasir Al-Mansi, Majd Amjad AL Shatarat, Dana Saleh Alhnaity, Sara Amjad Alhawamdeh, Yosor Nedal Harb, Aisha Ibrahim Al-Gababshah, Seleen Samer Qabba’ah MOLECULAR DETECTION AND EPIDEMIOLOGICAL CHARACTERIZATION OF FISH-BORNE ZOONOTIC PATHOGENS IN COMMERCIAL MARINE FISH FROM THE GULF OF AQABA, JORDAN. Genetics and Molecular Research 2026-08-12. DOI: 10.4238/4p0bd285. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。