子どもの成長にとって、栄養状態と学びの力は切り離せない関係にあると言われています。栄養が不足した状態が続けば、体の発達だけでなく学校での学習にも影響が及ぶのではないか——そうした問題意識のもと、フィリピンのダスマリニャス小学校で行われた学校給食プログラムの実践研究を紹介します。今回取り上げるのは、2024〜2025年度に同校で実施された「Project FeEDING」という学校給食プログラム(SBFP: School-Based Feeding Program)が、栄養状態と学業成績にどのような変化をもたらしたかを検証したアクションリサーチ(現場改善を目的とした実践型の研究)です。

研究でわかったこと

この研究の対象となったのは、給食開始前の時点で「重度消耗症(severely wasted)」、つまり身長に対して体重が著しく低い状態にあり、かつ学業成績も振るわなかった小学1年生17名です。研究チームは、給食実施前後に記録された「栄養状態報告書」と、学校の成績記録(School Form 10)に残る第1四半期・第2四半期の一般平均点という、既存の記録を分析する手法(文書分析)と統計的な手法を組み合わせて変化を調べました。

その結果、対象となった17名全員が給食開始前は重度消耗症の状態にあり、BMI(体格指数)の平均は10.535でした。これがプログラム実施後には平均13.582まで上昇し、統計的に非常に強い有意差(p = 0.0001)が確認されたと報告されています。あわせて学業成績も、一般平均点が81.65点から83.76点へと上昇し、こちらも統計的に有意な差(p = 0.0006)があったとされています。ただし論文の結論部分では、学業成績への効果については「minimal(限定的・わずかなもの)」という位置づけがなされている点も、あわせて報告されています。

これらの結果を踏まえ、研究チームはProject FeEDINGが学習者の栄養状態の改善に大きく寄与したと結論づけています。そのうえで、学校菜園プログラム(Gulayan sa Paaralan)や保健・栄養プログラム、保護者、その他の関係者との連携を強化してプログラムをさらに拡充すること、継続的な栄養・健康教育を行うこと、そしてさらなる研究を進めることが推奨されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、特定の1校における17名という少人数の1年生を対象にした事例研究であり、実施前後の変化を比較する形で行われたものです。給食プログラムという一つの取り組みだけを切り出して効果を厳密に検証したものではなく、栄養状態や成績の変化には他の要因が関わっている可能性も考えられます。また、論文自体が学業成績への効果を「限定的」と位置づけている点は、栄養状態の改善という結果と切り分けて理解する必要があります。この研究は、学校給食を通じた栄養改善への一つの実践報告であり、結果を過度に一般化せず、一つの事例として捉えることが大切です。

なお、この研究は国連の持続可能な開発目標(SDGs)のうち、飢餓をなくす(目標2)、健康と福祉(目標3)、質の高い教育(目標4)、パートナーシップ(目標17)に関連づけられており、栄養・教育・学校保健・菜園活動・保護者参加・関係者間の連携を統合することで、子どもの栄養不良や教育ニーズへの学校・地域ぐるみの持続的な対応につなげる意義があるとされています。

まとめ

今回紹介した研究では、重度の栄養不良状態にあったフィリピンの小学1年生17名を対象に学校給食プログラムを実施したところ、BMIの平均値が有意に上昇し、栄養状態の改善が報告されました。学業成績についてもわずかながら有意な向上がみられたとされていますが、その効果は限定的なものと位置づけられています。学校給食が子どもの健やかな成長を支える取り組みの一つとして、今後も継続的な検証が期待される分野と言えそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:学校給食プログラム(SBFP)の戦略的・革新的実施が小学1年生受益者の栄養状態と学業成績に与える影響:アクションリサーチ(インターナショナル・ジャーナル・オブ・サステナブル・アンド・インテグレーテッド・スタディーズ・2026年08月)