著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Indonesian Journal of Innovation Studies
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
鶏肉はさまざまな加工品にできます。ナゲットやソーセージ、肉団子(インドネシアでいう「バクソ」)のような冷凍食品にすると、長く保存できます。著者らによると、肉団子に関するこれまでの研究は配合の性質に注目したものが多く、商業的な製造ラインで作業の生産性を妨げている要因を調べた例は限られています。
そこで著者らは、鶏肉の加工食品を製造するインドネシアの企業PT WXで、チキンボールが原料から出荷前の保管までどのような工程で作られているかを記録しました。あわせて、作業者の生産性に影響する要因を明らかにすることを目的としました。
調べ方
調査は2023年8月の1か月間、大学の現場実習として行われました。場所は同社のソーセージ部門で、この部門がチキンボールの製造を担当しています。著者らは原料の受け入れから出荷前の倉庫までの作業を直接観察し、現場の指導担当者や作業者に聞き取りをしました。さらに記録の作成と文献調査で内容を補っています。
生産性の問題点の整理には「フィッシュボーン図(特性要因図)」を使いました。魚の骨のような形の図に、問題の原因を「方法」「材料」「人」「設備」「環境」といった分類ごとに書き出し、根本原因を探しやすくする手法です。
報告された製造工程
論文によると、原料の鶏肉は0〜5℃の冷蔵室で保管されます。皮を除いた胸肉ともも肉は、ミートグラインダーで細かく挽かれます。生地は鶏肉60%、粉類40%の割合で作られます。まず鶏皮を5分間乳化させ、そこへ挽き肉、でんぷん、大豆たんぱく、食感を整える添加物、氷、調味料などを加えます。混ぜ合わせにはボウルカッターという機械を使います。氷は生地の温度上昇を防ぐために加えられます。
生地は1回分約200kgずつ成形機へ運ばれます。成形機では、1個10グラムの団子が2秒に1個の速さで作られます。団子は2段階でゆでられ、1回目は75〜85℃で20分、2回目は85〜90℃で10〜15分です。その後、25℃以下で20分冷まし、袋に入れて真空包装します。
包装後の製品は、金属探知機による検査を3回受け、重量検査機で重さを確認されます。続いて、−35〜−40℃の冷気を吹き付ける急速冷凍に90分かけ、製品温度が−18℃になった状態で取り出します。最後に段ボールに詰め、約−20℃の冷凍庫で出荷まで保管されます。
生産性に関する主な結果
フィッシュボーン図による分析では、生産目標の達成を妨げる要因が分類ごとに挙げられました。人の面では、人員の不足、作業者ごとの技能差、真空包装機への製品の並べ方の不適切さがありました。設備の面では、真空包装機や成形機の故障が多いこと、真空包装機のヒーターの熱が不均一なこと、冷却ファンが十分に使われていないことが指摘されました。材料の面では、成形までの待ち時間が長いと生地の温度が変わり、生地がゆるくなって団子がきれいな丸にならないことが報告されています。
500グラム入り製品の袋詰め作業では、基準は1人1分あたり最低3袋でした。観察した作業者の平均は1分あたり2.4袋から7.2袋までと、人によって大きな差がありました。また、8月の完成品データの表では、包装数がどの回も440と記録されています。一方で、完成品の数はその440に届かない回もありました。
著者らは、袋の重さ、1分あたりの袋数、作業時間(7時間)から1シフトあたりの生産量を計算し、作業速度に応じた人数の割り当てを示しました。1分あたり3袋の速さなら3人で1,890kgです。4袋なら2人で1,680kg、5袋と6袋なら2人でそれぞれ2,100kgと2,520kgになります。7〜8袋の速さでは、1人で1,470〜1,680kgとされています。
改善策として著者らは、次のような対策を挙げています。各シフトに同程度の技能を持つ人員を固定して配置すること、真空包装機の使い方を研修すること、作業手順書に沿った運用を周知すること、設備を定期的に保守・点検すること、生地の温度を管理することです。
この研究が伝えること
この報告は、冷凍チキンボールの製造を、原料の保管から冷凍保管までの一連の工程として具体的に示しました。そのうえで、一つの工場の現場観察から、生産目標の達成には機械の状態、作業者の技能差、温度管理など複数の要因が関わることを整理しています。作業速度に応じて必要な人数を見積もる考え方も示されており、食品工場の運営を工程と人の両面から捉えた事例報告となっています。
原著論文の著者・所属:Tri Ayu Widiana(Universitas Muhammadiyah Sidoarjo)、Syarifa Ramadhani(Universitas Muhammadiyah Sidoarjo)、Rifky Pradiko(Universitas Muhammadiyah Sidoarjo)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tri Ayu Widiana, Syarifa Ramadhani, Rifky Pradiko. The Production Process and Labor Productivity of Chicken Meatballs Product at PT WX. Indonesian Journal of Innovation Studies 2026-10-05. DOI: 10.21070/ijins.v25i3.2376. 原著ライセンス:CC BY.