この研究は、イランの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Current Nutrition & Food Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

食事の多様性スコア(Dietary Diversity Score、以下DDS)は、一定期間にどれだけ多くの食品グループを食べたかを数値にした指標です。手軽で費用もかからないため、集団を対象とした調査で食事の質を測る目安として広く使われており、スコアが高いほど微量栄養素が足りている食事だと考えられてきました。

ところが、食事の多様性と肥満との関係については、これまでの研究結果が食い違っていました。多様性が高いほどBMI(体格指数)や肥満のリスクが高いと報告する研究がある一方で、関連がない、あるいは逆に低いという報告もあります。研究チームは、成人においてDDSと肥満の指標――BMI、腹囲、腹部肥満――がどう関係するのかを整理し、あわせて結果のばらつきがどこから来るのかを調べることを目的としました。

何をどのように調べたか

著者らは、PubMed、Scopus、Web of Science、Embaseの4つの文献データベースを2025年12月まで検索し、成人におけるDDSと体格の指標との関連を扱った観察研究を集めました。動物実験は除外し、研究の質はNewcastle-Ottawaスケールという評価尺度で2人の研究者が別々に判定しています。

最終的に27件の研究が選ばれ、16か国の成人11,308人分のデータが含まれました。このうち13件が数値を統合するメタ解析に、16件が記述的なまとめに用いられています(両方に含まれる研究もあります)。DDSの算出には、食物摂取頻度調査票(FFQ)または24時間思い出し法(前日に食べたものを聞き取る方法)が多く使われていました。結果の統合にはランダム効果モデルを用い、研究間のばらつきの大きさはI²統計量で評価しています。さらに、性別、国、サンプルサイズ、DDSの測定方法ごとに分けたサブグループ解析も行われました。

主な報告結果

9件の研究(8,015人)をまとめた解析では、DDSと肥満リスクとの間に統計的に意味のある関連は認められませんでした(オッズ比1.02、95%信頼区間0.96〜1.09)。腹部肥満についても6件(4,041人)の統合結果は1.01(0.84〜1.20)で、有意な関連はありませんでした。

一方、過体重については5件(6,636人)の統合でオッズ比1.02(1.00〜1.05)と、わずかながら統計的に有意な正の関連がみられました。ただし著者らは、3件の研究を除いた感度分析ではこの有意差が失われたと述べており、個々の研究の影響を受けうる結果だとしています。

いずれの解析でも研究間のばらつきは大きく(肥満でI²=79.3%、腹部肥満で82.6%)、著者らはその一因として性別、地域、DDSの測定方法の違いを挙げています。個々の研究を見ると、中国やスリランカの研究では多様性が高いほどBMIや過体重が多い傾向が、イランやエチオピアなどの研究では関連がないか逆向きの傾向が報告されていました。著者らは、地域によって「多様性が高い」ことの中身が異なり、加工食品や動物性食品・高エネルギー食品へのアクセスの良さを反映する場合と、栄養の充足を反映する場合があるためではないかと考察しています。

この結果が示すこと

著者らは、含まれた研究の大半が横断研究であるため因果関係は判断できず、肥満の状態が食事の選択に影響している可能性(逆の因果)も否定できないと明記しています。また、身体活動や社会経済的状況といった交絡要因の調整が研究ごとに異なる点も限界として挙げられています。

そのうえで結論として、食事の多様性そのものが肥満を防ぐとは限らず、文脈によっては摂取エネルギーの増加を伴いうると述べています。多くの研究がDDSという「量」としての多様性を測っており、栄養密度の高い食品による多様性なのか、エネルギー密度の高い食品による多様性なのかを区別していないことが、結果の食い違いの背景にあるという見方です。著者らは、公衆衛生上の推奨は多様性の量ではなく質を重視すべきだとし、今後は標準化されたDDS評価による縦断的な研究が必要だとしています。

著者:Fatemeh Hamedi(Nutrition Research Center, Faculty of Nutrition and Food Sciences, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz,Iran)、Mohammad Alizadeh(Department of Clinical Nutrition, Faculty of Nutrition and Food Sciences, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz, Iran)、Sorayya Kheirouri(Department of Nutrition, Faculty of Nutrition and Food Sciences, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz, Iran)、Roghayeh Molani‐Gol(Nutrition Research Center, Faculty of Nutrition and Food Sciences, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz,Iran)、Zhina Adib(Department of Nutrition, Faculty of Nutrition and Food Sciences, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz, Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fatemeh Hamedi, Mohammad Alizadeh, Sorayya Kheirouri, et al. Association Between Dietary Diversity Score and Obesity Indices Among Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Current Nutrition & Food Science 2026-08-25. DOI: 10.2174/0115734013469890260731064826. 原著ライセンス:CC BY.