掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インド・ムンバイの屋台や小規模な飲食店などのインフォーマルな食品業界は、多くの都市住民に手頃な価格の食事と生計の手段を提供する、社会経済的に重要な存在です。その一方で、この分野では合成の食品添加物がほとんど規制されないまま使われていると著者らは指摘しています。
研究チームが注目したのは、カルモイシン(E122)と呼ばれる赤色の合成着色料です。これは「アゾ色素」という種類の色素で、著者らによれば、屋台料理での使用による健康リスクはこれまで量として把握されていませんでした。そこで研究チームは、「インド風中華料理」で広く使われる調味料シェズワンチャツネに、どれだけのカルモイシンが含まれているかを測定しました。
何を調べたか
研究チームは、紫外・可視光の吸収を利用する分光光度法で、シェズワンチャツネ中のカルモイシンを定量する方法を用いました。分光光度法は、色素が特定の波長の光をどれだけ吸収するかを測り、その量を求める分析手法です。この方法の信頼性は、分析法の妥当性確認に関する国際的な指針「ICH Q2(R1)」に沿って検証されたと報告されています。
試料は合計20点で、都市の実態を代表するように、移動式の屋台、固定式の屋台、小規模な飲食店、大規模な飲食店という4種類の販売形態から集められました。また、時期をまたいで測定値を比較し、季節による違いも統計的に分析しています。
主な結果
論文によると、分析した地元の試料はすべて、インド食品安全基準局(FSSAI)が定める許容上限値である1キログラムあたり100ミリグラムを超えていました。最も高い濃度は1グラムあたり8.209ミリグラムに達し、法定の基準値から大きく外れていたと報告されています。著者らはこの結果を、規制が体系的に機能していないことを示すものと位置づけています。
さらに、着色料の濃度には統計的に有意な季節変動が見られました(p<0.05)。著者らは、気候などの環境条件、日持ちへの懸念、祭事による需要の増加といった要因が、色素を必要以上に加える行動につながっている可能性があると解釈しています。
研究が示す意味
著者らは、見た目の鮮やかさがおいしさの印象と結びつくムンバイの食文化が、着色料の過剰使用の背景にあると論じています。そのうえで、子どもの神経・行動面への影響、肝臓への慢性的な負担、遺伝毒性の可能性といった長期的な健康上の懸念を挙げ、携帯型の検査機器による取り締まりから消費者教育まで、複数の分野にまたがる対策が急いで必要だと提言しています。
この研究は、身近な屋台の調味料に含まれる合成着色料の量を実際に測定し、基準値との隔たりを数値で示した点に意味があります。
原著論文の著者・所属:Shakti Singh Rathore, Aqil Samnani, Aditya Zarapkar, Dr. Mayuresh Joshi*
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shakti Singh Rathore, Aqil Samnani, Aditya Zarapkar, Dr. Mayuresh Joshi*. QUANTIFICATION OF CARMOISINE (E122) IN MUMBAI'S INFORMAL FOOD SECTOR: A VALIDATED SPECTROPHOTOMETRIC ASSESSMENT OF PUBLIC HEALTH RISKS AND REGULATORY COMPLIANCE. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-08-01. DOI: 10.5281/zenodo.21675764. 原著ライセンス:CC BY.