著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
思春期のうつや不安は、世界的に重要な公衆衛生上の課題とされています。研究チームは、成人期の心の不調の約半数が18歳より前に始まるとする先行研究を紹介し、思春期の生活習慣のうち変えられる要因を探ることが、学校での健康づくりや早期予防に役立つと述べています。食生活はそうした要因の一つとして注目されています。
乳製品は思春期の食事の重要な一部で、たんぱく質、カルシウム、ビタミンB群、ビタミンDなどを含みます。しかし、乳製品の摂取と抑うつ・不安症状との関連を調べた研究の結果は一致しておらず、先行研究の多くは成人や大学生を対象としていました。そこで著者らは、中学・高校段階の生徒を対象に、牛乳、ヨーグルト、粉ミルク、チーズといった乳製品の種類ごとに、摂る頻度や量と、抑うつ症状・不安症状との関連を調べました。
何をどのように調べたか
研究チームは、中国・山東省で2024年に実施された学生の健康に関する学校単位の監視調査のデータを使いました。分析対象は中学・高校・職業高校の生徒13万5138人で、平均年齢は約14.4歳です。この研究は一時点の状態を調べる横断研究であり、論文は、結果を原因と結果の関係ではなく、同時点で見られた「関連」として解釈するよう明記しています。
乳製品の摂取は、過去1か月の牛乳、ヨーグルト、粉ミルク、チーズ(キャンディチーズなどを含む)それぞれの摂取頻度に加え、牛乳・ヨーグルト・粉ミルクの1日の合計量(200ミリリットルを1単位とする)と、チーズの1日の個数という、合わせて6つの項目で把握しました。抑うつ症状は20項目の質問票(CES-D、0〜60点)で、不安症状は7項目の質問票(GAD-7、0〜21点)で測り、いずれも点数が高いほど症状が強いことを示します。
分析では、年齢、性別、学校段階、都市部か郊外か、体格指数(BMI)、寮生活の有無、喫煙・飲酒歴、運動不足、果物や野菜の摂取不足、不健康な食習慣、両親の学歴といった要因の影響を統計的に調整しました。そのうえで、6つの乳製品項目を同時に分析に含めたモデルを主な分析とし、項目ごとに別々に分析したモデルとの比較も行いました。さらに、摂取量と症状の関係が直線的でない可能性や、男女別・都市部と郊外別に関連が異なるかどうかも探索的に調べています。
主な結果
牛乳を毎日飲む生徒は27.5%で、まったく飲まない生徒は7.3%でした。ヨーグルトを毎日摂る生徒は10.5%にとどまり、粉ミルクは68.9%、チーズは63.5%の生徒がまったく摂っていないと答えました。また、質問票の基準で抑うつ症状が高い水準にあったのは17.7%、不安症状が高い水準にあったのは6.1%でした。
最も一貫していたのは牛乳の結果です。各種の要因を調整した後でも、牛乳を飲む頻度が高い生徒ほど、抑うつと不安の症状の点数が低い傾向が見られました。牛乳をまったく飲まない生徒と比べると、毎日飲む生徒の抑うつ症状の点数は2.30点、不安症状の点数は0.90点低いと推定されました。ヨーグルトでも、程度は小さいものの、摂る頻度が高いほど症状の点数が低い傾向がありました。
一方、粉ミルクとチーズの結果はより複雑でした。毎日摂る生徒では、抑うつ症状の点数がやや高いという推定が得られました。不安症状については、項目ごとの分析では点数が低い傾向が見られましたが、他の乳製品を同時に考慮すると、その傾向は大きく弱まりました。チーズを1日に多く食べる区分では、抑うつ症状の点数が高い推定となりました。
牛乳・ヨーグルト・粉ミルクの1日の合計量と抑うつ症状との関連は、推定値がごく小さく、項目ごとの分析では点数が低い方向、他の乳製品を同時に考慮した分析では点数が高い方向と、分析方法によって向きが変わりました。著者らはこれを分析の組み立て方に左右された結果と捉え、大きな関連の証拠とはみなしていません。不安症状との関連では、合計量の推定値はどちらの分析でも点数が高い方向で、他の乳製品を同時に考慮した分析のほうが大きくなりました。
このほか、摂取量と症状の関係が直線的ではない可能性が示され、いくつかの関連は男女や都市部・郊外の間で異なることも示唆されました。欠けたデータを統計的に補った分析や、別の統計手法を使った分析でも、牛乳とヨーグルトの摂取頻度に関する傾向はおおむね同様でした。
この研究が示すこと
この研究は、乳製品とひとくくりにせず、種類や、頻度と量のどちらで測るかによって、中高生の抑うつ・不安症状との関連が異なることを、13万人を超える大規模なデータで示しました。牛乳とヨーグルトをよく摂ることは比較的一貫して症状の点数の低さと関連していた一方、粉ミルク、チーズ、量に基づく項目の関連は一貫せず、分析の組み立て方によって結果が変わるものもありました。
ただし、著者らが強調しているように、これらは一時点の調査で見られた関連であり、乳製品を摂ることで症状が軽くなることを示したものではありません。研究チームは、時間を追って同じ人を調べる研究や、より詳しい食事の評価によって、さらに検討する必要があるとしています。
著者:Meiqi Wang(Department of Social Medicine and Health Management, School of Public Health, Cheeloo College of Medicine, Shandong University, Jinan)、于连龙(School of Public Health, Cheeloo College of Medicine, Shandong University, Jinan)、Zhaolu Liu(Shandong Center for Disease Control and Prevention)、Shoujuan Zheng(Shandong Center for Disease Control and Prevention)、Cuixia Lv(Shandong Center for Disease Control and Prevention)、Jie Zhang(Department of Social Medicine and Health Management, School of Public Health, Cheeloo College of Medicine, Shandong University, Jinan)、Afei Qin(Department of Social Medicine and Health Management, School of Public Health, Cheeloo College of Medicine, Shandong University, Jinan)、唐振闯(Institute of Food and Nutrition Development, Ministry of Agriculture and Rural Affairs)、suyun li(Shandong Center for Disease Control and Prevention)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Meiqi Wang, 于连龙, Zhaolu Liu, et al. Type-, dose-, and subgroup-specific associations of dairy intake with depressive and anxiety symptoms among middle school students. Frontiers in Nutrition 2026-10-13. DOI: 10.3389/fnut.2026.1954062. 原著ライセンス:CC BY.