著者の所属・活動拠点の国は、スウェーデンです。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
肥満治療のために処方される薬の中には、脂肪の吸収を抑えることで体重減少を助けるオルリスタットという薬があります。効果が期待できる一方で、油っぽい下痢やおならと一緒に脂が漏れてしまうといった消化器系の副作用が起きやすく、これが理由で治療を続けられなくなる人も少なくないと言われています。今回紹介する研究は、オルリスタットに炭水化物の吸収を穏やかにするアカルボースを組み合わせた新しい徐放性配合剤「EMP16」を対象に、こうしたお腹の不快な症状を和らげる工夫について調べたものです。
研究でわかったこと
この試験は、肥満(BMIが30以上、または27以上でリスク因子を持つ)があり、なおかつ過去にオルリスタットやEMP16で消化器系の副作用を経験したことがある成人を対象にしています。参加者は1対2の割合で、「EMP16+食物繊維(サイリウム由来)」を使うグループと、「従来型オルリスタット+プラセボ(マルトデキストリン)」を使うグループにランダムに割り付けられました。両グループとも、39日間の薬の用量を段階的に増やす期間中、食事指導も一緒に受けています。
評価の中心となったのは、下痢・油っぽい染み・おならと一緒の排出物・便失禁といった消化器系の症状を、参加者が毎日電子日記に記録し、それを試験期間全体で積み上げて数値化した「消化器忍容性イベント(GITE)スコア」です。あわせて、医師による副作用の評価や、体格の変化、コレステロールなどの代謝指標も調べられました。
36名が治療を完遂しましたが、実際に起きた消化器系の症状は両グループとも予想よりかなり少なく、GITEスコアの差についても統計的に意味のある違いは見られませんでした。ただし、症状が出た回数の合計や、最初の症状が出るまでの時間については、EMP16+食物繊維グループのほうが良い傾向がみられたと報告されています。また、体重の減少幅は、EMP16+食物繊維グループのほうが従来型オルリスタット+プラセボグループより大きかった(p=0.026)とされ、LDLコレステロールについては両グループとも約10%の低下とほぼ同程度だったということです。
これらの結果から、研究チームは「治療中の食事指導は、過去に消化器系の副作用を経験した人においてオルリスタットやEMP16の副作用を和らげる可能性があり、食物繊維の併用がさらに忍容性と効果を高めるかもしれない」と述べています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この試験は「パイロット試験」、つまり本格的な検証の前段階として行われた小規模な予備的研究であり、参加者数も限られています。主要な評価項目であった消化器症状スコアの差は統計的に有意ではなかった点にも注意が必要です。体重減少の差については統計的な有意差が示されていますが、これも一つの試験による結果であり、今回の知見だけで効果や安全性の結論が確定したわけではありません。
まとめ
肥満治療薬の副作用対策として、食事指導や食物繊維の併用がどのような役割を果たせるかを探った今回の小規模試験では、消化器症状の統計的な差は認められなかったものの、症状の起こり方や体重減少に関して食物繊維を併用したグループに良い傾向がみられたことが報告されています。今後、より大規模な試験によってこの傾向が確かめられていくのか、注目される分野だと言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):EMP16および従来型オルリスタットによる体重管理における食事指導と食物繊維の忍容性への影響:単盲検ランダム化パイロット試験(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)
原著論文の著者・所属:Ulf Holmbäck(Department of Public Health and Caring Sciences, Clinical Nutrition and Metabolism, Husargatan 3, Box 564, Uppsala, 751 22, Sweden. [email protected])、Stefan Grudén(Empros Pharma AB, Solna, Sweden)、Sandra Kuusk(Clinical Trial Consultants AB, Uppsala, Sweden)、Helena Litorp(Clinical Trial Consultants AB, Uppsala, Sweden)、Joakim Englund(Clinical Trial Consultants AB, Uppsala, Sweden)、Arvid Söderhäll(Empros Pharma AB, Solna, Sweden)、Göran Alderborn(Department of Pharmaceutical Biosciences, Uppsala University, Uppsala, Sweden)、Anders Forslund(Department of Women's and Children's Health, Uppsala University, Uppsala, Sweden)