著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

慢性腎臓病(CKD)では、体内で弱い炎症が長く続く「慢性低度炎症」が、病気の進行や心臓・血管の合併症に関わるとされています。CKDの管理では食事療法が中心的な役割を担いますが、腎臓病のために処方される食事が、炎症の観点からどのような特徴を持つのかは、これまで十分に調べられていませんでした。

そこで研究チームは、よく処方される4種類の腎臓病食について、食品の構成から推定される「抗炎症的な傾向」を比較しました。あわせて、食事ごとの違いを生んでいる食品群の特徴を探ることも目的としました。

何をどのように調べたか

比較したのは次の4つの食事です。地中海式腎臓病食(体重1kgあたり1日のたんぱく質0.8g)、ヴィーガン食(同0.7g)、従来型の低たんぱく食(同0.6g)、そしてケト酸類似体と必須アミノ酸の補充を前提とする補充付き超低たんぱく食(同0.3g)です。体重70kgの標準的な患者を想定し、腎臓病患者への栄養指導で実際に使われている献立の中から、食事ごとに10日分、合計40の献立を選びました。各食事のエネルギー量はおおむね近いものの、同一ではありませんでした。

評価には「eADI-17」という指数を使いました。これは、スウェーデンの高齢男性を対象とした先行研究で開発されたもので、血液中の炎症の指標(高感度CRPやインターロイキン6など)と関連する17の食品群から構成されています。全粒穀物、野菜、オリーブ油、豆類、ナッツなど11群は抗炎症側、加工した赤身肉、加工食品、砂糖・はちみつ、甘い清涼飲料など6群は炎症を促す側として点数をつけ、合計点が高いほど好ましい構成とみなします。

著者らは、この指数が腎臓病の患者やイタリアの食事では検証されていないことを明記し、今回の利用は試験的な応用だと位置づけています。また、腎臓病食で使われるたんぱく質を除いた特殊食品や、アミノ酸などの補充剤は指数の食品群に含まれないため、点数の計算には反映されていません。分析の単位は患者ではなく献立であり、同じ食事の献立どうしは同じ処方方針に基づくため、統計的な検定は探索的なものとして扱われました。

主な結果

eADI-17の平均点は、地中海式腎臓病食が11.90点、ヴィーガン食が9.75点、従来型の低たんぱく食が8.90点、補充付き超低たんぱく食が8.40点でした。地中海式腎臓病食は他の3つのいずれよりも高く、ヴィーガン食は補充付き超低たんぱく食よりも高い点数でした。一方、従来型の低たんぱく食とヴィーガン食、従来型の低たんぱく食と補充付き超低たんぱく食の間の差は統計的に有意ではありませんでした。ただし著者らは、これを「同等である」証拠と解釈すべきではないとしています。

40の献立をまとめて分析すると、点数が高い献立ほどたんぱく質の総量やリンが多く、ビタミンCや炭水化物が少ないという関連が見られました。しかし、どの種類の食事に属するかを考慮して分析し直すと、こうした関連はいずれも有意ではなくなりました。著者らは、これらの関連は個々の栄養素の働きではなく、4つの食事パターンの構成の違いを反映したものだと解釈しています。そのうえで、この結果はたんぱく質やリンを増やしたり、ビタミンCを減らしたりする根拠にはならないと明記しています。

結果が意味すること

この研究からは、食品構成に基づいて推定される抗炎症的な傾向が、たんぱく質をどれだけ厳しく制限するかではなく、食事全体の組み立て方によって左右されうることが示されました。たんぱく質の制限を強めれば自動的に好ましい点数になるわけではない、というのが著者らの主な結論です。なお、補充付き超低たんぱく食の点数が低かったことは、比較の上での位置づけにすぎず、その食事自体が炎症を引き起こすことを示すものではないとされています。

著者らは解釈上の注意点も挙げています。地中海式腎臓病食はほかの食事よりエネルギー量がやや少なく、食品の絶対量で採点する指数に影響した可能性があります。また、分析したのは処方された献立であって実際に食べた内容ではなく、炎症の指標も測定されていません。そのため点数の差は、実際の体内の炎症の違いではなく、腎臓病食が指数の食品群とどれだけ合致するかを反映している可能性もあります。著者らはこの結果を、どの食事も炎症を減らす・増やすという証拠ではない、仮説を生み出す段階の知見と位置づけています。腎臓病食を評価する際に、たんぱく質の量だけでなく食品の組み合わせ全体に目を向けるという視点を示した研究といえます。

著者:Claudia D’Alessandro(Department of Clinical and Experimental Medicine, University of Pisa, 56126 Pisa, Italy)、Adamasco Cupisti(Department of Clinical and Experimental Medicine, University of Pisa, 56126 Pisa, Italy)、Vincenzo Panichi(Department of Clinical and Experimental Medicine, University of Pisa, 56126 Pisa, Italy)、Diego Moriconi(Department of Clinical and Experimental Medicine, University of Pisa, 56126 Pisa, Italy)、Domenico Giannese(Department of Clinical and Experimental Medicine, University of Pisa, 56126 Pisa, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Claudia D’Alessandro, Adamasco Cupisti, Vincenzo Panichi, et al. Beyond Protein Restriction: Comparative eADI-17-Estimated Anti-Inflammatory Profiles of Four Renal Diets. Nutrients 2026-10-16. DOI: 10.3390/nu18203395. 原著ライセンス:CC BY.