この研究は、台湾の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

競技として長距離走に取り組むランナーは、一年を通じて同じ練習を続けるわけではありません。大会に向けて走り込む準備期、試合が続く競技期、そして負荷を落とす移行期と、トレーニングの中身が変われば食事の内容も変わると考えられます。

研究チームは、こうした練習期の移り変わりに沿って、競技長距離ランナーの食事摂取と腸内細菌叢(腸の中にすむ細菌の集まり)がどのように変化するのかを調べました。あわせて、その時期ごとの食事の摂り方と結びつく細菌の傾向がないかを探ることを目的としています。著者らはこの研究を、結論を確定させるものではなく手がかりを探す「探索的」な縦断研究と位置づけています。

何をどう調べたか

対象となったのは、競技として長距離走に取り組む7名のランナーです。準備期・競技期・移行期の三つの時期それぞれで、食事摂取量と身体組成を測定し、あわせて便のサンプルを採取しました。

便のサンプルからは、16S rRNA遺伝子配列解析という手法で腸内細菌叢の構成を調べています。これは細菌が共通して持つ遺伝子の一部を読み取り、どのような種類の細菌がどれくらいの割合でいるかを把握する方法です。時期による細菌の違いは、同じ人を繰り返し測定したことを踏まえた統計手法で検討し、多数の比較を同時に行うことで生じる偶然の差を補正する処理を加えています。さらにDESeq2という解析では、個人差の影響を差し引いたうえで菌の量の違いを比べました。加えて、エネルギー・炭水化物・たんぱく質の摂取量をもとにk-means法という手法で似た食事パターンごとにグループ分けし、食事の特徴を整理する探索的な分析も行っています。

報告された主な結果

食事については、エネルギー・たんぱく質・脂質の摂取量が練習期の間で統計的に有意に異なっていたと報告されています。一方で、炭水化物の摂取量については統計的な有意差には至りませんでした。

腸内細菌叢については、菌の多様性を全体としてとらえる探索的な解析(アルファ多様性・ベータ多様性)では、時期による統計的に検出できる差は認められませんでした。より大きな分類である門のレベルでは、Synergistetesに時期の影響が見られましたが、さらに厳しい補正を加えた二つの時期どうしの比較では有意な差は残りませんでした。個々の菌の量を比べたDESeq2の解析では、Haemophilusが準備期より移行期に多く、Enterococcusが移行期より準備期に多く、Cronobacterが競技期より準備期に多いという違いが報告されています。

食事パターンによるグループ分けからも、グループと結びついた細菌の違いがいくつか見つかりました。ただし著者らは、どのグループに入るかが練習期の区分とかなり重なっていた点を指摘しています。

この報告が示していること

著者らは、競技シーズンの流れの中で食事摂取が変化すること、そして多数比較の補正を行った後にも時期による違いを示した菌はごく限られていたことをまとめています。多様性に関する結果は、この小規模な対象集団においてあくまで探索的に示されたものだと断っています。

また、食事摂取と練習期は同時に変化していたため、食事グループと結びついた細菌の所見は、食事だけの独立した影響としてではなく、栄養と練習が組み合わさった状況の中で見えた探索的なパターンとして読むべきだとしています。少人数を追いかけた研究ではありますが、競技者の腸内細菌叢を考えるうえで、食事と練習の変化を切り離さずにとらえる視点の必要性を示す報告といえます。

著者:Chun-Yu Kuo(Graduate Institute of Sports Science, National Taiwan Sport University, Taoyuan City 33301, Taiwan)、Wan‐Chun Chiu(School of Nutrition and Health Sciences, College of Nutrition, Taipei Medical University, Taipei City 11031, Taiwan)、Ting-Yin Chou(Department of Sports Training Science-Athletics, National Taiwan Sport University, Taoyuan City 33301, Taiwan)、Yi-Ju Hsu(Graduate Institute of Sports Science, National Taiwan Sport University, Taoyuan City 33301, Taiwan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chun-Yu Kuo, Wan‐Chun Chiu, Ting-Yin Chou, et al. Gut Microbiota and Dietary Intake Across Training Phases in Competitive Long-Distance Runners: An Exploratory Longitudinal Study. Nutrients 2026-09-17. DOI: 10.3390/nu18183036. 原著ライセンス:CC BY.