この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Geriatrics

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ブラジルの食事ガイドラインは、生の果物、豆、野菜を毎日食べることをすすめています。研究チームは、これらの食品を食べているかどうかを示す指標を「健康的な食品摂取のマーカー」と呼び、高齢者の間でその摂取状況が性別や年齢、学歴、肌の色・人種、住んでいる場所といった社会人口学的な特徴によってどう異なるのかを調べました。

著者らによると、ブラジルの高齢者を対象とした先行研究はあるものの、北部地域、とくにロライマ州に関する知見は乏しく、州全体のプライマリ・ヘルスケア(地域の第一線の保健医療)網の中で集められたデータを使った検討はほとんどありませんでした。そこで論文は、州都に住む高齢者と、それ以外の非都市部に住む高齢者との間に地理的な差があるかどうかにも目を向けています。

何をどう調べたか

研究チームは、ロライマ州保健局の疫学監視部門が保有する既存のデータを二次利用しました。もとになったのは、2020年にCOVID-19と診断された高齢者に対し、プライマリ・ヘルスケアの専門職が電話で3か月後の状況を追跡した調査です。今回の論文はその中から、健康的な食品摂取のマーカーと社会人口学的な要因の関係に焦点を当てた部分にあたります。データベースには当初4194件の記録がありましたが、追跡調査に必要な情報が欠けている記録を除外し、最終的に60歳から100歳までの高齢者1322人分が分析対象となりました。研究は倫理審査委員会の承認を得ており、個人を特定できる情報は含まれていません。

食事の把握には、ブラジルの食品栄養監視システム(SISVAN)で全国共通に使われている食品摂取マーカー用の調査票が用いられました。訓練を受けた保健職、主に看護師が「昨日これを食べましたか」と尋ね、生の果物(果汁は除く)、豆、野菜(じゃがいも、キャッサバ、ヤムイモは除く)のそれぞれについて「はい」「いいえ」で答えてもらう形式です。つまり調査は、前日一日に食べたかどうかを尋ねたもので、食べた量や頻度までは分かりません。研究チームはそれぞれの食品を単独で見るだけでなく、「果物と豆」「果物と野菜」「豆と野菜」「三つすべて」という組み合わせでの摂取も指標として作成し、社会人口学的な要因との関連をポアソン回帰分析で調べ、有病率比(prevalence ratio、ここではある集団で食べていた人の割合が別の集団の何倍かを示す値)として示しました。

報告された主な結果

参加者の多くは女性(55.0%)、60〜69歳(53.9%)、自分をブラウン(パルド)と申告した人(45.2%)、正規の教育を受けていない人(47.2%)、州都在住者(64.1%)でした。前日に食べたと答えた割合は、生の果物が70.4%、豆が71.6%、野菜が70.8%でした。一方で組み合わせて見ると、果物と豆が52.3%、果物と野菜が56.9%、豆と野菜が51.6%で、三つすべてを食べていた人は半数に満たない42.7%だったと報告されています。

他の要因を調整した解析では、男性は女性に比べて生の果物を食べていた割合が低く(有病率比0.80、95%信頼区間0.74〜0.86)、果物と豆の組み合わせ、果物と野菜の組み合わせでも同様に低い傾向が示されました。学歴では、8年を超える教育を受けた人は果物(同1.20)と野菜(同1.14)を食べていた割合が高い一方、豆については逆に低い値(同0.85)が報告されています。肌の色・人種では、自らを先住民と申告した人は、イエロー(アジア系)と申告した人に比べて野菜を食べていた割合が低く(同0.73)、ブラウン(パルド)の人はイエローの人より果物と野菜の組み合わせを食べていた割合が高い(同1.36)という結果でした。

住む場所による差も目立ちました。州都ボア・ビスタに住む高齢者は、それ以外の非都市部に住む高齢者よりも果物(有病率比1.19)や野菜(同1.14)を食べていた割合が高く、組み合わせでも果物と豆(同1.23)、果物と野菜(同1.28)、豆と野菜(同1.16)、そして三つすべて(同1.31)で高い値が示されています。著者らは、健康的な食品を売る店の多さや近さといった食環境の違い、ロライマ州の地理的な広がりや遠隔性が、こうした差に関わりうると考察しています。

この研究が示すもの

著者らは、この研究が横断的なデザインであるため因果関係は示せないこと、自己申告に基づくため思い出しの偏りがありうること、世帯収入や食料不安、同居状況といった社会的な背景の情報が欠けていること、そしてデータがCOVID-19の流行下の2020年に集められたことを限界として挙げています。

それでも論文は、社会人口学的な特徴によって健康的な食品を食べていた割合に差があり、集団によって食生活に不平等が残っていることを示しました。著者らは、こうした結果がプライマリ・ヘルスケアの現場で、社会的に弱い立場にある高齢者を見つけ出し、集団ごとの実情に合った栄養支援や、健康的な食品への公平なアクセスを確保する政策につなげる手がかりになると述べています。

著者:Guilherme José Silva Ribeiro(Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)、Gabrielle Andrade da Silva(Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)、Nalva de Paula Dias(Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)、Rafaela Nogueira Gomes de Morais(Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)、Gabriela Rocha dos Santos(Department of Psychiatry, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre 90010-150, RS, Brazil)、André de Araújo Pinto(Department of Physical Education, State University of Roraima, Boa Vista 69306-530, RR, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Guilherme José Silva Ribeiro, Gabrielle Andrade da Silva, Nalva de Paula Dias, et al. Sociodemographic Inequalities in Healthy Food Consumption Markers Among Older Adults Receiving Primary Health Care in Roraima, Brazil. Geriatrics 2026-09-15. DOI: 10.3390/geriatrics11050132. 原著ライセンス:CC BY.