スーパーやコンビニで商品を手に取ったとき、パッケージ裏の栄養成分表示を見る人と見ない人がいる。さらに、表示の意味を理解できる「リテラシー(読み解く力)」と、実際に買い物や食事の判断に「活用」する行動は、必ずしも一致しないのではないか。この点に着目し、ソウル市民を対象に食品表示の理解度と活用度の関係、そしてそれが人口統計学的な特性や実際の食品摂取とどう結びついているかを調べた研究が、学術誌ニュートリエンツに掲載予定です。
リテラシーと活用を組み合わせて4つのグループに分類
この研究は「ソウル食品調査2025」のデータを用いた二次分析で、18歳以上の成人3024人が対象となっています。研究チームは、食品表示に関する理解度(リテラシー)と、実際にそれを買い物や食事選びに役立てているかどうか(活用)を、それぞれ「高い」「低い」の2水準に分け、組み合わせて次の4グループに分類しました。
- 高リテラシー・高活用(37.5%)
- 高リテラシー・低活用(21.4%)
- 低リテラシー・高活用(12.1%)
- 低リテラシー・低活用(28.9%)
つまり、表示を理解していても実際には使っていない人が2割強いる一方、理解度が高くなくても活用している人も1割ほど存在することが示されました。この4グループの分類をもとに、ロジスティック回帰分析(どの人口統計学的特性がどのグループに属しやすいかを調べる統計手法)と、共分散分析(グループ間で食品摂取の違いを比較する統計手法)が行われています。
性別・学歴と食生活の違い
解析の結果、男性であることや学歴が低いことは、「高リテラシー・低活用群」および「低リテラシー・低活用群」に属しやすい要因として関連していることが示されました。つまり、理解しているのに使わない、あるいは理解も活用もしていない層に、これらの特性を持つ人が多く含まれる傾向があったということです。
さらに、食品摂取パターンにも群ごとの違いが見られました。「低リテラシー・低活用群」は、高脂肪のパンや菓子類、加糖飲料といった加工食品をより頻繁に摂取し、果物や全粒穀物などの生鮮食品の摂取頻度はより低い傾向にあることが報告されています。この結果は、表示の理解と活用の両方が乏しいグループで、加工度の高い食品への偏りが見られたことを示しています。
この研究を読むうえで押さえておきたいこと
本研究はソウル市民を対象とした横断的な調査データの二次分析であり、ある一時点での関連を捉えたものです。食品表示への理解や活用が食生活の違いを「引き起こしている」と因果関係まで確定づけるものではなく、あくまで一つの調査で見えた関連性として受け止める必要があります。研究チームは、今回の結果から男性や低学歴者が食品表示に関する啓発・介入の優先対象となりうると述べていますが、これも今回のデータに基づく示唆にとどまります。
まとめ
今回の研究では、食品表示を「理解できるか」と「実際に活用しているか」は別々に評価する必要があり、その組み合わせによって食生活の傾向にも違いが見られることが示唆されました。特に理解も活用も乏しい層では、加工食品の摂取頻度が高く、生鮮食品の摂取頻度が低いという関連が報告されています。食品表示に関する情報提供や教育を考えるうえで、「読めるようにする」だけでなく「使ってもらう」ところまで視野に入れる必要があることを示す一つの調査結果といえるでしょう。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Linxi Huang, Jihyun Yoon. Perceived Food Label Literacy and Use in Relation to Demographic Characteristics and Food Consumption Among Adults in Seoul: Analysis of Data from the Seoul Food Survey 2025. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18182941. 原著ライセンス: cc-by.