著者の所属・活動拠点の国は、中国、マカオです。

掲載誌:Molecules

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

糖鎖の構造と免疫細胞への作用を結び付ける

研究チームは、薬用や食用の植物資源として利用されるジャノヒゲの根から、OJP-2と名付けた糖鎖成分を分離し、その構造と免疫細胞への作用を調べました。同じ植物に由来する糖鎖でも、抽出方法や糖のつながり方によって性質が異なるため、精製した成分の化学的特徴と細胞の応答を対応させることが目的です。

実験には、免疫反応に関わるマクロファージの培養細胞RAW264.7を使いました。通常の培養状態と、炎症を促す刺激を与えた状態を分け、OJP-2に対する応答を比較しました。

果糖が連なるイヌリン型の構造

著者らは、根を酵素のパパインで処理した後、マイクロ波と超音波を同時に当てて糖質を抽出しました。さらに、成分の電気的な性質や大きさの違いを利用して分離し、得られたOJP-2を構造分析と細胞実験の両方に用いました。

分析の結果、OJP-2は果糖を主成分とし、ブドウ糖も含むことが分かりました。測定条件に基づく見かけの重量平均分子量は3568 Daで、検出された分子の大きさの分布は狭いものでした。糖同士のつながりを調べる核磁気共鳴法などから、研究チームは、主に果糖がβ(2→1)結合で連なり、末端にブドウ糖を持つ「イヌリン型フルクタン」と位置付けました。枝分かれの可能性を示す弱い信号もありましたが、枝の配置や頻度までは決定していません。

細胞の状態と濃度によって異なる応答

通常の培養状態では、OJP-2を50~200 µg/mLで加えると、細胞内の分解などを担うリソソームへの色素の取り込みや、一酸化窒素に関連する測定値が増えました。細胞間の情報伝達物質であるサイトカインにも変化があり、炎症を促す側のIL-1βやTNF-αと、炎症を抑える側のIL-10がともに増加しました。著者らは、これを一方向の炎症促進ではなく、活性化と調節の両面を含む応答と説明しています。

一方、LPSとIFN-γで炎症を促す刺激を与えた細胞では、細胞表面の目印であるCD86とCD206を持つ細胞の割合が変化しました。対照からの変化は50 µg/mLで最も大きく、100、200 µg/mLと濃度を上げると対照に近づきました。著者らは、この結果をマクロファージが二つの型の間で単純に切り替わった証拠ではなく、集団内の状態の分布が変わったものと解釈しています。

炎症に関わる遺伝子の働きを調節するNF-κBの経路でも変化が見られました。関連タンパク質p65とIκBαのリン酸化を示す相対指標は、刺激のみの対照より低く、低下は200 µg/mLで最も大きくなりました。細胞表面の目印の変化と、細胞内の情報伝達の変化では、濃度に対する反応の仕方が異なっていました。

一律の「免疫活性化」では捉えられない作用

今回の研究は、構造を調べた特定の糖鎖成分について、マクロファージの状態と添加濃度に応じて異なる応答が現れることを報告しました。ただし、試料中のエンドトキシンは測定されておらず、それが細胞応答に寄与した可能性は未解明です。培養細胞で得られた結果が伝えるのは、OJP-2の作用を単純な「免疫を強める・弱める」だけでは表せないという点です。

原著論文の著者・所属:Henan Sun(College of Life Sciences, Jilin University, Changchun 130021, China; School of Life Sciences, Zhuhai College of Science and Technology, Zhuhai 519041, China)、Hao Yu(College of Life Sciences, Jilin University, Changchun 130021, China; School of Life Sciences, Zhuhai College of Science and Technology, Zhuhai 519041, China)、Huiqiang Yu(College of Life Sciences, Jilin University, Changchun 130021, China; School of Life Sciences, Zhuhai College of Science and Technology, Zhuhai 519041, China)、Gaowa Saren(School of Life Sciences, Zhuhai College of Science and Technology, Zhuhai 519041, China)、Ke Feng(Medical Sciences Division, Macau University of Science and Technology, Macao 999078, China)、Wenzhong Hu(School of Life Sciences, Zhuhai College of Science and Technology, Zhuhai 519041, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Henan Sun, Hao Yu, Huiqiang Yu, et al. Structural Analysis of an Inulin-Type Fructan from Ophiopogon japonicus and Its Immunomodulatory Properties. Molecules 2026-09-10. DOI: 10.3390/molecules31183194. 原著ライセンス:CC BY.