漢方の生薬として知られるジャノヒゲ(Ophiopogon japonicus)は、体に潤いを与える「滋陰」の作用を持つとされ、古くから利用されてきた植物です。この植物に含まれる多糖類(OJPS:Ophiopogon japonicus Polysaccharides)は、その主要な活性成分のひとつと考えられています。世界的に糖尿病をはじめとする生活習慣病の患者数が年々増加するなか、より安全で効果的な素材を探索する研究が続けられていますが、OJPSが体内でどのように血糖に作用するのか、特に生体を使った研究はこれまで限られていたといいます。今回、モレキュールズ誌に2026年07月に掲載予定の論文で、OJPSの構造的な特徴と、ゼブラフィッシュを用いた高血糖モデルにおける作用メカニズムが系統的に調べられました。

研究でわかったこと

まず化学的な構造解析により、OJPSは分子量約3.929キロダルトンの、均一性が高く水に溶けやすい、コンパクトな構造を持つ多糖であることが示されました。その主な構成成分はグルコース(91.85%)で、ガラクツロン酸(3.41%)も含まれていたと報告されています。

次に、高血糖状態にしたゼブラフィッシュにOJPSを投与したところ、糖代謝および脂質代謝に関する指標に改善がみられたとされています。あわせて、OJPSは体内の酸化ストレスを抑える働きを示し、肝臓への脂質の蓄積や炎症性細胞の浸潤を減らす方向に作用したことも報告されています。

さらに分子レベルの解析では、OJPSの投与によってGLP-1、cAMP、PKA、そしてリン酸化されたCREB(P-CREB)といったタンパク質の発現が有意に増加したことが確認されました。これらはインスリンの分泌を促す経路に関わるとされており、研究チームはこの経路を通じてインスリン分泌が促進された可能性を指摘しています。総合すると、この研究はOJPSが機能性食品や医薬品の分野で応用される可能性を示すものだと結論づけています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究はゼブラフィッシュという生物を用いたモデル実験であり、ヒトでの効果を直接示したものではありません。また、一つの研究であり結論が確定したわけではなく、今後さらなる検証が必要と考えられます。ジャノヒゲやその多糖類を、特定の疾患の予防や治療の手段として断定的に捉えることは避け、あくまで基礎研究の一つの成果として理解することが大切です。

まとめ

今回の論文では、ジャノヒゲ由来の多糖類OJPSが均一でコンパクトな構造を持つこと、そしてゼブラフィッシュの高血糖モデルにおいて糖脂質代謝の改善や酸化ストレスの抑制、インスリン分泌に関わるタンパク質発現の増加が確認されたことが報告されています。今後、ヒトを対象とした研究などを通じて、こうした知見がどこまで裏付けられていくのか注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:血糖降下活性を有するジャノヒゲ(Ophiopogon japonicus)多糖類の構造特性解析(モレキュールズ・2026年07月)